特集-インタビュー

第5回 水嶋春朔先生が語る いま求められている特定保健指導の“コンピテンシー”とは

国立保健医療科学院人材育成部長 水嶋春朔先生 国立保健医療科学院 人材育成部長
水嶋春朔先生
1987年横浜市立大学医学部卒業。島根医科大学大学院医学研究科博士課程修了、京都大学大学院人間・環境学研究科国際予防栄養医学講座助手、ロンドン大学客員研究員、横浜市立大学医学部公衆衛生学講師、東京大学医学部教育国際協力研究センター講師を経て現職。

<主要著書>
地域診断のすすめ方:根拠に基づく生活習慣病対策と評価、第2版 医学書院、2006年、他

近年、人材育成では「コンピテンシー」という考え方を重視すべきといわれていますが、コンピテンシーとはどんなことですか?

コンピテンシーとは、
(1)行動にあらわれる能力
(2)結果や成果に結びつく能力
と定義されており、求められている職務を遂行する能力のこと。
公衆衛生専門職のコンピテンシーについては、「公衆衛生分野における特定の職務や状況下において期待される成果に結びつけることのできる個人の行動様式や思考特性」をいいます。人事院人材局長の私的研究会「人物試験技法研究会」報告書「人物試験におけるコンピテンシーと「構造化」の導入」(平成17年8月)に公務員に求められるコンピテンシーが、わかりやすくとりまとめられています。

実際に、このコンピテンシーを開発・向上させるために必要なものとしては、積極性、社会性、信頼感、経験的学習力、自己統制、コミュニケーション力の6つの項目があげられています。

このなかでも、経験的学習力がいちばん重要だと思います。つまり、与えられたポストにおいて職務(課題)を理解し、遂行していくこと(解決力)上に必要な経験的学習をできるかどうかです。マニュアルや同職種の先輩がいないと何もできないようでは困るのです。


保健指導実施者のコンピテンシーについては、どのように考えていらっしゃいますか。

国立保健医療科学院人材育成部長 水嶋春朔先生 現在、4年制看護大学が160大学に増えて、保健師は、毎年約8,000人が国家試験に合格していて、今後さらに増加します。そのうち保健師として就職するのがたった1割程度。資格を持っているだけ、つまり資格はもっているが保健師の仕事をした経験も、する能力(コンピテンシー)もないという人が増えています。

また、保健師として働いていても「保健師であること」にこだわりすぎていて、いまの職務で何を求められているかを、きちんと理解していない方が少なくありません。行政職として採用された保健師は、行政職のポストとして地域全体の健康づくりをすべき立場ですが、目の前の仕事に追われているのか、本来の職務が視えていない人が多いように感じます。

ナイチンゲール鶏のトサカ図私は、研修会で機会があると、ナイチンゲールの話をします。1854年のクリミア戦争に従軍したナイチンゲールは、戦争で負傷して亡くなる兵士は全体の1〜2割、あとは栄養失調や感染症など予防可能な病気で死んでしまっていると実態を把握して、左図のような図解(鶏のトサカの図)をして分析しました。(※)

そして病院内の栄養管理や下水設備の管理など病院管理を改革すれば死亡率が下がることを陸軍大臣に報告し、予算要求したのです。実際に2,400床もある野戦病院の院内死亡率を44%から2%に大きく減らすことに成功しました。

ナイチンゲールは、患者たちへの個別のケアに加えて、統計を利用して客観的な全体の医療の質、現状の評価、報告、対策の提案により、全体の死亡者減少という“結果を出す”仕事をしています。つまり、結果を出すためには、現状をきっちりと定量的に把握し、ターゲットを明らかにして、いまの職務で求められていることは何かをよく考え、解決策を提案し、予算を獲得して実行していくことが必要なのです。

これからは、「(保健師として)すること」と「(保健師として)できること」が重要視されます。そして結果を出す保健指導をしていくことがきましょうということです。「(保健師)であること」だけでは淘汰される、という危機感をもっともつべきだと思います。結果をだす「保健指導」と理念だけの「保健師道」は全く違います。

看護大学を卒業して、ダブルライセンス、トリプルライセンスで保健師資格を持っていても、職務としては看護師の仕事をしている人は結構多いでしょう。その人が保健指導をしたとき、それは「看護師としての保健指導」であり、「保健師としての保健指導」というには弱いですね。保健師の専門的なスキルとはなにかが問われていると思います。

(※)参考文献:「地域診断のすすめ方:根拠に基づく生活習慣病対策と評価 第2版」(水嶋春朔著、医学書院、2006年)


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