特集-インタビュー

第7回 山縣邦弘先生が語る CKDを通して考える保健指導

筑波大学大学院人間総合科学研究科腎臓病態医学教授 山縣邦弘先生 筑波大学大学院人間総合科学研究科腎臓病態医学教授
山縣邦弘先生
1984年筑波大学医学専門学群卒業。同年同大学附属内科医員、日立製作所日立総合病院腎臓内科医長、筑波大学臨床医学系講師、同大学助教授を経て、2006年7月より現職。

生活習慣の改善でCKDの予防が可能です

いま注目されているCKD(慢性腎臓病)について教えてください。

腎機能の低下には、さまざまな原因がありますが、原因にかかわらず、「蛋白尿などの腎障害(※1)の存在を示す所見」または「腎機能の低下(GFR(※2)60未満)」が3か月以上続く状態を慢性腎臓病(CKD)と定義しています。

CKDの発症の原因は、糸球体腎炎、感染症や遺伝、薬剤の影響などもありますが、高血圧や糖尿病などの生活習慣病が原因で発症する方が増えています。またCKD自体が心血管疾患のリスクとなることがわかってきました。つまり、非常にメタボリックシンドロームと関係の深い疾患といってよいでしょう。

CKDは、糸球体濾過量(GFR)によって、進行の度合いを1〜5期に分類(下記表参照)しています。1〜3期は自覚症状がほとんどありませんが、検査で発見することは可能です。ステージ5になると、透析が必要な患者さんが多くなります。

CKDの進行度分類

病期 定義 GFR(mL/min/1.73m2
腎障害はあるが、GFRは正常または増加 90以上
腎障害はあるが、GFRは軽度低下 60〜89
中程度低下 30〜59
高度低下 15〜29
腎不全 15未満

※1 腎障害とは
尿、画像診断、血液、病理などの所見で腎の異常があること、特に尿蛋白の存在を重視している。

※2 推定GFR値とは
日本人の係数をかけたGFRの推定式を利用すると、血清クレアチニンの値と性別、年齢から算出できる。日本腎臓学会では、今後はどの検査機関でも血清クレアチニンの検査をすると、自動的にGFRが算出できるように働きかけている。


CKDの方はどのくらい増えていますか?

筑波大学大学院人間総合科学研究科腎臓病態医学教授 山縣邦弘先生 現在患者数は約1300万人と推定され、有病率は成人の12%にもなり、実は非常に身近な病気といえます。しかし、原因となるもとの病気のかげに隠れて、腎機能の悪化が見過ごされてしまい、人工透析が必要となってはじめて専門医が診るという場合も少なくありません。

そこで日本腎臓学会では、かかりつけ医向けに「CKD診療ガイド(日本腎臓学会にて掲載)」を作成しました。ここに、CKDの概念から定義、診断法、治療法までを記載しています。CKD対策を進めるために、どのように早期に発見するか、発見されたCKDを腎臓専門医とかかりつけ医がどのように連携して診療していくかの指針を示しています。

CKDは早期に発見して治療・コントロールすることで、予防や進行を防ぐことができる病気です。かかりつけ医はもちろん、患者さんにかかわるコメディカルの方々にも、他の病気で治療している患者さんの腎機能の低下を早期に気づいていただき、対応してもらうことが重要だと思います。


CKDの増加に糖尿病や高血圧が深くかかわっていますね。

日本における腎不全の透析導入の原因疾患は、20年前には50%以上が慢性糸球体腎炎という病気でした。近年、慢性糸球体腎炎は小児期の治療もよくなり、透析まで進行する患者は減ってきています。一方で糖尿病を原因とした糖尿病性腎症は透析導入の原因のトップです。また高血圧が原因となる腎硬化症も増えています。

糖尿病性腎症は、糖尿病の初期の段階で血糖をしっかりコントロールすれば、腎不全になりません。腎硬化症も高血圧性腎症ととらえれば、初期の段階で血圧をきっちりコントロールすれば、腎不全にならないのです。

つまり、初期に保健指導などにより血糖値や血圧値をコントロールできれば、腎疾患は腎不全まで進行しなくなるはずです。そうなれば、CKD自体が減ると思います。また、もしCKDになったとしても、その初期の段階で保健指導をきっちり行い、生活習慣を見直してもらえれば、悪化しなくなるはずではないでしょうか。


腎臓病における保健指導で大切なことはどのようなことですか?

従来の腎不全の食事指導は、低たんぱく食の食事療法が主だったと思います。しかしCKDでは、決して、厳しい低たんぱく食を全員に一律にやらなければいけないとは考えていません。

筑波大学大学院人間総合科学研究科腎臓病態医学教授 山縣邦弘先生CKDで血圧が高いという人には、血圧をまず下げるということのほうが重要だと思います。LDLコレステロールが高い方はLDLを下げる食事指導、血糖やHbA1cが高い人は、それを下げるという指導というように、腎臓の機能が悪化している原因が主として何なのかを見極めて、まずその治療を第一とします。

また、実行できる人が1-2割というような厳しい指導ではなく、多くの方が納得して、続けられるような指導であること、そして保健指導によって、効果があることを数字で示すことが大切です。これは特定保健指導でも同じことがいえるかもしれませんね。

いま、保健指導の効果を、特定健診・特定保健指導を通して、国家をあげて検証しているのではと思っています。現在は、海外からの報告が出つつあるのは確かです。ですからなおのこと、今回、特定保健指導は注目されていますから、結果を客観的にとらえて、効果があることを示すことが重要かと思います。そのために、これから数年は、さまざまな保健指導のやり方について、評価し検証することになるでしょう。


腎臓病の保健指導についても、特定保健指導のような検証が行われていますか?

ちょうど今、私たちは腎臓病の戦略研究というものを行っています。管理栄養士さんがしっかり指導したグループ、従来どおりドクターだけが指導したグループに分けて、慢性腎臓病の6つの診療目標が達成できたかを調べています。指導自体の有無や、指導した人の技術がどのような結果を出すか、検証することにしております。指導の内容によって腎臓の働きがどのように変わるかなどの結果を出し、日本腎臓学会がまとめたCKD診療ガイドの診療目標に立てたものが正しかったかどうかの検証もしています。

結果として、やはり指導で確かに改善して、十分に腎機能の低下を抑制すること、そしてコストに見合うということがわかれば、それを全国に均てん化するというのが戦略研究の考え方です。

バックナンバー
保健指導のアウトソーシングに関するアンケート調査 結果レポートの発表です
坂根直樹先生新連載「ストレス方程式で解決!簡単ストレスマネジメント」
血糖自己測定器と院内専用グルコース分析装置の違い
脱マショウノオンナ 『保健師だより』私流のコツワザ集
ニッポンの健康づくり 辻一郎先生 津下一代先生 インタビュー
協力企業
ニプロ株式会社 気をつけていますか?メタボリックシンドローム!!
ニプロ株式会社 気をつけていますか?メタボリックシンドローム!!

保健指導向上委員会の運営を応援してくれる協力企業を募集しています。詳しくは、こちらまでお問合せください。

ad@hokensidou.net
地域保健
かいごweb
東日本大震災に関する情報 地域防災力向上を目指す情報サイト「webside.jp」
SNSログイン
保健指導向上委員会SNSにログインする
SNS新規登録SNSについてもっとくわしく
委員会からのお知らせ