特集-インタビュー

第11回 女子栄養大学・大学院教授 武見ゆかり先生が語る
食事バランスガイドを活用した効果的な支援とは

女子栄養大学・大学院教授(食生態学研究室)武見ゆかり先生 女子栄養大学・大学院教授(食生態学研究室)
武見ゆかり先生
東京都出身。慶應義塾大学文学部フランス文学専攻卒。編集社勤務を経て、1986年香川栄養専門学校栄養士科卒、1988年女子栄養大学大学院栄養学研究科栄養学専攻修士課程修了。女子栄養大学助手、専任講師、助教授を経て、2005年より現職。管理栄養士。博士(栄養学)。農林水産省・厚生労働省「フードガイド(仮称)検討会」委員の一人として食事バランスガイド作成にも尽力。

食事バランスガイドを活用した栄養教育・食環境づくりの手法に関する研究

武見先生の研究班は、平成19年度厚生労働科学研究費補助金による研究事業として「食事バランスガイドを活用した栄養教育・食環境づくりの手法に関する研究」により、食事バランスガイドを活用した3つの介入プログラムを開発実施し、食事バランスガイド活用の効果を検証した。

今回は、プログラムのうちの1つである、「食事の提供(中食)を活用した肥満勤労者への教育プログラム」について武見先生にお話をお伺いした。

主に肥満男性を対象に、食事バランスガイドに基づく「バランス弁当」を、週3回3ヶ月間、職場昼食として提供し、さらに栄養・健康情報に関するメッセージカードを弁当に添え、弁当を通した体験学習とメッセージカードによる情報提供を組み合わせた栄養教育プログラムを開発・実施。食態度・食行動及び肥満の改善(体重減少)への効果を検証し、体重減少あるいは体重増加の抑制効果があるという結論がだされた。

今回の研究の手法に興味のある方が多いと思いますが、実際に現場での活用方法についてアドバイスをいただけますか?

女子栄養大学・大学院教授(食生態学研究室)武見ゆかり先生取り入れ方は、実は、結構簡単だと思います。私たちの行ったプロジェクトは、「週に3回その人にとっての適量の食事を食べてもらうこと」それにプラス、「必要な情報を一定期間、一定回数渡す」ということです。

「適量の食事を食べてもらう」方法として、食事バランスガイドに基づくバランスのとれたお弁当を提供しました。食事の改善を提案するとき、職場に食堂があるときは食堂を活用できますが、食堂がない場合、働いている人は、外食するかお弁当を買って食べる、いわゆる中食が多いですよね。そこで、どこの事業所でも取り入れやすい、つまり普及しやすいものと考えて、「お弁当」という形態で食事を提供しました。

プロジェクトは3か所で実施しましたが、お弁当はそれぞれの環境によって違った内容です。統一したコンセプトは、勤労男性で活動量が低い方を対象者として考えた量で、主食ごはん200g(2サービング)を基本に、副菜2サービング、主菜2サービング、総エネルギー量約700kcalにしたことです。このメニューなら食事バランスガイドを使えば簡単にできるでしょう。


保健指導側としては、対象者がこうしたバランスのよいお弁当を選んでくれればと思いますが……。なかなか…。

非常にボリュームのあるお弁当を求めている人もいますし、販売側も、ボリュームのあるほうが売れるって思っていることもあります。でも今は、みんながみんな、そうということはないですよね。適量のバランスのよいお弁当にもニーズがあることを伝えていくことも必要かと。実際、東京のチームでは大手の弁当業者さんに作っていただきましたから。

日常生活の中で、食事の内容や量についていろいろな選択の幅があるということが一番大切かと思います。たまにはボリュームのあるものが食べたいってこともあるでしょうし。

バランス弁当の一例はじめに、プロジェクトで提供するお弁当を何回食べてもらうかと考えたとき、あまり無理がないということが大切だと。自分たち研究班メンバーの中でも、外出したり、忙しかったりで、提供された「お弁当」を毎日は食べられないねと。とはいえ、週1回でいいかというと、それでは学習にならないということで、週3回になりました。

「学習」という言葉をだしましたが、エネルギーをコントロールして減量するための「お弁当」であれば、もっと強力にエネルギーを下げ、しかも1週間きっちり食べてもらうといった方法が必要であり有効でしょう。しかし、今回狙ったことはそうではなく、あくまで、適量食べるという体験の積み重ねによる「学習」なんです。

今回のターゲットとなる肥満の方はやはり食べている量が多い。ですからその方に、自分自身の適正体重を維持していくための適量、これくらいの量を食べればいいということをわかってもらうことを学習してもらいたいと考えました。栄養管理されて提供されている学校給食をイメージしていただくといいかもしれません。学校給食は、子どもたちに必要な栄養素を供給すると同時に、どんな料理を、どのように組み合せ、どのくらいの量を食べたらよいかを学習するための、まさに「教材」ですから。


提供されたお弁当を食べた結果、減量できたということだけではなく、食べ方の「学習」が第一の目的ということですね。

一般向け成果発表会で配布されたバランス弁当そうです。メディアで流行する「何とかダイエット」っていうのがまずうまくいかない、リバウンドしやすい理由のひとつは、一生続けられるものではないからだと思います。
一定の期間食生活を変えて我慢して減量しても、また元の食生活に戻るのでリバウンドしてしまうというわけです。

健康支援として一番狙わなければいけないところは、最終的に自らコントロールできるようになってもらうこと。つまり、自分の生活のあり方に合わせ、自分の生活習慣をセルフコントロールできるということです。

私たちは、結婚したり、職場で異動があったり、転職したりと、いろんなイベントの中で生活しています。時期によって、いっぱい食べてしまったり、食べられなかったりと食生活も変動があると思います。偏った食事をしている時期があっても、どんなものを食べたらいいかというイメージができていれば、元に戻ることができると思うんですよ。今回の研究は、そのためにお弁当の体験という「学習」の効果を検証したということです。今後は、この体験による学習効果が継続していけるかが課題かもしれませんね。

今回の研究では、給食のようにメニューが決まっていたので、好きではないものもあったかもしれません。でも今後、対象者自身がメニューを選んでいく、食べ続けていくということを考えると、「おいしい」ことって大切でしょう。やっぱり、食べたくなるお弁当にしなければならないですね。


研究班が作成した業者向けレシピ集新潟のチームはお弁当のレシピを紹介した本も出されていました。

そう。新潟のチームは、職場の食堂でつくったので、お弁当の容器も変えるなど、食べたくなるお弁当の工夫がよくされていたかと思います。バランスや適量というと普通なら無理だと思ってしまう「カツ丼弁当」もありました。主菜を2サービングで抑えるなら、カツは小さくなりますが、盛り付けの工夫次第で十分見栄えします。減量していても、量に気をつければそういったメニューも食べられるんだ、という気持ちが継続につながると思います。

 

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