特集-インタビュー

第19回 国立成育医療研究センター周産期・母子診療センター母性内科
荒田尚子先生、三戸麻子先生が語る
プレコンセプションケア 〜女性の活躍する時代に必要なサポートとは

荒田尚子先生、三戸麻子先生 国立成育医療研究センター周産期・母子診療センター母性内科
医長 荒田尚子先生、三戸麻子先生

荒田 尚子 先生(写真右)
1986年3月広島大学医学部医学科卒業。1991年6月慶應義塾大学医学部助手(内科学・腎臓内分泌代謝科)、1995年6月横浜市立市民病院内科、2001年1月マウントサイナイ医科大学リサーチレジデント。2004年6月国立成育医療センター総合診療部、2006年4月同センター周産期診療部母性内科、妊娠と薬情報センター兼務。2010年4月より現職。

三戸 麻子 先生(写真左)
2003年富山医科薬科大学(現富山大学)医学部医学科卒業。慶應義塾大学病院内科研修医、霞ヶ浦医療センター内科、大田原赤十字病院内科を経て、慶應義塾大学腎臓・内分泌・代謝内科入局。埼玉社会保険病院(現埼玉メディカルセンター)腎センターを経て、2011年より現職。

日本におけるプレコンセプションケアとは?


プレコンセプションケアということばをはじめて聞いたのですが…。

荒田
荒田尚子先生 コンセプション(conception)とは、おなかの中に新しい命を授かることをいいますが、プレコンセプションケアとは、将来の妊娠を考えながら、女性やカップルが自分たちの生活や健康と向き合って、より健康な生活を送るためのケアをいいます。これは妊娠を計画している女性だけではなく、すべての妊娠可能年齢の女性にとって大切なケアです。プレコンセプションケアから自分の生活を管理して健康な生活習慣を身につけることが、これからの人生に大切であることを知っていただけたらと思います。

三戸
プレコンセプションケアは、米国など海外でうまれた概念ですが、実は米国は早産の割合がまだ発展途上国と同じくらい高いという問題を抱えていました。調査したところ、早産や新生児死亡は、妊娠前の母体合併症が増加していることが原因で、脂質の多い食事による肥満や糖尿病・高血圧といった生活習慣病が大きな問題であることがわかったのです。妊娠・出産のリスクを下げるためにも、妊娠前の段階から女性の健康づくりをしていこうということで、2008年にCDC(アメリカ疾病管理予防センター)、2012年にはWHOが本格的にプレコンセプションケアを推奨しています。


日本では、女性のやせが増えていますね。

三戸
三戸麻子先生そうですね。国によって抱える問題は違います。
日本では、20代、30代、40代の「やせ」の割合が増えています。この世代の女性の理想体型が「やせ」なんです。海外と比較しても、同じ商品の広告モデルを英国と日本で比べると、日本のモデルは圧倒的にやせています。こうした「やせ」のメディアの露出の仕方とも関係あるのかもしれません。

実際、日本人の女性のエネルギー摂取量はどんどん減っています。それに相関して、出生体重はどんどん減っていて、低出生体重児の出産数が増えています。低出生体重でうまれたお子さんは、将来の生活習慣病や冠動脈疾患のリスクが高いということがわかっています(DO HaDの概念)。これを証明した事件で専門職の間で有名なのが「オランダの飢餓の冬※」です。

※ドイツ軍占領下に飢餓を経験した母体からうまれた子どもを長期間追跡したコホート研究で、子どもたちが成人した後に高確率で糖尿病・高血圧などの病気を発症した。

女性が抱える問題はさまざまですが、米国、発展途上国などそれぞれの国やWHOは、こうした次世代への負の連鎖を断ち切ろうとして、プレコンセプションケアに力を入れていこうとしています。そんな状況で、さて日本はどうかというと、概念自体がまだ知られていません。そこでぜひプレコンセプションケアを広めていきたいと考え、プレコンセプションケアセンターを2015年11月に日本で初めて当院で開設しました。


センターではどんなことが行われますか。

三戸
センターでは、チェックシートを提唱させていただいていて、「相談外来」と「チェックプラン(検診&カウンセリング)」を行っています。チェックシートは、女性用はもちろん男性用もあります。チェックすべきものをきちんとチェックしてください。

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プレコンセプションケア・チェックシート(女性用)

プレコンセプションケア・チェックシート(女性用)

詳細はプレコンセプションケアセンターのホームページを見てください。 センターの特色としては、「チェックプラン(検診&カウンセリング)」。検診とあわせて栄養士と医師それぞれ30分のカウンセリングがあることです。栄養に力を入れているので健康的なプレコンセプションケアランチも味わっていただきたいと思います!

荒田
先ほどもお話ししましたが、私たちがプレコンセプションケアセンターを立ち上げるにあたり、非常に気をつけたのは、“妊娠のため”だけのケアではないという点です。プレコンセプションケアを単純に訳すると「妊娠前ケア」となって、目指しているものと違ってしまうので「プレコンセプションケア」ということばをそのまま使っています。CDCと同様に、「Healthier me and baby-to-be」をスローガンに、日本としても同じ概念で立ち上げたいと考えました。

<画像をクリックすると拡大します>

生涯のうちのプレコンセプションケアの位置づけ

WHOにある図を日本語に訳したものです。

とくに若い女性に対して、妊娠を考えるというよりも、自分のライフプランを考えるうえでプレコンセプションケアを考えてもらいたいと思っています。自身が健康になって、生活スタイルを整えることで、より生活の質をあげる。その結果、子ども、家族の健康とつながっていきます。 そのためにチェック(検診)だけでなく、「チェック&カウンセリング」、医療者側からの視点ですと「チェック&エディケーション」なんです。


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