特集-インタビュー

第21回 早稲田大学スポーツ科学学術院教授
岡 浩一朗先生が語る
座りすぎは危険!  「立つ」ことを健康行動のスタートに
〜自然に健康になる職場・地域の環境づくりをめざして〜

「立つ」職場環境の整備とともに、個人、組織の意識を変えることも重要

仕事時間、働いている人は座りすぎているんですね。

そうですね。でも解決策はあります。「座り続けずに、ちょこちょここまめに立つ」ことです。

立ち上がれば、そのまま直立不動ということはまずありません。首や肩を回したり、ちょっと体を動かしたりしますよね。トイレに行ったり、コーヒーを入れたり、窓の外を眺めに行ったりしてもいいかもしれません。できれば30分に2〜3分、少なくとも1時間に5分の休憩として、立って少し動くのがおすすめです。そして、その休憩には、決してハードな運動をしなくてもいいということです。先行研究では、座位行動の中断による影響として、たとえば代謝機能に関して、低強度身体活動でも中強度身体活動とほぼ同様の改善効果があったという結果が出ています。

また、加速度計の発達からわかった研究なのですが、全体の座位時間が同じでも、連続して座っているか、頻繁に立ち上がる休憩を入れているかで健康リスクに違いがあることがわかってきたのです。

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座位行動の様相が異なる人の例


でもなかなか仕事の合間に立ってばかりはいられません。

立つことをより自然にできるような仕掛けを用意して、職場環境を変えるための働きかけを研究として行っています。

例えば、立って仕事ができるワークステーションやスタンディングデスクの導入。仕事内容にもよりますが、パソコンによるちょっとした仕事や資料を読んだりすることなどは立ったままでもできるものも多いのではないでしょうか。
立ったまま仕事ができる職場環境があれば、自然と座る時間は減ってきます。

もちろん、立って仕事をすることで、みるみる生産性が向上するということではありませんが、ランチ後の少し眠たくなる時間は、座っているより立って仕事をするほうが断然効率がよいことは体験的に理解してもらえると思います。

我々の研究室が行った研究では、就業中の座位時間と労働指標との関連を調べたところ、20〜30代では座位時間が長いほど生産性(仕事の効率)が悪く、40〜50代ではワークエンゲイジメント(仕事に対する熱心さや活力・意欲)が低いという結果が出ました。ほかにも座り続けていると、メンタルヘルスにもよくないという結果も出ています。確かにずっと座って仕事をしていると、夕方ぐらいに気持ちがどんよりして活力がないこと、ありませんか。多くの人が実感していることかと思います。


体を動かしたほうがいいのはわかっているのですが、疲れているとつい座ってしまいます。

岡 浩一朗先生私自身の考えですが、働いている人には家に帰ったときぐらいゆっくり休んで欲しいなと思っています。自分自身も休みたいなと思うんですよ、一日働いてきたら。
楽しみだったらいいのですが、仕事が終わってからジムに行く、歩くということが「しなくてはいけない」ことになるのは、少し辛い。ですから身体活動量の低下について、仕事の時間中にできるだけ解決することはできないかと考えています。

その仕事、座ってやらなくてはいけませんかという内容、たくさんありませんか。私の仕事でいえば、メールの返信や資料読みは立ってでもできます。ほかにも、ちょっとした作業だったり、研究のアイデアを考えたり。結構立ったままできますよね。
座って仕事をするだけでなく、立っても座っても仕事ができるという選択肢をつくることがいいのではないでしょうか。

ただ、いまの職場環境では、立って仕事はできない。自然にすっと立ち上がって仕事ができるオフィス環境に変われば、みんな立って仕事をすることができると思うんですよ。
オフィスが変わればといいましたが、スタンディングデスクを取り入れることだけでなく、職場風土というものも重要です。

面白い現象がありました。ある企業で、同じようにスタンディングデスクを取り入れても、多く人が立って仕事をする部署と、ほとんど誰も立っていない部署がありました。調査してみると、立っている部署は、立って仕事をしだした海外の人につられて、日本人も立つようになり、実際に立って仕事をするようにしたら、そのメリットを認識したことが影響したようです。スタンディングデスクが導入されれば、みんな立つというわけではないんですね。職場のムードづくりもかなり重要です。

このような介入成果のまとめによると、「立つ働き方」について、個人への健康教育で約15分、職場環境を変えると約70分、個別教育+職場環境+組織として奨励しているなどの風土改革を加えると90分、座位時間が減るという結果が出ています。


職場環境を整えるのは個人では難しく、事業所として環境を整えるとしてもお金がかかると思いますが。

こうした職場環境への働きかけに関係する仕事には、オフィスをデザインする人、什器をつくる人、関連ソフトやアプリなどデバイス開発関係の人、たくさんの人や企業が関わっています。
通常、私たち研究者は、「健康になること」をどうしてもゴールと考えてしまいますが、こうした企業の方々は、「立って働く」をコンセプトとして「健康になるオフィス」を売り込み、オフィスを変えようとしています。世界中にオフィスがありますから、市場も多くあります。

こうした「健康になるオフィス」市場をみんなで協力してつくり、もちろん企業間の競争により、よいものをつくったりコストダウンしたりしていきながら、みんなで産業として盛り上げていこうという動きがうまれています。健康づくりだけでなく、利益をうむ市場開拓としての広がりから、オフィスが変わっていく。追い風なのは、いま国が掲げている健康経営、働き方改革、ストレスチェック制度などが、「健康になるオフィス」による改善点と直結していること。以前と比べて、企業側も職場環境の改善が受け入れやすいのではないでしょうか。職場環境が変わり、そのオフィスで働いていたら、いつのまにか健康になっていたという状況をつくりだしていけたらと思っています。

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研究室におけるSit-stand workstation活用の様子

岡先生の研究室。立つ働き方(研究!!)を実践している。


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