特集-インタビュー

第21回 早稲田大学スポーツ科学学術院教授
岡 浩一朗先生が語る
座りすぎは危険!  「立つ」ことを健康行動のスタートに
〜自然に健康になる職場・地域の環境づくりをめざして〜

運動指導の新しい切り口として、まず「立つ」ことの啓発を

ところで、専門職として、「座り続けることの危険性」を保健指導ではどのように取り組んでいけばいいと思いますか。

岡 浩一朗先生これまでは、体を動かすスタートとして「歩きましょう」という情報提供が多かったと思いますが、座りすぎが危険であるという情報をぜひ伝えていただきたい。

私はもともと「体を動かしてもらいたい、運動してもらいたい」と思って一生懸命その分野の研究に取り組んできましたが、なかなかうまくいかない。近年は日本人の活動量がより下がってしまうという結果もありました。いくら運動がよいということが研究でわかっても、やってもらわないと意味がないという思いが原点にあり、そこへの解決策として、座りすぎる人が意識的にはもちろん、自然と立つようにしたいと思っています。

もちろん、歩いたり、運動したりしてもらうほうがいいことは確かです。ただ座り続けている人に、いきなり理想的な水準で体を動かしてもらうのは、かなりハードルが高いかと思うので、まずは立つことからはじめてもらうのがよいかと思います。

立つことが、次の行動がおこせる「入口行動(gateway behavior)」なのかなと思っています。座るから立つという行動に変わると、健康行動は連鎖していきます。いつもなら我先に空いている電車の座席に座っていたのが、「立つ」ようになると、夕方にぐったりしなくなって、少し立っていようか。次はひと駅分歩いてみようかというように変わっていきますよ。


保健指導をしている専門職の方にメッセージをお願いします。

保健指導の際に、「あなたは、仕事時間や移動中、余暇時間に1日どのくらいの時間、座っていますか?」という質問からはじめてみるのもいいかもしれませんよ。

運動しなくてはいけないことは多くの人は認識しているから、少し切り口を変えて、座り続けることのリスクを伝えて、まずは座り続けず、立つことを意識してもらえるようにできるといいですね。

保健指導や健康教育として、運動教室を開催するときに、運動の仕方を教えることが中心かと思います。運動だけ、歩くことだけを勧めるのではなく、それと合わせて座り続けることの危険性をぜひ伝えてほしいと思います。運動をしたと思うと安心してしまい、その他の時間は結構テレビを観続けたり、仕事中に座り続けていることが多いようなので。
保健指導や健康教室などの指導者の方には、「座りすぎは危険」を切り口に、さまざまな方法で情報提供していただければと思います。


最後に岡先生が取り組まれている研究について教えてください。

前述しましたが、社会は「便利」で「体を動かさない」ことを高価値として進んできましたが、私は、「楽しく」「自然」に「体を動かす」社会に変えていきたいと考えています。ゲームでも自然と歩いてしまう「ポケモンGO」の流行など、変化の兆しがあるのではと思っています。「楽しく」「自然に」「体を動かす」社会の創造に向けて、地域やコミュニティ全体へ「座りすぎは危険」をはじめ、健康づくりの普及を行っていきたいと思います。マスメディアの活用や健康教室の展開などを含めたコミュニティワイドキャンペーンなど、地域全体を対象に働きかけていくことが重要だと考えています。

たとえば、私が関わっている1つのプロジェクトとして、南伊豆町を世界一健康寿命が長いまちにするという長期プロジェクトがあります。南伊豆町は、土地柄防災に対する意識が高いのですがこれは防災教育の成果です。つまり同じように健康教育によりヘルスリテラシーの高いまちづくりができるはずです。

実際に南伊豆町は、楽園のようなところで、温暖な気候と温泉、きれいなビーチなど、素晴らしいコンテンツを持っており、これに健康長寿が加われば、より高価値なまちになることでしょう。こうした元気なまちが全国各地でできれば地方創生にもつながるのではと考えています。

また、早稲田大学を中心として、国内外の研究者と協力して、「座位行動に関する国際共同研究拠点」をつくっていきたいと思っています。ここでは、「コホート研究」「実験研究」「介入研究」を行い、エビデンスのある、座りすぎ防止のための有効な手段を開発していきたいですね。


取材後記

南伊豆町の全体の健康プロジェクト構想(特別養護老人ホームや大学、継続的な調査等々)や今後の展開を熱く語られた岡先生。「これは研究者として果たすべき責任」という言葉が印象的でした。こうありたい未来に向けて、研究者でありながら実践者としての役割も担っていこうという気概に惹かれてしまいました。

ちなみに取材中も「テーブルの下で足を動かしてくださいね」と声がけしてくださいました!
取材後、我々編集部の者が、仕事中に立ち上がるようになったことは確かです。

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