特集-インタビュー

第22回 <地域保健WEBより転載>
厚生労働省 健康局健康課保健指導室の右田周平専門官と同課川本めぐみ補佐が語る 「標準的な健診・保健指導プログラム(案)」について

第2編 健診

第1章 メタボリックシンドロームに着目する意義

新しいプログラム案では、高LDLコレステロール血症が動脈硬化性疾患の危険因子であることが、あらためて明記されました。その理由について教えてください。
【参照頁:2-1】

もともと高LDLコレステロール血症は動脈硬化性疾患の危険因子であることが指摘されていましたが、現在のプログラムでははっきりとした記述がなかったので、検討会における指摘をもとに、新しいプログラム案では明確に盛り込むことになりました。

動脈硬化性疾患の予防として内臓脂肪に焦点を当てていましたが、「やはりLDLも大事だ」と視点を少し元に戻したのでしょうか?

そういうわけではありません。もともとメタボリックシンドロームの診断基準にLDLコレステロールが入っていなかったため、現在のプログラムではLDLコレステロールに関する表記が手薄だったところがあります。新しいプログラム案では、そこをより明確に記述したわけで、考え方が変わったということではありません。


第2章 健診の内容

健診項目の基本的考え方の中で、「糖尿病等の生活習慣病」という記述が「糖尿病や脳・心血管疾患(脳卒中や虚血性心疾患等)等の生活習慣病」という記述に変わりましたが、その理由を教えてください。
【2-1 健診項目(検査項目及び質問項目)>(1)基本的考え方、参照頁:2-2】

もともと特定健診の目標自体が、糖尿病や脳・心血管疾患の発症を予防するというところにあるので、分かりやすくしました。

特定健診の基本的な項目で、「中性脂肪が400mg/dl以上である場合又は食後採血の場合には、LDLコレステロールに代えてnon-HDLコレステロールでもよい」との記述が加わりました。これについて説明をお願いします。
【2-1 健診項目(検査項目及び質問項目)>(2)具体的な健診項目> 特定健診の基本的な項目、参照頁:2-2】

2-1健診項目 ページ画像LDLコレステロールの算出には、主に総コレステロールからHDLコレステロールを引き、さらに中性脂肪の5分の1を引いた方法(フリードワルドの式)が使われます。しかし、この測定法だと中性脂肪の値が400mg/dl以上の場合には信頼性が低いという問題がありました。また、フリードワルドの式以外にもLDLコレステロールを直接測定する方法もあるなど、算出法が一本化されていないという問題もありました。さらに、健診現場では、必ずしも空腹時採血が実施できないという課題があり、空腹時採血以外の場合は、検査を実施したことになりませんでした。

non-HDLコレステロールは、総コレステロールからHDLコレステロールを引いた値ですが、以上のような理由から、今回は一定の条件下においてはLDLコレステロールに代わる有用な検査方法として、non-HDLコレステロールで評価してもよいということになりました。

「やむを得ず空腹時以外に採血を行い、HbA1cを測定しない場合は、食直後を除き随時血糖により血糖検査を行うことを可とする。なお、空腹時とは絶食10時間以上、食直後とは食事開始時から 3.5時間未満とする」との記述が追加された理由を教えてください。
【2-1 健診項目(検査項目及び質問項目)>(2)具体的な健診項目> 特定健診の基本的な項目、参照頁:2-3】

血糖値に関しては、空腹時に採血できなかったときに、時間上の制限はありますが、随時血糖でもまったく有用性がないわけではないので、それを使って評価ができることにしました。なお、ここで食直後を食後3.5時間未満としたのは、健康局の検討会で「食後3.5時間以上を経過すると血糖値の分布が空腹時に近づく」という専門家からの報告があり、それをもとに決めています。

新しいプログラム案では、「重症度に応じて受診勧奨方法を変更する等の工夫も必要である」など、健診結果に基づいた受診勧奨をより詳しく記述していますが、その理由について教えてください。
【2-2 健診結果やその他必要な情報の提供(フィードバック)について>(1)基本的な考え方、参照頁:2-5】

新しいプログラム案は、全体の流れとして、画一的な保健指導やフィードバックではなく、なるべく個人に合わせた方法を実施することに重きを置いています。受診勧奨に関する記述も、できるだけ個人に応じた対応を促すという意味合いで書き込まれています。


第3章 保健指導対象者の選定と階層化

従来は動機付け支援・積極的支援の対象者「以外」に対する保健指導の実施については「医療保険者の判断」としていましたが、新しいプログラム案では「保険者や市町村等の判断」というように「市町村等」の文字が加わりました。その理由について教えてください。
【(3)留意事項、参照頁:2-10】

2-10(2)具体的な階層化の方法 ページ画像市町村等に対して、より積極的に取り組んでいただきたいために表現を変更しました。現在の法律では、保険者に特定保健指導の実施義務を課していますが、特定保健指導以外の保健指導については義務となっていません。そこで、保険者や市町村等に、特定保健指導以外の保健指導の重要性を理解していただいた上で、可能な範囲で実施していただきたいという趣旨で書いています。

特定健診・保健指導は、いわゆるメタボの方々に対して集中的に働きかけることにより、病気の発症予防や重症化を防げることが科学的に明らかになってきたので、まずはそこを重点的に取り組むというものでした。科学的な根拠に加えて財政的な判断もあり、優先順位としてメタボ対策から始めることに決めたわけです。そうした中で近年、新たな科学的な根拠が揃ってきたので、特定健診・保健指導以外の部分もより強調してやっていくことになりました。今後、特定保健指導の対象者を広げるかについては、科学的な根拠と運用面の課題を踏まえ検討することになると思います。

同じ項目の中で、「腹囲計測によって腹囲基準に満たない場合にも、血糖高値・血圧高値・脂質異常・喫煙等のリスクが1つ以上存在している者では……」と、「喫煙等」が追記された理由について教えてください。

健康局の検討会の中で、「肥満が無い方にとっても喫煙は生活習慣病の重要なリスクの一つ」とのご指摘があり、それを受けて喫煙等を加えました。


第4章 健診における各機関の役割

今回、各機関の役割の中に、「都道府県の役割」が追加された理由について説明をお願いします。
【(3)都道府県の役割、参照頁 : 2-14】

都道府県は特定健診の実施主体ではありませんが、特定健診と密接に関係する都道府県医療費適正化計画の策定主体です。また、市町村は規模にばらつきがあるので、都道府県内全体を見ることができる立場の都道府県に、必要に応じて市町村を支援する役割が期待されています。従来もそうした支援はなされていましたが、現行のプログラムには明確な記述がなかったので、今回、明記することにしました。


第6章 年齢層を考慮した健診・保健指導について

新しいプログラム案では、高齢期を65〜74歳と75歳以上に分けました。その理由について教えてください。
【6-1高齢者に対する健診・保健指導、参照頁 : 2-22、2-23】

高齢期は、加齢とともにからだの状態が大きく変化し、個人差も大きいため、一括りに「高齢者」として語ることは難しいことから、一つの基準として前期・後期に分け、それぞれの時期に注意すべき点をまとめました。具体的には高齢になると筋力が衰えたり、かかりつけ医を持つ人も増えたりするので、画一的な保健指導にならないよう留意するということを盛り込みました。また、75歳以上の後期高齢者については「フレイル」に着目して対策をまとめています。


別紙3 標準的な質問票、別紙3(参考)標準的な質問票の解説と留意事項

項目数が22であることは変わらず、内容もだいたい同じですが、13番については内容が大きく変わっています。その解説をお願いします。
【別紙3 標準的な質問票、別紙3(参考)標準的な質問票の解説と留意事項、参照頁 2-29、2-35】

口腔機能が低下することで、野菜の摂取量が減少したり、場合によっては脂質や糖質の摂取量が増加してしまったり、生活習慣病のリスクが高まるという指摘がありました。また、歯の喪失でかめなくなることで食生活に関する指導を受けてもそれが実践できないなどの支障が出ることもあります。こうしたことから今回、口腔機能に着目することも生活習慣病対策に資するのではないかという判断で13番の内容を変更しています。


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