特集-インタビュー

第22回 <地域保健WEBより転載>
厚生労働省 健康局健康課保健指導室の右田周平専門官と同課川本めぐみ補佐が語る 「標準的な健診・保健指導プログラム(案)」 について

第3編 保健指導

第1章 保健指導の基本的考え方

生活習慣の改善を促す支援にあたっては、「心身の状態や現在の生活習慣が構築された背景要因(家庭・職場環境や経済状況等)にも留意」との記述があります。今回、背景要因がクローズアップされた理由を教えてください。
【(3)生活習慣の改善につなげる保健指導の特徴、参照頁:3-1】

標準プログラムの改訂にあたっては改訂作業班を設置し、それぞれの専門家の先生方からいろいろな意見をいただきましたが、特にこの部分については、「現在の生活習慣は長期間かけて形成されてきたため、その改善につながる支援は表面的な理由だけではなく、背景要因も踏まえた支援を行うことも必要」というご意見がありましたので、こういう形で追記しました。健康日本21(第二次)で、社会環境要因が強調されているということにも配慮しています。


第3章 保健指導の実施

「『動機付け支援』『積極的支援』に必要な詳細な質問項目」はかなり詳細にわたって記述されていますが、活用法について教えてください。 【3-1 基本的事項>表4「動機付け支援」「積極的支援」に必要な詳細な質問項目、参照頁:3-23】

現在のプログラムでは、健康意識や食生活習慣に関する具体的な確認方法は保健指導に携わる方に委ねられていましたが、保健指導実施者や作業班の構成員から「もう少し具体的な質問があったほうがよい」というご意見を数多くいただきました。そこで、厚生労働科学研究の研究成果を踏まえ、科学的な知見に基づいた具体的な質問項目を作りました。

これは標準的な質問項目とは違って、必ず全員に実施しなければいけないものでもありませんし、全部の項目を質問しなければいけないというものではありません。あくまでも保健指導を行う際に参考として活用していただければと考えています。ここにないことを聞いていただいてもよいし、ここからセレクトして質問していただいてもよく、初回の保健指導の際に、これらの質問項目等を実施することで、保健指導をすると人と受ける人が、現在の生活習慣や改善すべき課題を明確化し、保健指導に取り組むことが大切です。

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厚生労働省:「標準的な健診・保健指導プログラム(案)より/「動機付け支援」「積極的支援」に必要な詳細な質問項目

厚生労働省:「標準的な健診・保健指導プログラム(案)より
「動機付け支援」「積極的支援」に必要な詳細な質問項目

情報提供の項目で、「ICT等を活用した分かりやすい情報提供の推進」が新設されました。これについて説明をお願いします。
【3-3 情報提供・保健指導の実施内容>(1)「情報提供」>ICT等を活用した分かりやすい情報提供の推進、参照頁:3-46】

特定保健指導の対象になった方については、いろいろ情報提供する機会がありますが、対象にならなかった方の場合は、現状では、健診の結果を返すときに、結果の読み方とか、メタボ等に関する情報提供をして終わりというパターンが多いかもしれません。もちろん、それらも大事ですが、それに加えて、ICTを活用することで健診を受けた方にも受けてない方にも、健康について関心を持ってもらえるような取り組みをお願いしたい、という趣旨で書いてあります。

従来は、保健指導の評価は6か月後とされていたのが、3か月後でも可能となりました。制度を運用する現場にとっては大きな変化ですが、3か月後でも可能となった理由について教えてください。
【3-3 情報提供・保健指導の実施内容>(2)「動機付け支援」> 支援期間・頻度、参照頁:3-47、3-3 情報提供・保健指導の実施内容>(3)「積極的支援」> 支援期間・頻度、参照頁:3-49】

保険局の検討会の中で、実際の保健指導の場では、3か月の指導で一定の効果が得られているデータが示されるなどの議論がありました。また、保険者からも評価までの期間の短縮の要望が出されています。それらの事情を勘案し、保険局の判断で評価までの期間を短縮したものです。

ただし、保険者の判断で従前どおり6か月経過後に評価を実施したり、3か月経過後の実績評価後に独自のフォローアップを行ったりもできることになっています。なぜ、こうした記述になったのでしょうか。

今般の改正で3か月後の評価でも可能としましたが、保険局の検討会でも、健康局の検討会でも、評価までの期間が短縮することによって、保健指導の効果が低減することについて懸念する意見がありました。それらも踏まえた上で、制度的には3か月経過後に評価を行ってもよいことになりますが、従前どおり6か月後に評価を行うことも可能であることや評価を行った後も生活習慣の改善が維持されていることを確認することは重要であることを強調するために、このような記述をしました。

確認ですが、まず保険局の検討会の構成員から「運用を弾力化したい」との要望があり、「リバウンドの懸念はあるけれども、まずは数字を達成しよう」ということで運用の弾力化を図った。しかし、健康局としては、リバウンドの懸念をカバーするために、現場ではある程度フォローアップしていったほうがいいという記述も盛り込んだということですか。

保健指導をどの程度やれば十分な効果が得られるかについてのエビデンスは、まだ十分に蓄積されていません。現行制度の「6か月で180ポイント」というのは、モデル事業を通じて得られた知見から導かれたものです。3か月後に保健指導を受けたすべての人が十分な効果を得ることができるかどうかについては、現時点では、科学的な知見が十分に蓄積されていません。保険局の検討会では、「3か月でも体重減少の効果がある」との研究結果が資料として出されました。保険者からは見直しの要望が出されています。それらを含めさまざまな事情を勘案して、今回の結論に至ったのではないかと思います。評価までの期間を3か月に短縮した今回の制度改正の効果や影響については、今後、保険局で評価をしていくことになると聞いています。

2年連続して積極的支援に該当した人の場合、2年目の特定保健指導は保険者の判断で弾力的に運用できることになりましたが、その理由について教えてください。
【3-3 情報提供・保健指導の実施内容>(3)積極的支援、参照頁:3-49、3-8 2回目以降の対象者への支援、参照頁:3-72】

ここは健康局の検討会でも議論になったところです。構成員の先生方からは、「繰り返し積極的支援の対象となる人は、そうではない人よりも保健指導の効果があらわれにくい人の割合が多い可能性がある。より個別性に応じた保健指導や、同じ保健指導を繰り返すのではなく、目先を変えた保健指導を実施する必要があるのではないか」という意見がありました。保険局の検討会でも、そうした意見が出ており、それらを踏まえて今回のプログラムに盛り込みました。2年連続して積極的支援に該当した人への保健指導の弾力的運用には、「前回の保健指導のときから、腹囲が1センチ以上かつ体重が1キロ以上減っている」など、一定の条件がつきます。具体的には、保険局から通知等で示される予定です。

特定健診の当日に、腹囲・体重、血圧、喫煙歴等の状況から特定保健指導の対象と見込まれる人に対しては、初回面接を行って暫定的な行動計画を作成し、後日医師が総合的な判断を行うことができるようになりました。初回面接を分けることを可能とした理由を教えてください。
【3-3 情報提供・保健指導の実施内容>(4)「実施に当たっての留意事項」>健診当日の保健指導の実施について、参照頁:3-62】

初回面接を分けることについては、保険局の検討会で構成員から強い要望があったと聞いています。具体的な実施方法等については、保険局から通知等で示される予定です。

「3-9 特定保健指導の対象とならない非肥満の脳・心血管疾患危険因子保有者に対する生活習慣の改善指導」が新設された理由を教えてください。
【参照頁:3-73】

健康局の検討会では、特定保健指導の対象とならない人でも、高血圧、脂質異常、高血糖、喫煙習慣のある人は、そうではない方と比べて、脳血管疾患や心疾患になるリスクが高いというデータが示されました。そこで今回、これらの方々に対する保健指導についてもその重要性や具体的な保健指導の方向性について示しました。

現行のプログラムでは、高血圧や高血糖などのリスクごとの指導、あるいは減塩や運動等の生活習慣ごとの指導については記載していませんでしたが、これらの内容は、非肥満者でリスクのある方だけではなく特定保健指導の対象者にも使える内容であるので、表12として新たに追加しました。


最後に、現場の方々にメッセージをお願いします。

「標準的な健診・保健指導プログラム」は、「特定」という言葉が入っていません。本プログラムは、特定健診・保健指導に限ったプログラムではなく、健診・保健指導全般で参考にしていただくためのプログラムだからです。ただ、そうはいってもいろいろな健診がある中、一定の限られた分量でプログラムを提示することには限界がありますので、ここでは法律に基づいて実施する健診の中でも比較的体系化されている、特定健診・特定保健指導を中心にしてまとめてあります。特定健診・特定保健指導以外の健診・保健指導でも、本プログラムに記載している内容で使える部分があれば積極的に参考にしていただき、より効果的かつ効率的な健診・保健指導を実施していただければと思っています。 (了)


参考資料

【厚生労働省 保険局】
特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(案)(第3版)
バックナンバー
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