特集-リレー連載
タイトルどおりSNS保健指導向上委員会の現場に関わる会員の方を中心に、リレー形式で連載記事を執筆いただく新企画。
毎回、執筆いただいた方に「次はこの人にこれを聞きたい!」をお聞きし、バトンをつないでいきます。

第2回は、運天勲さん⇒富永典子さん へのバトンです。

第2回 「今行っている事業の取り組み、とくに支援方針等について」

エア・ウォーター健康保険組合 主任 富永 典子(とみなが のりこ)
(SNSハンドルネーム:とみりん(tomirin))
1983年北海道B市に保健師として就職。B市退職後、ほくさん健康保険組合(現;エア・ウォーター健康保険組合)に保健師として就職し、現在に至る。 2007年3月、奈良女子大学大学院修士学位取得。
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富永典子さんからのひとこと
ウータンさん、バトンをありがとうございます。
今行っている事業ですか?もちろん「特定健診・特定保健指導」は行っています。
ええ、もう、この事業にふりまわされています(苦笑)。

当健康保険組合は・・・

当健康保険組合は札幌市に位置し、適用事業所48ヶ所、被保険者数約7,400名弱、平均年齢44歳の単一健康保険組合で、専従保健師は、平成3年度から1名、平成19年度から2名(札幌・大阪各1名)です。被保険者の職種は営業職、工場作業員、SE、物流ドライバー、食品加工等など多種多様で、また営業所等は沖縄県を除く全国に散在しているため、専従保健師のみの対応では限界があり、外部機関との委託契約を活用し、被保険者に対しては事業所で、被扶養者に対しては家庭訪問による面談支援を行っています。平成20年度からは、「特定保健指導」が義務化となり、多少の混乱は生じていますが(準備事後の事務量が倍増!)、従来からの支援業務に組み入れる形で実施しています(H20面談数1,281名)。


「40歳からでは遅い!」

当健康保険組合では、この明快な方針のもと、生活習慣病予防健診(以下、健診)の費用補助に年齢制限はありません。約20数年前から全被保険者および被扶養者(妻のみ)に対し、積極的に健診受診を推進し、被保険者においては各事業所での労働安全衛生法に基づく定期健康診断の費用を補助する形で検査項目を充実させ、全事業所に年齢制限なく受診させるよう要請しています。その結果、毎年、被保険者の受診率(=費用補助申請率)は9割近く、その健診データは当健康保険組合の管理システムに登録され、それに基づいて面談支援やダイエット教室等を行っています。またレセプト情報は、10数年前からすべて電子データで登録管理され、現在はオンライン請求となり、医療費データとの突合・分析が電子処理できる体制が整っています。


ターゲットは肥満と禁煙

ダイエット教室

平成6年度からは、肥満改善のためのダイエット教室を始めました。保健師個々の対応では埒があかない、グループダイナミックス効果を期待してのスタートでした。3〜6ヶ月間の通所型、2泊3日の合宿型と、その時々で形は変えてきましたが、参加者主体の目標設定型であること、体験学習やグループワークを主とした内容であることを共通としたプログラムです。過去の教室では、教室の参加男性と未参加の肥満男性とで、教室前後の健診結果と医療費を比較検討し、体重減量に伴う肥満関連指標(血圧、肝機能、脂質、耐糖能など)の改善はもちろんのこと、教室2年後の約2kgの減量が一人あたりの年間外来医療費約2万円の抑制効果があったことを成果としてまとめました1)2)

グループ支援は、スタッフにとっても楽しくてためになります。医師、保健師、管理栄養士、健康運動指導士などの多職種がチームを組み、プログラム内容や実際の支援ポイントなどを調整・決定していく過程は、保健師単独での実施に比べ、視野は際限なく広がり、知識も深まっていきます。そして何より、参加した方々が「参加してよかった」、「成果を出したよ!」と喜ぶ笑顔は、スタッフにとって最大の報酬です。教室前後での「ダイエットの必要度」と「成功できる自信度」についての自己採点で、会社命令で参加し10点満点中3点前後だった男性が、教室後には6〜7点に跳ね上がるなど、その際のにこにこ笑顔があるから、この商売はやめられないといっても過言ではない(苦笑)。


ポピュレーションアプローチ

長年、肥満改善のための事業を続けてきて言えるのは、「ハイリスクアプローチ」には限界がある、ということです。いつまでやっても、対象者がいなくて困る、とはならない(苦笑)。そこで、平成20年度の教室から、肥満者への「ハイリスクアプローチ」と同時に、「ポピュレーションアプローチ」を試みています。教室開催中の数ヶ月間、教室会場としたW工場の未参加の従業員に対し、教室内容を「やせる新聞」として回覧したり、食堂テーブルに卓上メモとして食事や運動などに関するミニ情報をクイズ形式で掲示するなど、工場全体へ情報提供を行いました。その効果は、現在、まとめている最中ですが、他の事業所からも「うちでもぜひ、やってほしい」との声が労働組合にも届くほど、大変好評です。結果がまとまったら、どこかで発表したいと考えています。


積極的な禁煙推進

生活習慣病の予防には、禁煙推進は欠かせません。むしろ、リスクの大きさはMS以上です。喫煙習慣は、各種がんのみならず、特定健診・特定保健指導のターゲットでもある心・脳血管疾患発症の大きな要因であり、また現役世代の死亡率やQOLに多大な影響を与えます3)

現在は、医療機関での禁煙治療や薬局でのOTC化がすすみ、ニコチン代替療法が浸透しつつあります。当健康保険組合でも、各事業所に対しては職場環境の禁煙化を積極的に要請し、個人に対しては、平成14年度から禁煙講座やニコチンパッチの費用補助、禁煙マラソンによるメール支援を行っています。過去の講座では、1年後の禁煙継続率は8割を超え、また職場環境の禁煙化も年々進み、禁煙の輪は広がりをみせています。


調査研究

実は、2004年度から健診時にライフスタイル調査を実施しています。調査内容は、大阪大学の森本兼曩先生が提唱する「8つの生活習慣」をもとに作成したもので、健診結果と医療費のデータを結び、生活習慣の変容が、疾病リスクと医療費に実際にどのように影響を及ぼすかについて追跡・分析中です。なかなか興味深い結果になりつつあります。

つい先日、厚生労働省から「平成20年度国民健康・栄養調査」の概況が公開されました。数十年前から実施されているこの調査結果は、毎年、楽しみにしていますが、今回は何といっても「特定健診」初年。さっそく「MS該当者および予備群」の調査結果と、当健康保険組合の「生活習慣病予防健診」の結果とを比べてみました。

当健康保険組合の40〜59歳では全国平均よりも予想以上にMS率が少なく、安堵しました。偶然の可能性はぬぐいきれませんが(苦笑)、年齢を問わない予防事業の成果かなと前向きにとらえたいと思います。

文献

  1. 富永典子,佐藤きぬ子,坂根直樹ほか:2泊3日合宿・体験学習形式による肥満教室の効果−減量効果の継続性について−(第1報).肥満研究 Vol.9,2003:177-179
  2. 富永典子,佐藤きぬ子,坂根直樹ほか:肥満教室が外来医療費に及ぼす影響について.肥満研究 Vol.10,2004;314-316.
  3. 禁煙指導・支援者のための禁煙科学.日本禁煙科学会編集,2007.

次回予告

富永典子さん⇒伊藤孝子さんへのバトン
「管理栄養士ならではの目のつけ処や支援のポイント」を聞いてみたいと思います。

次回をお楽しみに!

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