特集-リレー連載

タイトルどおりSNS保健指導向上委員会の現場に関わる会員の方を中心に、リレー形式で連載記事を執筆いただく企画。毎回、執筆いただいた方に「次はこの人にこれを聞きたい!」をお聞きし、バトンをつないでいきます。

第6回は、高橋章さん⇒横地裕さん へのバトンです。

第6回 「身体活動計を用いて行動変容に向けた気づきを促す」

株式会社スズケン ケンツ事業部研究開発課 統轄課長
NPO法人健康増進推進機構 副理事長
横地 裕(よこち ひろし)
1981年に螢好坤吋麁社。医療情報系SE、生体信号(長時間心電図、圧脈波、発汗波など)解析研究の傍ら、加速度センサを用いた身体活動計測研究に従事。技術確立後は身体活動計を用いた効果的な運動療法、保健指導の方法を現場と一緒に探求してまいりました。
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横地 裕さんからのひとこと
私は現場で直接指導することがないため、まさか自分にバトンが渡されるとは思ってもいませんでした。しかし思い返せば、平成12年に社内にハビット(生活習慣改善支援)センターを開設し、2年間ITを用いた指導支援に直接従事していました。その頃の思いも含めお話しさせていただくことが、少しでもみなさまのお役に立てるのではないかと思いお受けすることにしました。

身体活動計誕生秘話

『身体活動計』といった「身体活動を測定する機器」が最近はさまざまな企業から発売されていますが、この前身に『活動量計』があります。『カロリーカウンター』という名前をみなさんご存じでしょうか? 消費カロリー測定機として私が手掛け、昭和60年に製品化したものです。当時は、歩数表示もなく一般市場には馴染みませんでしたが、糖尿病の食事療法時などに、エネルギー出納のバランスの目安が示せればという思いでつくりました。

この消費カロリー測定機を糖尿病の運動療法の現場でご利用いただくなか、あるドクターから「運動した結果だけでなく、その経過を観ることができないだろうか。それができたら、より患者さんの日常がわかり具体的な指導ができる」との問いかけをいただきました。これが次なるステップの出発点となりました。

技術畑のメンバー中心に9名でプロジェクトをつくり、平成10年にドクターの問いかけへの答えとして出来上がったのが『身体活動計ライフコーダ(R)』です。この機器の特長は、1日の活動量の推移をグラフ化したことです。自分たちが初めて世に出した製品を手に持ち、健康づくりのお役に立ちたいと、プロジェクトメンバー全員で全国を回り市場の感触を確かめました。実際に、糖尿病教室で患者の方からは「先生からよく頑張ったねって、グラフを一緒に見ながら褒めてもらえると嬉しくなっちゃう。自分の身体のことだもんね」という声を耳にしました。難しい説明より、自分自身の日常生活の状況をビジュアルに見せることが、行動変容につながる。これが先生のやりたかったことだったんだと改めて実感しました。


聞こえてきた対象者の「生の声」

その後、社内で『生活習慣改善支援システムハビット(R)』をつくりました。これは、電話回線システム使うことで、利用者に身体活動に加えて食べた食事内容を入力してもらった情報から生活全般のアドバイスをするシステムです。

その時に感じたのは、測定値など客観的なデータをもとに支援することで、自分の生活習慣のクセを自覚してもらえれば、自ら行動を修正しようと思ってもらえるということです。実際にデータから、「脂っこいものを食べ過ぎていたんだ」「夕方お腹が空いて、よく菓子パンをつまんでいた」「たくさん歩いていると思っていたが平日はほとんど動いていなかった」といった、自分の生活の問題点に気づき、生活習慣を変えていかれた方がいたことは大変うれしいことでした。


身体活動計を使った保健指導とは?

カロリーカウンターを出して四半世紀、活動量計の存在がようやく一般に認知されてきたのは嬉しいことです。しかしいまだに、ライフコーダ(R)を「PCに繋げる歩数計」と思われている方が多いのは残念でなりません。

身体活動計で、私がいちばん観ていただきたいのは『日内変動グラフ』です。保健指導時に、メタボ改善に必要な情報提供に加えて、対象者の身体活動をあらわしたこのグラフで日々の生活実態を、対象者と指導者が一緒になって再認識していく。『日内変動グラフ』はかなりリアルに対象者の生活を想像できますので、一緒にグラフをみていくと、対象者が自覚していなかった生活習慣も知ることができます。こうした情報を活用することで、指導者と対象者の関わりに変化がうまれる。身体活動計は、対象者と指導者の心の距離を縮めるツールだと思います。


保健指導のキラーアイテム
〜中之条研究とSAT法(ヘルスカウンセリング)

「栄養指導もしないといけないし、ツールのデータの説明なんて時間がとれないよ。」そうおっしゃられるかもしれません。

中之条町研究()での経験によると、日常身体活動量の多い人(動こうという意識のある人)は食生活にも関心が高い。このような方に関しては、普段は身体活動量と体重推移だけを観察し、両者間に不整合(動いているのに体重が増えるなど)があった時に食事介入する。それでうまくコントロールできると感じています。

「歩数には1万歩という目標があるけど、日常身体活動はどうだったらいいの? 指導するにも目標がハッキリしなきゃね。」よく問われました。ライフコーダ(R)による日常身体活動の状況(1日歩数と中強度以上の積算時間)と健康リスクとの関係は、過去10年、群馬県中之条町民の協力で、東京都老人総合研究所によって世界に先駆け明らかにされました(青帽利ほか:高齢者における日常的な身体活動と心身の健康:中之条研究,保健師ジャーナル65-12,1042-1053,2009,医学書院)。

これを基にすることで、活動量から健康リスクがわかるので、ひとりひとりにあった目標も立てやすくなります。また就寝時も着けていることで、よく眠れているかの見当もつきますので、うつなどメンタル的な問題の発見やサポートとしても利用できると考えています。

そして面談手法として役立つのが『SAT行動変容支援カウンセリング法』。私はいま、これまでに確立した日常身体活動の計測技術によって蓄積されたエビデンスに、SAT法をミックスすることで、多くの対象者の生活を効率的に短時間でアクティブに変える方法を提案したいと考えています。さわりは昨年12月『特定保健指導のツール(横地裕ほか:特定保健指導のツール,臨床スポーツ医学26-12,1549-1554,2009,文光堂)』にまとめています。また指導例【PDF】を作成しましたのでご紹介させていただきます。ご参考ください。


おわりに

ストレスの多く忙しい環境で、無理をしたまま生活し、病気になってしまってから医療を受ける。いまだそんな状況にある社会を変えていきたいと思っています。制度的にはまだ課題を残す『特定保健指導』事業ではありますが、みなさん一致団結してこの予防(医療)施策を成功させ、定着させていきましょう。周りに笑顔があふれる社会づくり、その一部に参画できるだけで、私は幸せです。


次回予告

横地裕さん⇒米嶋トシ子さんへのバトン
米嶋さんには、「趣味のパッチワークで引退後の生活をエンジョイする計画を変更してまでも、この特定保健指導や小児・学童の健康づくりに懸ける、その熱い思い」についてお聞きしたい!

次回をお楽しみに!

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ニッポンの健康づくり 辻一郎先生 津下一代先生 インタビュー
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