特集-リレー連載

タイトルどおりSNS保健指導向上委員会の現場に関わる会員の方を中心に、リレー形式で連載記事を執筆いただく企画。毎回、執筆いただいた方に「次はこの人にこれを聞きたい!」をお聞きし、バトンをつないでいきます。

第8回は、米嶋トシ子さん⇒岩崎恵子さん へのバトンです。

第8回 「特定保健指導実施の現場から」

財団法人宮崎県健康づくり協会 保健師
岩崎 恵子(いわさき けいこ)
(SNSハンドルネーム:けい)
平成2年 宮崎県対がん協会(統合前の団体)入社
平成9年 4団体が統合し、宮崎県健康づくり協会設立
現在は健康推進部に所属し、特定保健指導、各種がん検診の事後管理、県の委託事業を担当している。
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岩崎恵子さんからのひとこと
米嶋さんからのバトンは、「実際行っている特定保健指導について出てきた問題点、評価」についてでした。そこで、私の所属している宮崎県健康づくり協会で実施している保健指導の内容を実際の流れにそって紹介します。

宮崎県健康づくり協会の保健指導

保健指導担当者は全8名

宮崎県健康づくり協会は、宮崎県市町村などが実施する保健事業を幅広く支援するため設立されました。保健指導の実務を行っているのは、平成20年度に新設された健康支援課健康支援係です。現在は、6名の保健師、2名の管理栄養士で県下全域をカバーしています。全員が所定の研修を受けており、スキルアップのための研修会やメンタルヘルス研修会、全国禁煙アドバイザー育成講習会などにも積極的に参加しています。

指導マニュアルを独自作成

支援の目的、対象者、支援期間、支援形態などを明記し、どのような支援を行うのか、その実施方法、内容、使用媒体等を細かに示した協会独自の特定保健指導マニュアルを作成しました。これを元に支援を実施するので、指導者全員が情報を共有化することで同じように支援することができ、指導者によって支援内容にバラツキがみられることはありません。

指導マニュアルの一部をご紹介します【PDF】
健康づくり協会の保健指導の形を表したものと理解してください。どのように支援するか詳しく記し、その場面でどういう材料が必要になるかを明記してあります。使用材料については、既存の資料や独自に作成した資料があります。毎年、検討していきますので、こちらは22年度の案です。
このマニュアルについては、宮崎県看護協会がマニュアルをつくるときの参考にさせてほしいということで、21年度に資料提供もしました。

協会には、医師、保健師、管理栄養士、健康運動指導士などのスタッフがそろっているので、マニュアル作成時にはお互いに意見交換を行い、保険者ごとに支援内容や支援ツールも地域性を考慮した内容で作成しています。

実績

・平成20年度実績
動機付け支援:410名
最終評価      :339名(82.7%)
積極的支援   :86名
最終評価      :49名(57.0%)

・平成22年度実績
動機付け支援:675名
積極的支援   :332名
最終評価については、現在も実施中


保健指導の実際

企画 保険者と同じ方向性をもつことが連携のカギ

指導の依頼を受けたら、その保険者と綿密な打ち合わせを行います。保健指導は全員で協力して実施しますが、地区毎に担当者を決めており、契約に必要な打ち合わせを行い、保健指導日程などの連絡調整を中心となって進めていきます。

それぞれの保険者の特徴がありますので、保健指導の案内方法、場所、時間、指導の形態(グループ支援か個別支援)、継続支援の方法、ポイントの獲得、記録物の提出などについて、細かに打ち合わせ、契約を交わします。特定保健指導を実施することでそこに期待するものを両者ですり合わせ、同じ方向性をもって進むことで、スムースな連携がとれます。

支援形態 グループダイナミックス効果のあるグループ支援を中心に

保健指導は、主にグループ支援を行っています。できるだけ全員が意見を言いやすいように4〜5名で1グループ作っています。グループでお互いに意見を交わし、「あなたにできるなら私にもできるかも」という言葉や、お互いに励まし合う姿を見て、グループダイナミックスの効果が感じられました。中には時間に余裕がなく、個別支援に切り替えて実施した例もあります。その状況に合わせて臨機応変に対応しています。

また、市町村職員など勤務されている方は長時間の拘束が難しいため、担当者と協議の上、個別支援の形態で実施しました。

支援内容 対象者が納得する支援内容を

実際の支援では、アイスブレイキングを行い、参加者の緊張を解きほぐすことからスタート。笑いがおきたところで、本題に入ります。なぜこの教室に呼ばれたか、そこが参加者の疑問となっているので、まずは参加していただいたことを賞賛し、健診結果から自分の身体を知ろうというタイトルで、今の自分の身体の中に起こりつつある変化を知り、健康づくりのための行動が大切であることを解ってもらいます。対象者が納得すると、自ら生活習慣を振り返って考えられるということを実感できました。些細なことでも対象者の疑問を解消し、信頼関係が構築できることで教室はスムースに展開できました。

参加者それぞれの行動目標を設定し、計画を立てて、実行可能かどうかを振り返り、次回の案内を行って終了です。

評価 企画時から評価方法を明確に

評価のための数値データとしては、体重、腹囲のみで、血液検査はオプションとなるため、ほとんどの保険者が実施していません。生活状況や意識の変化については、初回面接時に記入していただいている生活状況調査票(独自作成)を使っています。食事、運動、休養、たばこ、アルコール、その他について記入していただき、初回、中間(積極のみ)、最終の変化をみるようにしています。また、終了時に指導日程や場所、指導者の態度などについて無記名のアンケートをとっています。

評価には、経過評価、影響評価、結果評価がありますが、評価のための情報をいつ、どのようにして収集するのかということを、企画の段階で明確にしておく必要があります。アウトソーシング機関としてできる評価の部分と保険者がしないといけない部分がありますので、企画の段階で両者できちんと押さえておくことが大切です。

保健指導実施率UPのための対策 〜G町の事例

保険者にとっては、実施率を上げることが課題ともいえますので、私たちも保険者と協力して、保健指導実施率を上げる対策を考えます。

実際にどのような対策を立てたかG町の事例を紹介します。G町は平成20年度を直営で実施しましたが、実施率がかなり低かったということで、平成21年度からアウトソーシングされ、私たちが関わってきました。担当者の思いとしては、何とか実施率を上げたいということでしたので、両者でどうすれば初回面接に来て頂けるのかを協議しました。地区長さんを通じて案内してみる方法、地区毎に説明会を開催するなど、様々な意見が出た中で、結果通知を郵送せずに結果説明会と保健指導を同時に実施したらどうかという案をもとに調整することになりました。

保健指導対象者だけをそのような形にすると「どうして自分たちだけ?」という不満も出てきます。また、指導対象者以外にも指導の必要な方がたくさんいるので、町としても受けられた方全員に何らかのアプローチをしたいと、全員対象に結果説明会を開催することとなりました。

健診会場で町の担当が「今年度から結果説明会を開催して、その時に結果通知をお渡しします」と説明しながら同様の内容のちらしを配布しました。そのときに保健指導の対象となった方は別日程で説明会と保健指導を行う旨を伝えています。大体健診受診後、1か月くらいで結果説明会が開催され、新たな取り組みでしたが、参加率も60%以上でした。そして特定保健指導の初回面接の実施率は80%以上となりました。思った以上の成果に私たちも町も驚きでした。


今後の課題となること

1.実施率のUPと途中脱落者対策

健診結果が対象者の手元に届くとそれで安心して指導まで受けないケースがあるので、指導を受けることで自分にどんなメリットがあるかわかるような内容の案内文を検討していきたいと考えています。

また、途中脱落をできるだけなくせるよう指導曜日や時間帯、支援形態の考慮をした上で、対象者にとって忙しい時間を割いても受けてみようと思われるような指導プログラムの構築が必要であると感じています。

2.評価

体重、腹囲測定データは、積極的支援については面接を行い指導者側が測定しているので、大きな誤差がないのですが、動機付け支援は通信による評価を行っていて自己測定となっているため、体重に変化がないにもかかわらず、腹囲が極端に減少しているケースがあります。測定方法の問題なのか、実際の数字を記入して頂けていないのか把握できません。データの信憑性も課題となっています。

3.その他

「指導の案内がきたが、病院の医師からはこのくらいは大丈夫だと言われたので指導は受けません」というケースも多かったです。医師の判断する「大丈夫」の基準と指導として考える基準に差があるため、対象者の不信感につながっていると感じました。対象者には治療として考える基準と指導として考える基準をわかりやすく説明して、医師が「このくらいは大丈夫」と言われるときから生活習慣を見直して健康づくりに取り組んでいくことが大切であることを繰り返し伝えていく必要があると思います。


最後に

試行錯誤の状態から始まった特定保健指導も今年で3年目に突入しました。毎年、事業の振り返り、次年度へ向けて新たな支援媒体の作成やプログラムの見直しなどを行っています。係が一丸となって取り組める環境ができているのがうれしいです。お互いを思いやりながら、「報告・連絡・相談」を忘れずに、これからもアウトソーシング機関としてできる限りのことを取り組んでいきたいと思います。


次回予告

岩崎恵子さん⇒川上徳子さんへのバトン
「地域の栄養士さんを統括して、指導日程などの調整などを行っていらっしゃる川上さんに、人材育成等も含めて、現場でご苦労されていることなどもお聞きしたいです!」とのこと。

次回をお楽しみに!

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