特集-リレー連載

タイトルどおりSNS保健指導向上委員会の現場に関わる会員の方を中心に、リレー形式で連載記事を執筆いただく企画。毎回、執筆いただいた方に「次はこの人にこれを聞きたい!」をお聞きし、バトンをつないでいきます。

第10回は、川上徳子さん⇒伊神和史さん へのバトンです。

第10回 「知って得する7つのエビデンス これで運動指導をパワーアップ」

健康運動指導士・理学療法士
伊神 和史(いがみ かずふみ)
(SNSハンドルネーム:極楽ハゼ)
1959年名古屋市生まれ、血液型O型。大学卒業後、大手乳業メーカ−勤務、全日本スキーメーカーサービスマン、障害者施設勤務を経て、現在は健康運動指導士・理学療法士として岐阜県山間部の公立病院勤務、幅広い疾患の地域医療を行う。介護予防認定理学療法士として地域の高齢者対策に従事し、地元の障害児リハビリを担当。休日は、(財)日本体育協会アスレチックトレーナーとしてスポーツ選手の対応を行う。(財)障害者スポーツコーチ・トレーナー・上級指導員として障害者スポーツに従事。自らも年代別国体等でアンチエイジング実験台として県自転車競技の代表選手として走る。
<所属>
日本体力医学会・日本理学療法士会・日本健康運動指導士会
(財)日本自転車競技連盟 岐阜県理事・医術委員 公認審判員
日本障害者自転車協会 副会長
(財)愛知県体育協会・岐阜県体育協会 国体強化トレーナー
(財)日本陸上競技連盟・(社)日本トライアスロン連合公認審判員
SNS保健指導向上委員会 極楽ハゼさんのマイページはこちら

伊神和史さんからのひとこと
川上さんからのバトンは、「運動による健康支援の秘訣を、運動がすごく苦手な支援者(私自身も含め)のためにも、お聞かせください」とのこと。今までのリレー連載を読ませていただき、同じことが重複するといけないので、運動指導について補足説明に入ろうかなと思いました。サイトの皆さんの期待に答えて少し「マニア」的な内容かも。メタボ解消だけでなく、多くの世代への運動指導という視点で7つのポイントをまとめました。皆さんの指導のお役に立てれば幸いです。

目次

1. 測定値の留意事項「だまされるな、データはこう読め」
2. 摂取と消費の微妙な関係「バランスの“妙”を知る」
3. 運動の継続「楽しくなければ続かない・人間はサボりが大好き」
4. アンチエイジング「もう歳だからなんて言わせない」
5. Over loadの基本「トレーニング、いつまでも同じじゃ、進歩無し」
6. リスク管理「心拍数のマジックにだまされるな」
7. Warming-upと運動強度「定期預金と脂肪燃焼の意外な共通点」


1. 測定値の留意事項「だまされるな、データーはこう読め」

体重の増減は、最も簡便な指標ですが、筋肉で増加したのか、脂肪で増加したのかその内容が判断できない為に、BMIの判定ではマッチョ系の筋肉の重いパワー系スポーツ選手は肥満判定になりやすく、逆に、同じ体積でも脂肪の比重は筋肉より軽いので、骨や筋肉が極端に少なく脂肪の多い女性が正常判定になったりする場合があります。

そのため最近は体組成が重視されます。

体組成は脂肪組織とそれ以外の筋肉や骨などの除脂肪組織にわかれます。体脂肪の測定は、正確には水中体重で計測しますが、深い水槽の水中ブランコの中で潜って、息を吐ききって、体重を測り、残気量を測定するのは普通の方にはとても苦しく現実的ではない測定方法です。もう一つの全身計測法のガス拡散法もありますが、いずれにしても装置が大掛かりで、非常に高価です。

皮下脂肪測定皮下脂肪の厚みを各部位計測して体密度を求める方法はスタンダードで(女性には、皮下脂肪をつままれるという面でプライドを傷つけられ不評ですが)、自らの余分な「お肉」を認識できるというメリットもあります。他にも、エコーやMRI、近赤外線などで体の各部を計測し推定で全身を割り出す方法もあります。

現在普及している体脂肪計の多くは、電気抵抗でインピーダンス値を求め、体水分量から電気を通しやすい筋肉組織と、通しにくい脂肪組織にわけて、体脂肪を推定する方法です。水中体重などのスタンダードな方法で計測したデーターを元に、「電気抵抗がこのぐらいなので、このくらいの体脂肪だろう」という推定式を元に算出している為『直接、体脂肪を計測しているわけではない』事を理解してください。脱水状態の運動直後や、大酒を飲んだ翌日、トイレや入浴の前後でも数値は変わってしまいますから、いつも同じ条件で増減の比較するのに利用するといいでしょう。インピーダンス法は水中体重に比べて、肥満者にやや甘く、細身筋肉質の方の体脂肪は多めに出る傾向が以前はあったので、運動選手専用モードなどが用意されている機種もあります。

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2. 摂取と消費の微妙な関係「バランスの“妙”を知る」

摂取カロリーと消費カロリーの需給バランスが大切なのは、皆様ご存知の事実です。食べ過ぎで通常の活動量の場合、また運動不足で適度な食事量の場合のどちらも余分なエネルギーは脂肪として貯蔵されます。

一見バランスが取れているように見える、摂取カロリーも少なく運動もしない(less-less系)タイプは、見た目にはスレンダーになりますが、長期的に徐々に筋肉量の減少が生じ、基礎代謝量も減少し、摂取カロリーが少ない為に、体内にエネルギーを溜め込もうとする方向に生体防御します。そのため、関節を保護する筋肉量が極端に少なく、骨関節疾患のリスクが高まる可能性があります。

カロリー制限による減量方法は、over-intakeで極端に体脂肪と体重が過剰で、関節への負担が大きく、運動を行う事が不可能な群では初期治療には有効です。しかし長期的には続かないし、身体にダメージがあり、徐々に減らなくなってくるので、水中運動や自転車など関節への負担の少ないエクササイズを併用して、ある程度体重・脂肪が落ちて関節への負担が減少してから、歩行など陸上での鉛直方向の荷重運動に移行すると膝を痛めずに安全にエクササイズが出来ます。

ちなみに、同じ摂取カロリーなら、それを“いつ”摂取するかにこだわってみましょう。

早朝起床時など空腹時の運動は、非常に軽めの散歩程度の運動強度がいいです。空腹時の強い運動はエネルギー切れを生じてしまい、筋蛋白を分解してせっかく作った筋肉を台無しにしてしまうだけでなく低血糖をおこし危険です。

コラム「運動前後、飲んで食って鍛えろ!」

トレーニングでしっかり筋力エクササイズをするときは2〜3時間前にエネルギーになりやすい炭水化物を摂取するように心がけましょう。運動前に摂取した炭水化物は適量であれば、消費してしまうので問題ありません。

運動直後は一過性に成長ホルモンの分泌が高まっているので、そのタイミングで食事を摂取すると効果的です。例えば、同じトータル1700kcalを摂取する、朝400昼700夜600kcalよりも「三度のメシ朝400昼550夜500+運動2−3時間前150+運動直後100kcal」の5食に変えてみましょう。分割する事で、一度のドカ食いがなくなり、運動に必要なエネルギーを補充でき消費もできます。また運動直後にBCAA(分岐鎖アミノ酸)で即効吸収させて、この状態を維持するために、タンパク質を炭水化物と一緒に摂取すると、筋肉づくりと筋肉中のグリコーゲン補充になり効果的です。

また成長ホルモンの分泌は就寝後にも高まるので、夕食前にレジスタンス運動などをして、夕食にはやはりタンパク質を含む食事を心がけるといいですね。

また、最近問題の熱中症対策も、運動前・中・後の電解質を含んだ積極的な摂氏7度前後の水分摂取は基本です。同時に日常エアコンの快適性に守られた現代人は人間が本来もつ温度調節機能が低下しており、暑さに慣れさせるという基本的な「馴化」というトレーニングがなされていない為に、少しの環境変化にも対応出来なくなってきています。

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3. 運動の継続「楽しくなければ続かない・人間はサボりが大好き」

保健指導で運動教室を行ない、半年継続してその間は効果があっても、教室をやめてしまったあとにドロップアウトしてしまう方がみえるのは残念な事です。

さて、どうしたら継続できるのか?

「仕方なく、やらされている」という感覚がある患者さんは、絶対に長続きはしません。病院で行われている理学療法は「回復のため」という大義名分があり、早く治そうとする「目的」があるので、病院のリハビリはつまらないけれど頑張れます。ところが、日常生活に支障が無くなれば、ほとんどは運動継続がなされていないのが現状で、保健指導のドロップアウトと同じです。

【症例1】
足関節骨折後の関節機能障害に対して、足関節の機能改善に優れた自転車運動を退院時に紹介したところ、スポーツの楽しさにはまって、大会にも出場する為にチームに所属して、退院後も継続して体型も維持しています。

症例1の患者さんのように、運動に楽しみを見いださない限り継続は難しい課題です。「血糖値にいい」と言った所で、「運動しないと悪くなるという、切羽詰った意識」以外の方では、なかなか継続できません。誰でも楽に結果を出したいから、手っ取り早く、サプリメントや食事制限に走ります。

私も楽チンに流されやすい弱い人間なので、定期的に試合を入れます。「試合=期限があり目標設定になる。練習しないと成績が出なくてカッコ悪いし、チームのみんなに迷惑をかける……」という切羽詰った状態があるから続けられるのかも知れませんね。試合がなければ、きっとサボってしまうでしょう。最近流行のランニングも例え競技としてタイムを競うレベルではなくても、皆でワイワイ楽しむような大会に出場したり、「運動に楽しみや生き甲斐を見いだす事」がいいでしょう。「ランスカなどのかわいいファッション」で、それに似合う美脚にするためには、きっとあなたは努力するはずです。「好きこそものの上手なれ」意欲のある取り組みは続くはず。不況で、ガソリン代金を節約するために、思い切って自転車通勤に変えるなど、時間の無い方は生活習慣に運動を入れるのもありです。そうやって、浮いたお金は自分へのご褒美にしましょう。

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