特集-リレー連載

タイトルどおりSNS保健指導向上委員会の現場に関わる会員の方を中心に、リレー形式で連載記事を執筆いただく企画。毎回、執筆いただいた方に「次はこの人にこれを聞きたい!」をお聞きし、バトンをつないでいきます。

第11回は、伊神和史さん⇒岩谷美恵子さん へのバトンです。

第11回 「フリー保健師として活動しながら感じていること」

フリー保健師
岩谷 美恵子(いわたに みえこ)
(SNSハンドルネーム:ゆうまま)
A総合病院小児科・NICU勤務を経て、1995年保健師資格を取得し、B総合病院相談室に勤務。ここで医療相談と共に、健康講演会、介護教室、外来・入院糖尿病教室、糖尿病・在宅酸素療法外来生活指導、人間ドック健康教室、母親学級、思春期(婦人科)クリニック、患者会(在宅酸素、ストーマ、糖尿病)支援など保健衛生業務の傍ら、病棟からの退院援助業務(当事者・家族相談、退院カンファレンス等)、相談室併設の居宅介護支援事業所にてケアマネージメント業務を行った。
2005年に病院退職後、自治体や診療所勤務を経て現在フリーで活動中。
<所属>
松江市介護認定審査会委員・C町地域包括支援センター保健師(兼ケアマネジャー)
島根産業保健推進センター産業保健特別相談員
その他、保険者等との契約にて健診後の健康相談・特定保健指導に従事
SNS保健指導向上委員会 ゆうままさんのマイページはこちら

岩谷美恵子さんからのひとこと
伊神さんからのバトンは「フリー保健師として地域保健とのかかわりと、今後の産業保健への思いをききたい」とのこと。今回のバトンを機に、今の自分の保健師としての感覚の土台となったこれまでの経験と、地域保健への思い、そして産業分野含めた今後の活動への思いを整理してみることにしました。

母子保健の現場体験が対象者のサポートの原点に

看護学校を卒業し看護師としての出発は小児科・NICU勤務でした。まだ「カンガルーケア」という言葉がメジャーでない頃に、余命限られた人工呼吸装着の赤ちゃんをお母さんに抱っこしていただくことを新卒時代の看護研究で試みました。抱っこされてバイタルも安定し穏やかな赤ちゃんと、少しずつ赤ちゃんを受け入れいった幸せそうなママの表情が私の胸に深く刻まれました。赤ちゃんとお別れしてしばらく後、再会したママの穏やかな笑顔が忘れられません。「対象者が何を望んでいるのか、これからの未来とどう向き合うのか」そのことを大切にしたいと思う気持ちは、この体験が原点なのかな、と思います。

保健師になった後、最初の勤務先B総合病院相談室での経験はめまぐるしいものでしたが、この時期に母子・成人・高齢者・障がい者など多くの分野の対象者に出会うことができました。また組織内の他部門との連携、他職種との連携、他組織との連携などいろいろな協働の形を経験しました。


病院勤務からフリーへ

実は、B総合病院の退職時に「フリーになろう」と決めていたわけではありません。第2子を出産した2000年以降、介護保険制度が開始され、医療機関も急性期医療に向かうなど病院を取り巻く環境が激変しました。そんな中で育児に仕事に忙殺され、もう少し心身にゆとりを持てる働き方をしたいと思い、退職の道を選びました。その後しばらく自治体の臨時職を経験した後、診療所と地域包括支援センターから同時に誘われ、非常勤で仕事のかけもちを始めたことがフリーになったきっかけです。

現在は5か所の契約先の仕事を全て自分でスケジュールを組みながらお受けしています。フリーの立場は自分の興味のある仕事を選びながら自分の経験を活かすことができ、一方で新しい分野にチャレンジできて経験も広がります。当然収入面も考慮しながらで「自営業みたいだね」とよく言われますが、働く分野も時間調整も自分でできる「自由度」は子育てとの両立ともぴったりでした。


フリーの視点から学んだこと

また、フリーになり、複数の自治体や組織を知るようになって、それぞれ独特の雰囲気があることを肌で感じるようになりました。自治体を含め、確かに組織ごとにやり方も考え方も違う事は当たり前で、その違いに振り回されないことが大切かと思います。自分の立ち位置をしっかり持つこととも言い換えられるかもしれません。

なぜかというと、客観的にいろんな組織を見るうちに「環境は必ず変化する」というシンプルな答えを見つけたからです。周囲の人事や組織であったり、国政の変化によるシステムであったりなど、いろいろな意味で仕事環境は変化していきます。

総合病院時代に目先の仕事に追われ、介護保険制度創設や医療制度改革の波にもまれて、刻々と変わっていく仕事環境の変化に振り回されて苦しい思いもしました。でも今ならきっと、世の中の動きを見渡しながら、もっとどっしりとした気持ちで仕事に向かえただろうなあと思います。変化に伴う仕事環境への影響も「なんでこうなるの?」と思いながら仕事に向かうよりも「今度は、そう来たか」と変化を楽しむように受け止める方が楽だし楽しいと感じるようになりました。


「保健師」という言葉の重み

病院を離れ、フリーになって気づいたこと。それは「保健師」という言葉の歴史的な重みです。これまでに数多くの家庭や事業所に訪問や電話をかけたりした中で、「保健師です」という一言で多くの場合すんなり受け入れてくださいます。世の中に「保健師さん」という言葉が暖かく奥深く浸透していることに本当に驚き、保健師の大先輩方の活動による恩恵を今受けていることに感謝しています。特に自治体の若い保健師さん方は、ご自分たちが思う以上に地域の中で保健師の存在感があることにまだ気づいていないかもしれませんね。自信を持って活動して欲しいと思います。


産業保健の現場から1 〜面接は対象者のための“健康”を語れる場

ここ数年、私は産業保健分野にかかわる機会が増えてきました。特定保健指導が始まったことも大きく影響していますが、健診事後フォローも含めて事業所での個別健康相談をお受けしています。1人の方との面接時間は限られていますが、ありがたいことに対象者が面接場所に来られる時点で「健康について対話する空間」「場」が護られています。

・今、ここでの時間は対象者のための時間であること。
・「健康」について自由に語れる空間であること。

この「場」の存在は私にとっても必要なもので、大切にしていることです。ここでは、甘い物が好き・辛い物が好きであっても、喫煙者であっても、むちゃな生活パターンであっても、まずはその方自身を尊重し、認めます。そこから初めて現在の健診データと将来の可能性について一緒に向き合うことができます。もちろんスムーズにいくことばかりではなく、ぎこちなく面接が終了してしまうこともあります。それは、私が対象者をしっかりと尊重できていないことだと、日々反省と振り返りをしています。


産業保健の現場から2 〜経営者への支援が大きな広がりに

個別的な健康相談も奥深いのですが、やはり事業所によって特色が大きく違う印象があります。対象者自身もどうしようもできない、事業所の方針や雰囲気というものもあります。今年の春から、個別健康相談とは別に、事業所の経営陣の方と健康管理について意見を交わす機会が増えてきました。社長さんの社員への思い、「社員の病気は会社としての損失です」「社員は会社の宝です」という言葉はよくお聞きします。

一方で収益・経営の厳しさも伝わり、こちらも背筋をただしてお聴きします。不況を背に厳しい経営状況の中でも、なんとかして社員を守りたいという社長さんの思いをしっかりと受け止め、少しずつでも事業所として出来そうな健康づくりについて相談させていただいています。「健診を受けた後、どうすればいい?」「医師の意見はどこで聞くのですか?」「メンタルで気になる社員がいるんだけれど」などなど話題は尽きませんし、社長さん自身の健康相談になることもよくあります。

島根県では産業医を持たない50人未満の中小企業が多く、小さな規模の事業所では経営も健康管理も社長さんご夫婦で切り盛りしている場合が多いです。こうした状況の中で10人の社長さんにお会いすればそこに200〜300人以上の社員、そしてその家族にもつながります。そういった広がりも感じながら、産業保健の現場で働き盛り世代の健康作りのお手伝いを始めたところです。


さまざまな出会いに、健康作りの種蒔きを!

これまで、小児期、思春期、周産期、成人、高齢者と幅広い世代と関わってきた中で、相談を受ける場合に大切にしたいと思うことは、対象者が

(1)どのような「健康観」を持っているか
(2)これからどんな「生活」を送っていきたいと思っているか
(3)これからどんな「人生」を送っていきたいと思っているか

という事です。対象者とは、相談者ご本人とその家族も含みます。保健師として相談をお受けする際に「行動目標設定」がゴールにならないように、自分自身が5年後、10年後、20年後にどうありたいのか、考えるきっかけになっていただけるような関わりが私自身の目標です。その方のQOLは支援者が高めるものではなく、対象者自身が自分の手で高めていくものだと思います。近い将来でも遠い将来でもいいので、なりたい自分をイメージ出来てその為の方法を自己決定できる過程を支援することが保健師としての自分の役割かな、と思います。

健康相談では一期一会も多いのですが、その点地域包括支援センターでは高齢者に寄り添いながら、ゆっくりとその方のQOLの変化を見守ります。妻の認知症を受け入れいく過程を見守ったり、自分自身の老いを受け入れていく過程に寄り添ったりする中で、対象者は自分の力で問題の終結に辿りついていく気がします。

私の一人の方に対する影響力というものは微々たるものですが、対象者は人生の中で保健医療関係者には数え切れないほど出会います。それぞれの専門職がいろんな場所でいろんなライフステージで健康作りの種を蒔いていたら、きっとどこかで立ち止まって種を拾ってくれるはず。そんなイメージでこれからもたくさんの方に関わっていけたらと思っています。


次回予告

岩谷美恵子さん⇒藤田みどりさんへのバトン
「SNSは『特定保健指導』と冠されていますが、『健康』をテーマに、幅広い話題提供を期待してもいいですよね。そこで、これまでの地域活動を振り返って『地域での健康作りについて』の思いや、大学院生活・学生指導を通じて感じていることをお聞きしたいです。」とのこと。

次回をお楽しみに!

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