特集-リレー連載

タイトルどおりSNS保健指導向上委員会の現場に関わる会員の方を中心に、リレー形式で連載記事を執筆いただく企画。毎回、執筆いただいた方に「次はこの人にこれを聞きたい!」をお聞きし、バトンをつないでいきます。

第12回は、岩谷美恵子さん⇒藤田みどりさん へのバトンです。

第12回 「保健活動の出会いによる“健康”そして“いのちの大切さ”」

保健師
藤田 みどり(ふじた みどり)
(SNSハンドルネーム:らっぱぴょん)
1996年に保健師資格を取得し、愛媛県内の町役場保健センターに勤務。保健指導全般を行う部署で保健行政に従事し、2007年3月に退職。
NPO法人ラ・ファミリエ主宰の「病気や障害のある子どもと家族のためのえひめ子育て応援ブック」「えひめ子育て応援サイト」企画編集委員会などを経験。
2009年に愛媛大学大学院医学系研究科(修士課程)地域・老人看護学講座に入学。
看護学科の学生さんの地域看護学実習アシスタント業務を通じて、地域保健の力を再確認しているところ。
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藤田みどりさんからのひとこと
岩谷さんからすばらしいバトンを受け取りました。私と岩谷さんは、今までに歩んだ道のりに共通点が多いせいか、エッセイに書かれている内容に響き合うことも多くあり、岩谷さんの思いごとバトンを受け取ることができたことを幸せに思います。あ、でも、「きゃー、私が言いたいことをもっと上手に書かれちゃったー」ってところもありますけどね(^−^-☆

一人の専門職として「健康を祈る」出会い

いただいたテーマは、「地域での健康づくり」のこと。ところで、「健康」ってなんでしょう?

私はときどき、「健康の定義」の枠組みをぐいっと広げてもらう場面に遭遇することがあります。

大学病院の小児科待合室で、絵本を「我が子流」にアレンジしてやりとりをする親子に出会ったとき。精神障害者社会復帰訓練事業(デイケア)に通う女性が、「ダイエットしてみようと思ったんです」と言って手作り弁当を持って来たとき。初老の男性が、「在宅酸素療法をはじめたら、趣味の釣りもまた行けるようになったんだよ。」とおだかやに語ったとき。

「あー、健康だなあ」と感じます。

地域看護学実習のアシスタントとして、とある地区の高齢者サロンに行った時、参加された方々が「私はむかし、大病をしてね」「今は高血圧でずっと薬を飲んでいるのよ」と話の内容の割にはいきいきと、看護を学ぶ学生さんたちに経験談をしてくれたときなど、私はうれしくてたまらなかった。きっと、みなさまも似たような場面をたくさん経験しておられるでしょう。

そんな中でも、特に私の心をわしづかみにするのは、早産で低体重で生まれたお子さんや、先天疾患をもつお子さんたちの育ちゆく姿でした。発達がゆっくりでも、一時的には経験不足に由来する発達のアンバランスさを感じさせても、着実に育っていく。

「看護師さんの使ってるボールペンと同じぐらいの身長」だったお子さんが、ゴムプールの中でしっかり座って、シャワーから注がれる水滴に手を伸ばす。その姿は、夏の陽射しよりもまぶしいものでした。

“今までがんばってきたぶん、いっぱい楽しいことをしようね。そして、水遊びもできるほどに元気に育ったあなたを、もう病気になんかさせたくない。”

療育教室をしていたある夏の日、母子手帳発行時から関っていたお子さんの姿を見ながら、私ははっきりとそう感じました。実のお母様が感じておられる、「そこにあるわが子の命が愛おしい」という気持ちにはかないませんが、一人の専門職として心の底から、そのお子さんの生涯の健康を祈ったことは本当です。そして、この気持ちはすべてのあかちゃん、いえ、全ての人に対しても、同じく大切に意識すべきことだと後から気がつきました。

私は、ハイリスク児とそのご家族に、専門職として大切なことをたくさん教えていただきました。ハイリスク児が成長の過程を安心して歩むことのできるフォローアップ体制の構築をしたいと思い、今は大学院でハイリスク児の退院後の支援をテーマに研究の真っ最中です。


生活習慣病対策も、いのちを大切にする気持ちが土台に

いま日本では、生活習慣病対策、その中でもメタボリックシンドロームに特化した施策が行われるほど、生活習慣病対策(ひいては、脳卒中・心疾患対策)が重要な施策に位置付けられています。

生活習慣病対策について、前述した「あなたのいのちをずっと大切にする」ことの延長線上にあるのではと感じています。幸運なことに、生きていくに重篤なハンディとなる疾患を持たず、ヒトとして一通りの機能を備えた身体を授かったのだから、どうかその身体を一生大事に使ってほしい。健康を脅かすリスクが多々ある中、せめて、生活習慣で変化させ得ることについては、良好な健康状態を保つための行動を取り入れてほしいし、周囲の環境もそれを後押しするものであってほしい。

「生活習慣病対策」という言葉は、きちんと説明すればそんな願いがこもった活動の総称だと捉えています。生活習慣病予防・管理のために必要な「各自が健康をコントロールする能力」とは、自分や、自分にとって大事な人をずっと大切にしていくための、重要なライフスキルだと思います。そして、そのライフスキルを獲得し維持していくためには、ある程度の知識や技術も必要ですが、「私のいのちは大切。私の大事な人のいのちも大切。」という気持ちが土台になってくるのではないでしょうか。


妊娠期からの健康増進活動を

保健指導の現場では、「長年身についた生活習慣を変えるのは難しい」ということをよく経験します。“その方の過去のどこまで遡れば、もっと望ましい健康習慣を獲得できていたのだろうか”と思うことはありますが、思い立った時を出発点に、その方にフィットした行動変容ができることを目指していけばよいですよね。

そうすると、「妊娠期からの健康づくり」の大切さを痛感します。妊娠期は、行動変容を起こしやすく、継続の助走もつけやすい時期。しかも、現在の妊婦さんとパートナー、そして生まれてくる子ども、2世代にわたる健康管理のライフスキルを獲得する、この上ない機会です。この時期は、専門職をはじめとして、健康に関する社会資源とのコンスタントなアクセスが得られる期間でもあります。慈しみながら育てられたいのちは、いずれは共助の社会づくりにも貢献する存在となるはず。

厚生労働省さんも、メタボリックシンドロームの後追いと同じぐらい、妊娠期からの健康増進活動に予算をつけてくれたらいいのにな、と思っています。30年・40年先に必要となる生活習慣病関連疾患対策を、いまのうちに取り組んでいけるのですから。


地域保健に携わる方へ 実り豊かな健康づくり活動を一緒に

行政職を離れた今も、学部生の地域看護学実習アシスタントの立場で保健師さんにお会いしたり、学生さんから実習の報告とこぼれ話を聞く機会もあり、第一線で働く仲間の息吹を感じることがあります。また病気や虐待といった困難な状況を抱えたお子さんとご家族を支援する立場の方々と一緒に活動する中で、保健行政をみつめなおすこともあります。

予算・人材・時間などの資源が限られ、また政策や行政機構が変動する中、各地の皆様が現存する資源を上手に使って健康増進策を実践されていると思います。政策の示す「これをやりなさい」のむこう側に、「あるべき姿」を見通しているから、与えられた政策を上手に使うことができるのですよね。目標に達するために、政策を活用し、クリエイティビティを発揮できる(知恵を回せる^^)のは、保健行政活動の魅力だと思います。

一次予防レベルから三次予防にシフトした人まで、いろんな人々に出会うから総合的な力がつく。住民の方に学び、次に出会う住民の方に還元していく。全てのライフサイクルの方にお会いでき、しかも年齢や健康状態に関係なく、また利用に当たる契約や審査を必要とせず、あらゆる方々にお会いできるのは、地域での健康づくりの魅力であり、強みでもあります。保健活動での住民の方との出会いに加え、保健事業等で得た集団の健康状態の統計情報は、日々の活動を通じて感じることの客観的な裏付けとなり、地域の健康政策の礎となるはずです。今は少し現場から離れているけれど、私はやっぱり地域保健活動が大好き。行政の中に医療職がいるということがどれほど重要なことか…そこに誇りを持って活動をぜひ続けていただきたいと思います。

前回執筆の岩谷さんの書かれた「種まき」の話はとても心の動くものでした。種まきと同時に、種をまく者同志で共通の夢を確認し合い、種をまく畑の手入れもできる。そんな実り豊かな健康づくり活動を、各部署のみんなで力を合わせて続けていけたらいいですね。


次回予告

藤田みどりさん⇒井浦憲治さんへのバトン
「『エコー』という魔法の道具を持って健康支援のために各地に出向く井浦さん。井浦さんの目から見た健康づくりや、魔法の道具がなくてもできる、相手に気づきを起こすコミュニケーションを教えてください!また、いままでみんなまじめに執筆してきましたから、たまには一服の清涼剤。井浦さんらしいオチも期待しています(笑)。」とのこと。

次回をお楽しみに!

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