特集-リレー連載

タイトルどおりSNS保健指導向上委員会の現場に関わる会員の方を中心に、リレー形式で連載記事を執筆いただく企画。毎回、執筆いただいた方に「次はこの人にこれを聞きたい!」をお聞きし、バトンをつないでいきます。

第13回は、藤田みどりさん⇒井浦憲治さん へのバトンです。

第13回 「『エコー』をもつお腹ソムリエの日々是好日」

臨床検査技師・株式会社Body Scale Japan代表
井浦 憲治(いうら けんじ)
(SNSハンドルネーム:ステッキ)
済生会熊本病院で17年間、臨床検査技師・日本超音波医学会認定超音波査士として、血液検査から超音波検査、救急から健診まで、検査に関わる様々な分野に携わる。
2007年3月まで独立行政法人産業技術総合研究所外来研究員。
2007年5月株式会社Body Scale Japan設立。超音波を使ったサービスを医師や管理栄養士などのメディイカルスタッフ、大学、運動機関等と連携し、メディカル分野、健康保健分野、スポーツ分野で展開。現在九州大学とも共同研究中。
一方で、フリーランスの超音波検査士として複数の病院やクリニック、健診センターと契約し、超音波検査や技術指導も行う。

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井浦憲治さんからのひとこと
私は急性期病院で臨床検査技師・日本超音波医学会認定超音波査士として、血液検査から超音波検査、救急から健診までの検査に関わる様々な分野で働いてきました。
平成19年にフリーランスの超音波検査士として独立し、数か所の病院やクリニック、健診センターと契約し、超音波検査を行ったり技術指導を行ったりしている一方で、株式会社Body Scale Japanを設立し、超音波を使った健康サービスを展開しています。
藤田さんからのテーマである私の唯一の魔法の道具、「エコー」がなくてもできる、相手に気づきを起こすコミュニケーション……そ、それは私にとっては、手から糸が出なくなったスパイダーマン状態です。

皮下脂肪と内臓脂肪の量、筋肉変化から生活習慣がわかる!

私の仕事はお腹のみぞおち辺りに超音波を当てて、皮下脂肪、腹筋、内臓脂肪の構成から、その方のこれまでの生活習慣を評価し、生活習慣改善への行動変容へ導くための動機づけを行うものです。
文章で書くと伝えにくいのですが、お腹の筋肉と脂肪を観察することにより、「この人はあまり体動かしてないなぁ」とか「ちょっと食べすぎてるなぁ」とか「もしかすると過剰な食事制限してるのかな」など、ある程度その方の日頃の生活習慣を推測することができるのです。

お腹のソムリエ【PDF】

当初は内臓脂肪量が分かれば経過観察できるから保健指導のお役に立てるなぁという感じで始めたのですが、数千人という人達のお腹を観ていくうちに私の中の超音波検査士の血が、色んな事に気づかせ始めました。おそらく私はこれまで1万人ほどの方のお腹の中を観てきたと思います。

日頃の生活習慣はお腹の中の構造を変えていくようです。皮下脂肪と内臓脂肪は量的変化が主ですが、腹筋に至っては、量的変化はもちろんのこと形態的変化や質的変化も伴ってきます。筋肉がたるんでいる、弱っている、立ち上がりが悪いなど……私はこれまでの経験からいつのまにか判断できるようになっていました。
最近では皮下脂肪と内臓脂肪の量と筋肉変化から9割以上の確率でその方のこれまでの生活習慣を言い当てられるようになり、受診者から占い師みたいですねと言われることも度々あります。私にとっては一種の謎解きみたいな感じで面白くもあります。

これを利用し、現在では協会けんぽのセミナーや自治体の特定保健指導の動機づけや経過観察評価のお手伝いをしたり、運動教室前後の評価をお手伝いしたりしています。
また企業の健診項目の一つに使って頂いているところもあります。病気の診断ではないので、同僚同士で比べ合いができるため、健康に対するお互いの競争意識に火をつけるみたいで、良い動機づけになっているようです。受診者が他の同僚と比べるためになかなかそこから立ち去らないために、担当者から健診が盛り上がりましたとの言われることもあり、大変やりがいを感じています。一応、「お腹ソムリエによる生活習慣診断」という名称で謳ってます^^


「本当の健康」から「データに異常」のはざま

なぜ私が臨床の場から保健指導の場に興味を持つようになったか。

それは私の本来の仕事が臨床の場で病気を見つける仕事であり、病気の重症度評価や経過観察を行うことが主であったことに関係します。大変やりがいもあり大切な仕事であることは理解しているのですが、重症の患者さんばかり対象にしていると、病気の評価ばかりではなく、病気にならないような方向に自分が役に立つ方法はないのかなぁと感じることがありました。だからといって健診に関わっても、予防医学とはいえ、本当の健康と結び付けて考えたとき、私個人としては何かしらの違和感をもっていました。

もちろん予防医学としての健診はとても重要です。しかし健診は病気を早期に発見することはできますが、結果が悪くなければ、健康な状態とひとくくりに判断されてしまいがちです。人々がとてもこだわる健康という目標を考えた場合、健診結果に異常がないからといって本当に健康と言えるのでしょうか? 健診日は元気かもしれませんが、健全な状態かは疑問が残ります。

そこで私の立場から出来ることがあるとすると、「本当の健康」から「データに異常」が出るまでの「距離」をどうやって判断するか、どうやって気づきと健康に対する動機づけを与えるか、というところかと。そしてそこが私の存在価値の重要性を一番アピールできる場所なのかなという想いが今の取り組みに繋がっているのです。


画像という客観的事実があっても…難しい保健指導

保健指導の現場はなかなか難しいものがあります。

今までは自覚症状がある方を対象に仕事をしてきたので、特に何も感じなったのですが、保健指導の現場では測定により得られた客観的事実と、まったく自覚のない受診者とのすり合わせが必要となってきます。
殆どの人は超音波画像を見せながら説明すると、思い当たる節があるのか「ああ、やっぱりなぁ」とか「こんなになってるなんて」という感じで納得するのですが、本人が認めたくなかったり、自覚が全くない方の場合はちょっと大変な時があります。

例えばこんなことがありました。
70代女性の場合、とある指導の場でお腹を観てみると腹筋が弱り、内臓脂肪がかなり多くなっており、典型的な運動不足とカロリー摂取過剰のパターンでした。
ですので「結構食事を摂られてるでしょ?」と聞くと「いや、毎日歩いているし、全然食べとらん、ご飯は毎回茶碗の半分しか食べんし、おかずも少ないはずなのに」と頑なに答えられます。これまでの経験上、この画像の状態には原因が絶対あるはずですので、「どうしてでしょうね?」みたいな会話のやり取りを数回した後に、保健師さんにお願いしたら「ご飯減らした分、お腹がすくので饅頭をいつも10個くらい食べているけど、それがだめなのか?」と。歩いているといっても散歩程度で運動という感じではないということが判明しました。
私の場合、客観的事実を提供することによって原因追究には繋がるのですが、本人を追い詰めないようにする微妙な対応は保健師さんなどの専門家にお任せするようにしています。


人体実験(!?)でわかった内臓脂肪の変化

測定を始めた当初は、私の知識では原因が分からない時がありました。そんな時は決まって、自分を使っての人体実験です。

50代の男性で、カロリーを非常に気にしていて1日のカロリーを1,800kcal程度に抑えている方がいらっしゃいました。しかしその方の内臓脂肪を測ってみると、とても多いのです。本人もえらく憤慨されながらショックを隠せない中、話を聞いてみると、その方の場合、朝と昼は300kcal以下に抑えて、夜は好きなものを食べるという夜型の食事傾向でした。

そこで私もその方のまねをして1ヶ月間そのような食事リズムをしてみたところ、なんと私の内臓脂肪が1.2倍増加しました。なんとなく夜型の食事はいけないということは知っていたのですが、その時初めて確信できました。

他にも、私の場合ですが、毎日寝る前に350mlのビールを1カ月間飲むと内臓脂肪が1.2倍増加し、逆に1ヶ月間辞めると3割減少することが分かったり、内臓脂肪量の変化に伴い血液データが正常範囲のなかでも変動することを知りました。


めざせ! 世界一の「お腹ソムリエ」

いつの間にかエコーで見るお腹の変化にハマってしまい、現在では自称「お腹ソムリエ」としてのお腹の追求はメタボにとどまらず、今年は九州にあるJリーグチーム(アビスパ福岡、サガン鳥栖、ロアッソ熊本など)のJリーガー100名のお腹の筋肉、いわゆる体幹筋の測定を行い、その傾向と対策を調べたりもしています。

「たかがお腹、されどお腹」メタボからスポーツ選手まで、誰もやらないニッチ市場で私は世界一の「お腹ソムリエ」として、いつかきっと人知れずお腹の中の変化を誰よりも知る人物になっていられれば良いなと思っています。

ですので、エコーなしで気づきを与えるコミュニケーションを語るのは私には難しそうです。

まるで靴の脱げないシンデレラ、桃を拾わないおばあさん、カメを助けない浦島太郎から始める物語を語らなければならないようなものです^^;
ご理解ください……。


次回予告

井浦憲治さん⇒中嶋寿美子さんへのバトン
「企業内で従業員の健康管理に携わっていることで大変なことや、大切にしていることなどを教えてほしいです。」とのこと。

次回をお楽しみに!

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