特集-リレー連載

タイトルどおりSNS保健指導向上委員会の現場に関わる会員の方を中心に、リレー形式で連載記事を執筆いただく企画。毎回、執筆いただいた方に「次はこの人にこれを聞きたい!」をお聞きし、バトンをつないでいきます。

第14回は、井浦憲治さん⇒中嶋寿美子さん へのバトンです。

第14回 「産業保健のいま、そして未来へ」

株式会社トヨタ名古屋教育センター 中部日本自動車学校診療所 看護師
中嶋 寿美子(なかじま すみこ)
(SNSハンドルネーム:みこりん)
熊本出身。1982年蠎屋健康保険組合(九州一円の大手流通業の健保組合)に看護師として入社、主に健診後の再検査・保健指導、採用時問診、総務事務、レセプトを担当 その後東京に引越し、東京會舘診療所勤務(企業内診療所)、サン虎ノ門クリニック勤務(人間ドック健診機関)を経て1990年名古屋に引越し、財団法人 日本予防医学協会 派遣登録(企業での定期健康診断のスタッフ業務)
2003年(株)トヨタ名古屋教育センターに看護師として勤務、現在に至る。
2007年日本産業衛生学会産業看護師登録 THP指導者登録
2008年武蔵野大学通信教育部 人間関係学科 心理学専攻に編入、産業心理コースをメインに勉強中

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中嶋寿美子さんからのひとこと
現在の職場は「株式会社 トヨタ名古屋教育センター 中部日本自動車学校診療所」トヨタの子会社である自動車学校の社内診療所となります。社員数は180人と一般の自動車学校の3倍くらいの規模で、教習所業務と全国の自動車学校で使う教本を作成販売しており、教本の全国シェアは7割を占めます。他府県で免許を取得された方も、弊社が作成した教本を使われていたかもしれません。

今の職場との出会い

この職場に社内常勤の産業看護師として勤務して7年半になります。それまでの仕事は、1年に1回、職場を訪問しての保健指導や健診に従事していました。毎年お会いする方(常連さん?!)もいらして、顔を覚えていただき、お話をするという楽しみはありました。しかし、こちらに入社して社内常勤となり、社員ひとり一人の人を継続してケアできることは、特別な満足感があります。診療所兼医務室(保健室)みたいなものですから、調子の悪い人や、治療中の人、自分・家族の事も含め相談事のある人など、いろんな人がいらっしゃいます。

20代の男性社員で、結婚してどんどん太ってきた方がいました。特定保健指導の対象外でしたが(笑)、腹囲85cmを越えている人は、このままいくとメタボになり、いろんな病気が将来出てきますよとお話ししたところ、自分でも太ったのは気になっていたらしく、一念発起してダイエットに取り組まれました。生活を見直し、私に会う度に「1kg減りました」「3kg減りました」「5kg減りました」と報告してくれました。実際の減量の仕方は、極端なやり方をされたりしましたが、無理するとリバウンドしやすいことなどアドバイスしながら見守っていました。残業で遅くなりがちな夕食を少なめにして、1年かけて10kg体重を落とし、独身の頃のようにすっきり、ほっそりなりました。出張、接待もあるお仕事ですが、今では食べすぎた後の体重増加のパターンがご自身でわかってきたので、食べ過ぎたと思ったらその翌日、食事を控えめするなど、自分でコントロールされるようになりました。「もう大丈夫だと思います」と言いに来てくれました。

社員の状況(結婚されたこと、以前より体重が増えてきていること、出張、接待もあるお仕事など)を知ったうえでの情報提供、そして、対象者が気になりつつも行動に移せないときの後押し、停滞期でイラつきがちな時の励ましなど、本人に寄り添ったタイムリーな助言をできたのも社内常勤だからこそと思っています。

このように、社員の、今日、明日、明後日、1週間後、1ヵ月後を継続してみることができること。そして、私の働きかけに対しての反応を知ることができるのは大きな喜びです。


産業看護の職務について

産業医は非常勤で週に2回1時間ずつですので、普段、産業保健職は私1人となります。一人職場として大変なことはいろいろありますが、まずは会社との連携をうまく取ることが大切です。自分の仕事を上司に理解してもらうことで、会社の協力を得やすくなります。また、会社の経営理念や方針を理解し、それを踏まえた活動をしなければいけません。産業看護職の立場は、基本的には会社と患者の間で中立であるべきですが、時と場合によっては、会社寄りになることもあり、反対に患者寄りになることも必要かと思っています。

例えば、体調不良の社員が来た場合、ただ帰宅させれば良いわけではありません。ベッドで1〜2時間休んで、仕事に復帰できそうか、薬を飲めば仕事続けられそうか、早退し休養することで、明日は仕事に来れそうか、今日、頑張って仕事できたとしても、無理をすることで病状が長引かないか、いろんな判断が必要となります。もちろん、必要に応じ病院受診を勧める場合もあります。本人と会社にとって一番いい方法を探すのです。また、その社員の性格を把握しておく必要もあります。症状的に就業できそうでも、本人の気力が伴ってない場合、お客様に対して、とても不十分な教習を行なってしまうこととなります。また、気力で仕事をやり抜こうとしていても、そこで無理することで、病気が長引くこともあります。お客様の混み具合によっても対応は変わります。閑散期であれば、すぐに早退させることができますが、お客様の需要が多い場合は私の一存で帰すわけには行かず所属長と相談が必要となり、お客様があふれ教習ができないと言うことが無いように、手配をしなければなりません。

組織の中で働く者として、働く人本人だけでなく、その人を取り巻く職場、組織の事も考えた対応も必要となります。事業者と労働者は決して相対するものではありません。お互いに協力し合って、働きやすい元気な職場にしていきたいと思いますし、両者を繋げる尽力をするのがこれからの私の仕事だと思っています。

他にも、医療専門職として、病気について、検査法・治療法はもちろん、どこの病院へかかったらいいかなど、受診の仕方など聞かれる場合もあり、知識と情報の両方が必要となります。また、病欠・休職にからむ就業規則、健保組合の仕組みも説明できることが必要です。労務管理や職場環境を考える場合は、労働基準法、労働安全衛生法を知っておくと役立ちます(衛生管理者の資格取得の勉強が役に立ちました)。社会情勢、法改正の動きなども知っておかなければなりません。

基本的に何を聞かれても答えられるように勉強しておくことが必要ですし、その時にわからなければ、必ず調べて答えるようにしています。いつでも相談に来てもらえるように、どんな相談をしても大丈夫だと思ってもらえるように心がけています。


メンタルヘルスについて

今、どこの企業でも重点を置いているのは、メンタルヘルス対策だと思います。入社して、学ぶより先に実際の事例に対応しなければということが続き、あわてていろんなメンタルヘルス関係のセミナーや研修に出席させてもらいました。

そんな中で、学んだことと、実際の症例との経過の違いに気付きました。うつ病の診断をされ、通院し服薬治療も受けているのに、症状の改善しない人が増えてきたのです。その人たちに対して、病院とは違う援助ができないかと考えました。また、パーソナリティの問題、発達障害が疑われる事例だと、アプローチの方法も変わってきます。

メンタルヘルス不調者がいた場合、まず、目の前にいる人を理解したいと思います。何に悩み、何を考えているか、同じように感じることはできなくても、まず理解したいと・・・。中には対応しているうちに、こちらが影響を受けすぎて、疲弊してしまう場合もありました。そんなこともあって、自分の軸をしっかりするため、心理学の基礎を学ぼうと、大学の通信制心理学科に編入しました。心理学は面白いです。他者理解をするには、まずは自己理解から。自分を見つめ直すよい機会となりました。


元気な職場づくりのために

企業を取り巻く状況には厳しいものがあります。そんな中でも、社員に元気で楽しく仕事して欲しいし、そうなるために職場環境を整えていくのも、私の仕事の一つだと思います。医療の専門家として、個人の健康に留意するのはもちろんですが、職場全体の健康度も上げていければと思います。

私の夢は、社員が活き活きと楽しく、お互い助け合って仕事ができる職場にすることです。現状では、病気の発症に対し、後手後手に回っているところがあります。目指すは0次予防です! 身体も精神も健康で病気になりにくい社員を増やしていきたいと思います。

そのためにできること、大学や学会で勉強をすることももちろんですが、いろんな視野で物事を見られるように、いろんな業種・世代を超えたネットワーク作り(ここのSNSはありがたい存在です)、また知識だけでなく、相談したいと思ってもらえる信頼感、人間性も磨いていきたいです。仕事に関連した勉強だけでなく、いろんなものに好奇心旺盛で感受性豊かに心を錆びつかせないでいくことが、私にとっての人間磨きなのかもしれません。


仕事をする上で私が大切にしていること

自分の職歴を振り返ってみると、今までの経験がすべて今の職場で活かされるために集約されていた様な気がします。寿屋(大型ショッピングセンター)の勤務時には、看護師採用であっても、お盆や歳末にはお店の応援に行きましたし、選挙の時は労働組合の手伝いもしました。何で看護師の私がこんなことまでと思ったこともありましたが、そこで、「接客の基本」と、自分の仕事に対して「枠をはめないこと」を身につけたと思います。今の職場では、教習所も教育サービス業として、CS(顧客満足度)を大事にすることを掲げており、私も社員の一員して、そして産業看護職として、CSを高めることを学んでいます。振り返ってみると、どんな経験にも無駄なものはないということです。趣味でやった習い事さえも、看護業務と直接の関係はないものの、今の仕事に役立っています。

仕事をする上で私が大切にしていること
最後に私が常々、仕事をする上で心がけていることをご紹介します。

・公平な判断力とバランス感覚を持つこと
・視野を広く持つこと
・情報を結び付けて考えられる洞察力を持つこと
・向学心を持ち自己研鑽すること
・自分に枠をはめないこと
・他人を見つめる優しい眼をもつこと

これは、健康管理をする立場からというよりは社会人として、人間として必要なことかもしれません。


次回予告

中嶋寿美子さん⇒大出理香さんへのバトン
「女子大生として今頑張っていること、目指しているものなどをお聞きしたいです。」とのこと。

次回をお楽しみに!

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