特集-リレー連載

タイトルどおりSNS保健指導向上委員会の現場に関わる会員の方を中心に、リレー形式で連載記事を執筆いただく企画。毎回、執筆いただいた方に「次はこの人にこれを聞きたい!」をお聞きし、バトンをつないでいきます。

第16回は、大出理香さん⇒吉田和弘さん へのバトンです。

第16回
「働き盛り世代の健康支援から、地域の健康問題の解決を目指していきたい!」

財団法人 京都予防医学センター 健康づくりセンター
保健師 吉田 和弘(よしだ かずひろ)
(SNSハンドルネーム:まゆぴー)
京都府出身。平成18年保健師免許取得後、京都府内の自治体で3年間地域保健全般業務に従事する。その後転職し現在財団法人京都予防医学センターにて、特定保健指導をはじめとする保健指導業務を行なっている。
また、京都府予防接種相談センターにて予防接種全般の相談業務、日本対がん協会・結核予防会の京都府支部の保健師としても業務を行なっている。

SNS保健指導向上委員会 まゆぴーさんのマイページはこちら

吉田和弘さんからのひとこと
何事にも熱くてまっすぐで、尊敬している姉御的な存在のレオさんからバトンをいただくのは光栄ですが、その後の走者となるのは大変恐縮です。
でもせっかくの機会なので飾らず素直に日々思っていることや感じたことを書きたいと思います。
なお、自治体で勤務していた時の様子は東京法規出版さんが出版されている「月刊地域保健」の2007年10月号で取材していただいているのでぜひご参照ください!ちなみに「まゆぴー」というハンドルネームから初めて会う人には、「かわいい女の子を想像していたのに」と時々がっかりされますが男ですのでお間違えなく。

自ら出向き、予防出来る保健師になりたい!

前回のレオさんからの要望に「行政から健診機関へ転職した保健師として」と書いていただいたので、関連する「なぜ保健師になったのか」ということと、「なぜ健診機関へ転職したか」ということから述べてみたいと思います。

将来やりたいことは何だろうと考えたとき、健康に関心があったので、予防に力を注げる保健師という職業がいいなと、看護の道に進みましたが、その頃ははっきり言って、保健師が具体的にはどんな仕事かもよくわからず曖昧でした(笑)。

しかし、看護実習の時、保健師の道に進もうと、強く心に決めた出来事がありました。受け持ち患者さんは、50歳代前半の男性、大工の棟梁の方で、脳梗塞で入院されました。病後半身麻痺で復帰することを希望されていましたが、棟梁としての現場復帰は絶望的です。それでもリハビリの成果もあって杖歩行が出来るようになり、「現場仕事は出来なくなったけど、これからは若い者を使って育てる仕事をしたい」と前向きに退院されました。リハビリの素晴らしさにも感動しました。

でも、よく考えてみるとこの人が脳梗塞にならなければ、現場の仕事を続けられていたのでは? 脳梗塞にならなくて済む方法はなかったのかと何とも複雑なまとめになった実習であったことも覚えています。

この実習が一番のきっかけとなり、病院で病気になった患者さんを待って治療、看護するのではなく、自ら出向いてしかも予防出来る保健師になろうと決心しました。そして、この患者さんのような働き盛り世代に健康で働いてもらいたい、健康づくりを支援したいという想いを強く抱くようになりました。


行政から健診機関へ

自治体の保健師時には、特定保健指導に限らず、食育など広い世代をターゲットにする事業を担当させていただきました。しかし、自治体にもよりますが、保健師が働き盛りの方と関わることは極めて難しく、少ないことが実情です。誤解を生むといけないので解説しておきますが、ここの「関わる」という単語は、直接的に保健指導を行なうことを差します。

こうした状況下で、自分の中に葛藤が生まれました。働き盛りの人たちがどのように想い、考え、仕事し、生活をしているのか知らぬまま、閉じこもって政策立案し、税金を投入することが心苦しくなったのです。その町の財政、経済を支え納税してくださっている方の大切な税金なのです。働き盛りと関わりたいと思って保健師になったのに、このまま関わらずに月日が流れたら、自分の目指す保健師にはなれないのではと考えるようになりました。

では、なぜ健診機関に転職したのか。働き盛りの方を中心に支援したければ健診機関以外でも良かったはずです。健診機関にこだわったのは色々な人に出会えるということでした。
公務員や銀行員、電車やバスの運転手、研究者や工場勤務、国保の方など、色んな働き方や生活形態の方と直接保健指導で関わることが出来ます。直接話しをして、対象者一人一人を“知ること”から始めたかったのです。その方がどのように想い、考え、仕事し、生活をしているのか、そして家庭や職場、地域性などの環境面なども含めて、対象者の生活全体をとらえて健康問題を考える、そういった仕事をしたかったのです。


目指す"保健師像"に近づくために

私のいまの立場と矛盾したことを言いますが、「保健師は地域で活躍すべき」と考えています。もちろん他で活躍されている保健師を否定するのではなく、自分の中のポリシーみたいなものでしょうか。

地域の健康問題を軸にして、健康づくりの仕組みや環境を整え、人と人をつなげ、課題解決への道筋を作っていく。この仕事は保健師にしか出来ないと思っています。自分は町づくりが大好きで、町の元気づくりのために黒子的な地道な保健師活動がしたいと思っています。しかし、こうした活動をするには、まだまだ力が足りないと感じました。まず働き盛りの方の健康問題と向き合い、自分の想う保健師像をゆっくり完成させていきたいと思っています。


それぞれの健康問題にあった提案型保健指導のススメ

今の業務では保健指導をメインに行なっています。しかし、ただ保健指導をしているのではなく、それぞれの事業所における健康問題の特徴を把握するようにしています。健診機関は委託を受けて仕事をしますが、事業所と従業員のニーズを吸い上げ橋渡し的な仕事をすることも大切です。看護職がいない事業所もあるので、委託を受けたことをそのまま行なうのではなく、把握した健康問題から提案型で仕事を進めることも必要になります。

メール支援でも返信がある事業所、返信はないが催促すれば帰ってくる事業所、催促してもなかなか返信がない事業所など特徴がはっきり分かるので、そういった特徴もしっかり捉え支援に生かすことが大切だと思います。

保健指導で気をつけていることは、対象者の心に残り楽しくてためになる支援をすることでしょうか。予防医学は生き方を支援する専門医学だと思っていますので、本人のやる気をいかに引き出すかがポイントになってくると思います。

保健指導ではストーリーを作り、気づきが生まれるよう意図的に効果的な質問をしないといけないと気をつけています。保健指導が質問攻めになり、平行線で終わってしまうとよく聞きます。そのためにはある程度問診票で事前に情報を得ておく必要があると思いますし、問診票で取れる質問はあえてする必要はないと思っています。

また、当センターでは問診票に性格タイプを把握できる問診項目を追加しています。(性格タイプについて詳しくは編集委員コミュニティ坂根直樹先生の第5回連載を参照ください)
事前に把握しておくと、質問の仕方も工夫出来るので、少ない時間で効果的に保健指導が出来ます。また、継続支援のメールや手紙もタイプ別によってコメントの書き方を書き分けることも出来るのでおススメです。


せっかく出会えた機会や時間を大切に

以前出会った人でこんな人がいました。

部屋の扉を開けたと思ったら「メタボはせん!」と怒って来られました。理由は「今年は睡眠時(無呼吸症候群)で治療しているから無理!」とのことでした。
とりあえず、希望通り特定保健指導は中止するという旨を伝えましたが、せっかく来てもらったので、健診結果の説明と睡眠時無呼吸症候群の治療状況について伺うということで面接を始めました。よく話を聴いてみると、治療に対する不満と不安が入り交じって怒りに変わっているのではないかと感じました。そこで不安や不満をぶちまけてもらいました。バスの運転手さんなのですが仕事にも大きく影響してきます。
少し落ちつかれたのでこの治療をしっかり続ければ乗務に問題はないし、体重も減ってくること、また、体重を減らすことがこの病気にもいいことを伝えると、最後には笑顔で「やるぞ!」といわれ部屋を出られました。

ここの事業所には月1回健康相談でお伺いしているのですが毎回癒しの笑顔で血圧を測りに来られます。ちなみにここの事業所は多くの方が入室時には拒否的な態度を取られるんですが、ほとんど全員「頑張るぞ!」と言い退室されます(笑)

支援を行っているとつい健康行動をとる必要性を説きたくなりますが、人は健康のために生きているのではないし、目的ではありません。大の大人が飲み食いや運動習慣について言われるので嫌がるのが本当なのかもしれません。でも、健康に関心のない人はいないですし、突破口は必ずあると思います。

特定保健指導が始まって3年が経とうとしており、色んな意見がありますが、制度の良し悪しではなく、せっかく出会えた機会や時間を大切にしてこれからも関わっていけたらと思っています。


次回予告

吉田和弘さん⇒永井杜椛さんへのバトン
「開業保健師のあり方について。地域保健、産業保健など色んな分野やライフステージの対象者に関わることで大切にしている事、開業保健師ならではの出来事やエピソードなど体験談を交えて教えてください」とのこと。

次回をお楽しみに!

バックナンバー
過去の連載「保健指導を考える」を読む
保健指導のアウトソーシングに関するアンケート調査 結果レポートの発表です
坂根直樹先生新連載「ストレス方程式で解決!簡単ストレスマネジメント」
血糖自己測定器と院内専用グルコース分析装置の違い
脱マショウノオンナ 『保健師だより』私流のコツワザ集
ニッポンの健康づくり 辻一郎先生 津下一代先生 インタビュー
協力企業
ニプロ株式会社 気をつけていますか?メタボリックシンドローム!!
ニプロ株式会社 気をつけていますか?メタボリックシンドローム!!

保健指導向上委員会の運営を応援してくれる協力企業を募集しています。詳しくは、こちらまでお問合せください。

ad@hokensidou.net
地域保健
かいごweb
東日本大震災に関する情報 地域防災力向上を目指す情報サイト「webside.jp」
SNSログイン
保健指導向上委員会SNSにログインする
SNS新規登録SNSについてもっとくわしく
委員会からのお知らせ