特集-リレー連載

タイトルどおりSNS保健指導向上委員会の現場に関わる会員の方を中心に、リレー形式で連載記事を執筆いただく企画。毎回、執筆いただいた方に「次はこの人にこれを聞きたい!」をお聞きし、バトンをつないでいきます。

第18回は、永井杜椛さん⇒徳永京子さん へのバトンです。

第18回
「うつ病体験をばねに、人の心といのちに向き合う」

マインド・フィットネス代表
保健師 徳永 京子(とくなが きょうこ)
(SNSハンドルネーム:踊る保健師)
大阪府守口市在住。
大阪府の保健師として24年間、公衆衛生に携わる。うつ病をきっかけに、より自分らしい生き方を求めて起業する。大手電機メーカー、看護・福祉系の専門学校で、心身の健康管理と教育に携わるかたわら、セミナー講師として、企業や自治体、学校での研修講師を務める。キャリアShuka セミナー講師デビュープロジェクト セミナーコンテスト初代グランプリ受賞、講師オーディション優勝の経歴を持つ実力派講師。講師依頼は1000本を超える。また、「踊る保健師」として、手話を取り入れたサインダンスで教室運営や舞台活動も展開中である。

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徳永京子さんからのひとこと
紹介者のtomoさんは、開業保健師仲間です。助産師や看護師とは違って、保健師の開業形態は実に様々で、まだまだ手探りの状態です。SNSでは、ちょっとだけ私が先輩ですが、お互いの活動を支援しあいながら、開業保健師の可能性を切り開いていこうとしています。
tomoさんのお誘いで、愛知県のリレーフォーライフに参加し、がん患者さんたちの素晴らしい生き方に触れることができたのは、とても素敵な体験でした。
生き方に寄り添い、人生を支援する仲間として、これからも刺激しあいたいですね。

まさかのうつ病・・・

突然の目まいで始まりました。寝ていても天井がぐるぐる回り、立つこともできない…。今、思えば、あれが、始まりでした。 やがて、喉に何か詰まっているような違和感があり、頭痛、吐き気、下痢と体調は悪化。会議の内容が頭の中をすり抜けていく、考えがまとまらない…。やっと精神科に受診したのは、初めてのめまいから3年も経っていました。

3年間の市町村出向から帰ってきた時、大阪府の保健所は地区分担制から業務分担制に変わっていました。地域を分担していたころは、保健師同士で、お互いの仕事が共有できていたのが、業務分担制になると、母子・難病・感染症・精神・健康づくり、と分担して仕事をするので、同じ保健師でありながら、お互いの仕事が見えなくなっていました。会議に出ても報告だけで、何の共感も生まれてこない…。地域の健康問題を共有し、仕事を作り上げてきた頃と大きく変わってしまったことを、私は受け入れられませんでした。

矛盾を抱えながらも、前に進むことしかできなかった私に下された診断は「うつ病」でした。約1年間仕事を休み、治療に専念しましたが、今の保健所に自分の居場所はもうないと感じ、2006年3月、24年間の公務員生活に幕を下ろしました。


私は保健師という仕事が好き!

退職後は、リハビリのつもりで非常勤保健師をしていましたが、ある保健所でのことです。以前、上司だった方がその保健所にいて、退職前と同じように仕事をさせていただきました。「逃げるようにして辞めた保健所に、今、私はいる! そして、あの頃と変わらず、仕事ができている!」その事実がとても嬉しかったのです。そして、改めて思いました。
保健師の仕事が、地域の仕事が、私は大好きだったのだ。一時的に心の病気にはなったけれど、能力や技術や経験まで失ったのではない、と。

退職から2年経ったある日、ふと思い立ったのです。なぜ、私がうつ病になったのか? 何があれば予防できたのか? もし、それがわかったら、心の健康に関することを仕事にしよう! 保健師である自分が「うつ病」になったのは、きっと何か意味がある!
そして、心理学を学び、カウンセリングとコーチングのスキルを身につけました。はじめから開業保健師を考えていたわけではなく、正社員という道をあえて選ばず、しばりを課せず、自分のやりたいことを、実現させていこうと思えば、今のような形態しかなかったのです。自らの経験とスキルを活かすならこれしかない。人の心と、人の命に向き合っていきたいという思いだけで、起業しました。


私の仕事=ミッション

1.企業内の健康管理業務とメンタルヘルス研修及び執筆
産業保健師として社員の健康管理に携わり、働く世代の健康問題を支援しています。
メンタルヘルスばかりやっているのではないかと思われているのですが、心と体は切り離せません。特定保健指導や禁煙支援、健康教育といった保健師業務全般をしています。
「人の健康を生活者の視点でトータルにとらえることができる。」というのが、保健師の専門性のひとつではないかと思います。

2.なごみ夢ハウスを拠点にした心の健康づくり・カウンセリング
メンタル不調の人たちの心の基地になるように、事務所をなごみ夢ハウスと名付け、カウンセリングを実施しています。「うつ病の人の話を聞いて、しんどくならない?」とよく聞かれますが、どんなに辛い感情に支配されていたとしても、その人の中に、必ず自ら治そうとする力があります。話を終える頃には笑顔になれる、そして、次に話に来たときには、小さな一歩を踏み出していることも少なくありません。

3.音楽とダンスを使ったライブ型健康教育
私には、聴覚に障がいのある子どもがいますが、その子と一緒に音楽を楽しめたらいいなと思い、手話を取り入れたダンス=サインダンスをしています。サインダンスをはじめてから私の周りが変わりました。
ある公演のあと、一人の女性がかぶっていた帽子を取り、あいさつしに来ました。すっかり抜け落ちた頭髪に、ひと目で、抗がん剤による脱毛だとわかりました。
「自分のことを嘆いてばかりいて、感動で涙が出ることを忘れていました。ありがとう」
と、深々とおじぎをされました。後日、その方から、手紙がきました。抗がん剤治療を終えて、もうすぐ職場復帰するという内容でした。「副作用でつらいときに、あなたのダンスを思い出して、頑張った」と書かれてありました。ダンスには人を癒す力がある…そう思った私は、心が生き生きと動き出すようなライブ型健康教育をしています。それが、屋号にもしている「マインド・フィットネス」なのです。

4.保健師等、専門職のスキルアップ講座
自治体の保健師さん方の研修テーマでは、コーチングやカウンセリングを取り入れたコミュニケーションスキルやプレゼンスキルという依頼が一番多いので、コミュニケーションスキルに関する講座を23年度から開講することにしました。
通常の保健指導対応の「ヘルスサポートコース」と、健診にストレスチェックが導入されることを見込んで、「メンタルサポートコース」のふたつのコースを準備中です。

 

従来型と呼ばれる保健指導では、保健師が知識とスキルを使って、相手の健康問題を突きつけ、脅かし・・・でも、それでは人は動かないと、多くの保健師が気づいています。

人生を変える力は相手の中にあると学ばせてもらった経験があります。
58歳の男性社員Aさん。肥満に加えて、血圧が指摘されているのですが、「特定保健指導は辞退する」と決めて来られました。
「今回の保健指導はお受けにならないんですね。もし、よかったら、お受けにならない理由を、参考のために聞かせていただけませんか?」とたずねると、しばしの沈黙のあと、「妻が脳梗塞で倒れたので、介護をしている」という話をしはじめました。
昼間は、ディサービスでみてもらい、帰宅後、食事の支度をして、入浴介助・・・自分の時間が取れないという様子がうかがえました。

ひとしきり話されたAさんは、「保健指導でこんな話をするとは思いませんでしたよ。でも、聞いてもらって、スッキリしました。」と言われました。そこで、「奥様を介護しながら、これから、どんな人生を送っていきたいと思われますか?」とたずねました。
「そうですね・・・今まで、私が苦労かけた方でしたから、できるだけ家でみてやりたいですね。まぁ、そうしようと思ったら、自分も元気でおらんとあかんのですけどね。うーん、やっぱり血圧は何とかしないといけませんね・・・」と言いだして、辞退どころか目標設定して帰られ、見事減量に成功された方がいました。

知識やスキルで人が動くのではなく、その人自身が思い描く人生のための一条件として健康であることが必要と気付いた時に、人は行動します。
そこに有効に働くのが、コーチングマインドであり、コミュニケーションスキルです。
メンタルヘルスも同じです。休養、服薬は大事ですが、究極は、その人がどう生きたいかをみつけた時に回復しようという力が働くのです。

人の心といのちに向き合うとは、「生き方」を見つめ、支援すること、開業保健師として、生き方支援をしていきたいと思います。


次回予告

徳永京子さん⇒炭美子さんへのバトン
「SNSのオフ会でお会いした産業医さん。お土産にと、手作りのしおりを配られたとき、びっくりしました。お医者さんというと、敷居の高いという先入観を持ってしまいますが、細やかな心遣いができる素敵な方です。等身大の日記もとても好感が持てます。
産業保健の分野では先進的な取り組みを数多く実践されているP社の産業医としてご活躍中です。産業保健に取り組むみなさんに熱いエールを送ってくださることでしょう。」とのこと。

次回をお楽しみに!

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