特集-リレー連載

タイトルどおりSNS保健指導向上委員会の現場に関わる会員の方を中心に、リレー形式で連載記事を執筆いただく企画。毎回、執筆いただいた方に「次はこの人にこれを聞きたい!」をお聞きし、バトンをつないでいきます。

第19回は、徳永京子さん⇒炭美子さん へのバトンです。

第19回
「常勤健康管理スタッフとしての健康支援〜健康管理室と社内外の資源をつなぐコンダクターとして」

パナソニック(株)SC社 プロセス開発センター健康管理室 室長(産業医)
炭 美子(すみ よしこ)
(SNSハンドルネーム:会社のドクター)
医学博士取得のため、母校の衛生学・公衆衛生学教室に研究生として所属し、非常勤産業医として経験を積むよう指示されたことが産業医学との出会い。足掛け8年の救急病院勤務の後、パナソニック健康保険組合に入社、以後パナソニックG各社の常勤産業医として勤務し、現在は半導体関連の研究開発部門を担当している。製造職からシステムエンジニア、住宅産業関連の技術職&営業職、研究開発職といろいろな職種を担当し、気がつくと産業医としての常勤歴は15年目に!

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炭美子さんからのひとこと
踊る保健師こと徳永京子さんからバトンをいただきました。徳永さんとはSNSメンバーの大阪プチオフ会で初めてお会いしました。当時は徳永さんの運営されているなごみ夢ハウス近くにある、住宅関連営業職を中心とした女性比率の高い職場でしたので、女性のメンタルヘルス支援のため、メールでやりとりをさせていただいていました。
日々の業務では、企業勤務の方々のメタボ&メンタル予備軍たちが、どうしたら自然に健康管理室に足を向けてくださるのかな? と考えつつも、既に発症してしまった方の対応と、近年増える一方の法律やガイドラインで規定される業務に追われて、いつもバタバタしています。従業員からの健康相談も内容が多岐に渡るため、自力だけでは回答に窮したときには、SNSの栄養士さんや運動療法関連資格保持者の皆様をはじめとしたいろいろな職種のマイフレさんたちにいつも助けていただいております。この場をお借りして感謝の気持ちをお伝えさせていただきます。本当にいつもありがとうございます。企業内健康管理室の実際が少しでも垣間見ていただけて、実際の業務の参考にしていただくことができたら嬉しく思います。

2次救急病院勤務医から産業医へ

研修医終了後から勤務した2次救急病院は、1970年代に名だたる大企業が従業員向けに分譲した町と、昔ながらの農家を中心とした町が混在した中核都市の地域拠点病院でした。有名な高速道路の知る人ぞ知る事故の名所?に近いという立地条件から、どちらかというと整形外科が中心の病院でした。勤続年数を重ねるにつれ地域の高齢化も進み、ケースワーカーや理学療法士、作業療法士と連携の上、在宅介護のための住宅改修を伴う環境調整や、老人保健施設、老人病院への紹介といった、今でなら介護保険関連の業務、看取りなどが増えてきました。

これらも医師としての大切な役割のひとつであることは理解していましたが、若いうちに、もう少し患者さん本人と関わって、健康維持・増進を支援するような仕事をしたいと考えるようになり、産業医に転身しました。


先進的取り組みが多かったなか1項目だけ事業所間格差が

弊社グループの健康管理室で働いている医療職は健康保険組合の従業員です。当時弊社グループでは、定期健診後の本人への結果通知、保健指導などの事後措置の義務化といった労働安全衛生法の改正への対応策として、健康保険組合として常勤雇用した産業医資格を持つ医師が、今まで非常勤医師で対応していた事業所をいくつか組み合わせて担当するという"小規模事業場における産業医の共同選任事業"を先取りしたような形での取り組みを進めており、私自身もその形で複数の小規模事業所を担当していました。さらに、結果通知や結果に基づく精密検査・保健指導・経過観察検査といった内容についても、1989年頃にはほぼ現在の形で実施されており、この点でも非常に先進的な企業だと感じていました。

複数の事業所を担当するなか、ただ1つ事業所による格差を感じたのは、人事と上司だけで休業後の方の受け入れ条件の検討を行い、産業医に就業上の配慮に関する意見を聞くという習慣がないように感じられる事業所があった点でした。配慮のため就業制限をかけられると、当該従業員の社内のポジションや業務評価(=収入)に少なからぬ影響があるため、本人の価値観によっては、本人自身が制限を守る意志を持たない場合があります。それで、人事や上司とチームを組み、当該従業員がよりよい状態で就業継続できるよう"支えていく"仕組みであることを本人にも理解させていくことが必要なのですが、病院主治医として仕事をしているときには、そういう感覚を持つことは難しかったと思いますので、非常勤産業医の負の遺産だったのでしょう。今ではかなり慣れたつもりではありますが、まだまだ修行が必要なようです。


正社員である従業員の仕事の質が変わってきた・・・

常勤産業医として現企業にお世話になりだしたころは、部長、課長・・というピラミット構造のもと、管理職はおおむねマネジメントに専念され、オフィスにどっしり構えておられるような印象がありましたが、近年は管理職もマネジメントをしながら、実作業もこなすプレイングマネージャーとなり、複数拠点を兼任されることも多いため、オフィスへの職場巡視時でも、出張で管理職がご不在であることも珍しくない光景となりました。

また一般の従業員の仕事についても"単純作業はコンピューター化か、外部の専門会社化"されて、正社員に要求される仕事の水準が高くなったり、プロジェクトのように混成組織での仕事が増えたり、メールにて個人に直接依頼事項の連絡がくるなど、抱えている仕事の総量・質が傍からはわかりにくい状況となってきました。配慮や日々の観察をお願いするにも、人事上の上司とは別に仕事上のお世話役の方があるなど、人間関係がわかりにくく、かつ手間がかかるようになってきました。


健康管理室業務と主な連携相手の例は

普段は連携を意識しないまま流してしまっている業務も多いのですが、改めてみると実はいろいろな医療系・非医療系専門職と連携しています。現事業所の例だと研究開発部門という特性から、作業環境は安全管理や環境マネジメントシステムに直結していることもあって、職場巡視時以外に健康管理室が介入することは比較的少なく、3)の健康管理関連活動が中心となっています。

(1)作業管理
各職場の管理職・人事や職場の安全衛生担当者産業保健センタ(産業衛生科学センター)など
(2)作業環境管理
各職場の管理職・環境担当部署・人事や職場の安全衛生担当者・作業環境測定実施者(職場・弊社健保の産業保健センター(産業衛生科学センター)の作業環境測定士)、社内の装置や建屋のメンテナンス部門担当者など
(3)健康管理
・健診関連:定期健診提携業者、弊社健保の産業保健センター(健康管理センター・産業衛生科学センター)(精密検査・特殊健診など)など
・治療関連:事業所周辺や従業員居住地周辺の医療機関の主治医ほか医療関係者
・メンタルヘルス関連:健康保険組合提携の外部EAP、組合関連の相談提携施設、メンタル不調からの復職リハビリテーションを行う外部施設、メンタルクリニック主治医等


従業員本人が"都合の悪いこと" "叱られそうなこと"も話せる職種との連携が大切

現在担当している事業所の主な国内拠点は北陸3拠点(工場)と京都2拠点(研究開発)です。また、京都地区の研究開発部門も、比較的近い将来に実用化される部品の開発ですので、開発スケジュールがタイトです。従って北陸への異動時などは単身赴任になりがち、工場は交替制勤務、研究部門に単純作業はほとんどないという職種特性を持ちます。

そのため、安全配慮義務の観点からは、生活習慣病のコントロール状態、合併症の兆候有無、脳・心臓疾患発症(再発含む)リスクの高さなどの評価を要します。また、メンタル不調でパフォーマンス向上傾向に乏しい場合は配置に苦慮することになります。こういったことが問題になったときには、状態評価・確認目的で主治医と連携したり、メンタル不調では種々の状態評価や生活リズム調整、簡単な認知行動療法的アプローチなどの支援が必要だったりした場合は外部EAPや復職リハビリ提供施設と連携しています。

怒られそうな食生活や日常生活の癖などの情報を収集したり、休職時など会社の重要な制度等の説明の理解度を確認したりすることも大切ですが、これについては医師や人事・上司には本人がなかなか語らないので、保健師や外部EAPスタッフが上手に聞き出して連携していただいています。


社会的にも健康といえる状態を保てるような支援ができることが理想

産業医は検査手技も、投薬治療もしない、一般的な医師のとはかなり違ったイメージの医師です。ただし、治療者の立場も、企業側の立場も知っているという強みを生かし、上手にコーディネーター役を果たしていくことで、理想としては病気・ケガで身体的不健康になった従業員が、長期休職や復職不能で退職などといった社会的不健康な状態にならずに済むよう、介入のタイミングを誤らずに支援することで、企業にも、従業員にも貢献できるのではと考え日々対応しています。理想と現実のギャップは残念ながらまだまだ大きいですが、よりよいコーディネーター役になれるよう、医学的知識だけではなく、コミュニケーションスキルやマネジメントスキルを含めた向上を目指し、引き続き取り組んで行きたいと考えています。


次回予告

炭美子さん⇒洙田靖夫さんへのバトン
「しばらくご療養されておられて、昨年無事復活されましたので、ご自身のご経験ほかふまえられて何かお話をお聞きできたらと思います」とのこと。

次回をお楽しみに!

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