特集-リレー連載

タイトルどおりSNS保健指導向上委員会の現場に関わる会員の方を中心に、リレー形式で連載記事を執筆いただく企画。毎回、執筆いただいた方に「次はこの人にこれを聞きたい!」をお聞きし、バトンをつないでいきます。

第23回は、高橋裕子さん⇒三浦秀史さん へのバトンです。

第23回
「『禁煙』という商品をヒットさせたい」

禁煙支援士
三浦 秀史(みうら ひでし)
(SNSハンドルネーム:三浦)
1997年に禁煙マラソンに参加して20年間の喫煙生活から卒業。現在、禁煙マラソン事務局長、日本禁煙科学会理事として、禁煙の普及活動に東奔西走。日本禁煙科学会認定禁煙支援士。厚生労働省のタバコに関する複数の研究班員も勤めた。もともとは、コンピュータのシステムエンジニア。奈良女子大学非常勤講師。遠隔医療学会役員など多方面で活動中。

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三浦秀史さんからのひとこと
高橋先生から「SEとして企業に勤務していた立場から一転、禁煙支援という世界に入って心をつなぎ、いのちをつなぐ仕事をしてきたなかで、感じていることなどを教えてください」とのこと。民間企業でマネージメントやマーケティングを通じて学んだことを禁煙など保健医療活動にどう生かせるか。自分なりの想いを書かせて頂きたいと思います。

私たちは「禁煙」という商品のセールスマン

日ごろから私は、「『禁煙』という商品を売るセールスマン」という視点でいろいろと物事を考えています。この世の中、人間の活動は商品やサービスの販売・消費活動で成り立っている。医療や健康産業も、サービスのひとつの形態と言って過言ではありません。そこで、保健指導を実施者は、「禁煙」「運動」「ダイエット」を商品として捉えたらいかがでしょう。

これは、企業で行われているマーケティングという視点です。「禁煙」の場合、日本には3,000万人近い喫煙者が存在し、その3分の2はタバコを止めたい・減らしたいという現状があります。2,000万人近い「禁煙」という商品を希望している顧客がいるのです。

でも、実際には「禁煙を勧めても無関心をよそおう反応」「禁煙教室をしても集まらない」などみなさんががっかりするケースが少なくない。潜在顧客がたくさんいるのに、売れない商品が「禁煙」であるといっていいでしょう。ではどうすれば大ヒットする商品になるのでしょうか。


購入しない喫煙者が悪いのか、売り手である私たちに問題があるのか

マーケティングにおいて商品を購入しない顧客に問題がある(禁煙しない喫煙者に問題がある)といった発想は『皆無』です。商品を開発し、売る側に問題があるのではないかという視点でいつも考えます。

先日、コンサルタントを養成する講座を受講しました。「何度、企業訪問しても成約出来ない」というセールスマンに「何回訪問しましたか」と聞いたら「3回です」との答えが返った。それに対して、「あきらめる人は成功しない。101回目のプロポーズではないが何故で100回行こうとしないのか。」と叱咤激励したそうです。禁煙も同じです。「禁煙の失敗はあきらめた時。チャレンジしようという想いがある限り失敗ではない。吸った・吸わないで一喜一憂するのは、やめましょう」と思っています。

特定保健指導の問診票で、「禁煙する気がない」にチェックした人を「無関心期」としてしまっていいのでしょうか。セールス活動をする前にあきらめてしまっているという状況は避けるべきではないでしょうか。

アメリカの禁煙治療ガイドラインの中では、「医療者が接する喫煙者すべてに禁煙のことを勧めるだけで、声をかけた人の2〜3%は1年以内に禁煙をスタートする」といった報告もあります。先ほどのコンサルタント養成講座では、「始める前からあきらめている人は出来ない人だ」と言われました。そんな人にはなりたくないと、心に強く誓って帰りました。


禁煙価値を創造しましょう

同じ商品でも、人によって買いたい人、買いたくない人がいるように、その商品に対しての価値感は違います。私ごとですが、年初にルイ・ヴィトンのバックを購入しました。もともと、ほしいなという思い(ニーズ)はありました。私が購入した動機(ニーズがウォンツに変わった)は、(1)この鞄を買ったんだからそれにふさわしい人間になるように自分を鼓舞しよう、(2)安い鞄を買っては使わなくなり、壊れたりして買い替えるということを繰り返しているので無駄遣いはやめよう、(3)免税店で普段より安く買える、という3点でした。

顧客自身が、その商品価値を見出し、購入者になる。これを「顧客価値の創造」といいます。「禁煙して、健康になりましょう」は、提供者の価値であって、必ずしも顧客価値とイコールとは限りません。顧客は、自らの価値を「商品(禁煙)」に見出したら強力な購入者になってくれます。そしてただ購入するだけでなく、商品のファンになってもらうことが、購入の継続(禁煙継続)につながります。禁煙でいえば、単に「禁煙する人」を作るのではなく、「禁煙のファン」を作る、これこそが、禁煙を継続していくという、本当の意味での行動変容につながるのではないでしょうか。

携帯の価値をみなさんに挙げて頂いたら100者100様の答えが返ってくるでしょう。このように、顧客価値は画一的ないということも大切な視点と思います。

こうした「禁煙価値」の創造を実感したのが、5年ほど前にある企業で行った禁煙教室でした。人事命令で、喫煙者は全員参加の講習会。開始前に、上司や保健師さんに「俺は絶対禁煙しない」と断言して参加した一人の社員が禁煙教室終了後、誰より早く保健師さんに駆け寄って「おれ禁煙したい」と。その理由を聞いたら、「タバコを吸うと髪の毛に影響が…」の一言でした。その人にとって、禁煙が「髪の毛を大事にすること」という顧客価値の創造に結びついた結果だということです。


禁煙力が人をエンパワーする

禁煙には、不思議な力があります。「禁煙して人生がバージョンアップした」「禁煙をきっかけに、パワフルな毎日を送っている」など、元気で明るくなっていく喫煙者。そして、リアルタイムに進行するノンフィクションの感動的ドラマを半独占的に見ることでエンパワーされる支援者。禁煙にはそんな不思議な力があります。今、「女子力」「老人力」といった言葉を耳にしますが、禁煙のこの不思議な力は、「禁煙力」という言葉がぴったりです。対象者自らが、「商品(ここでは禁煙)」に価値を創造し、それを獲得したことで人生が大きく変化していく、つまり、その人の潜在した能力を顕在化して、禁煙をきっかけに元気で明るく生活する姿を、私たち禁煙支援者はたくさん見ています。


ESなくして、CSなし

従業員満足(ES: Employee Satisfaction)なくして顧客満足(CS: Satisfaction)なしもビジネスの基本とも言われています。生き生きとした職場、元気で明るいお店は、やはり気持ちのいいものですし、仕事をお願いしたり、商品を購入するときも、そんな会社やお店をついつい選んでしまいます。そういった会社やお店は、従業員満足度も高いし、顧客満足が高く成績もいいはずです。

コーチングや管理者セミナーなどにも何度か参加していますが、講師が最後に言うのは共通して「楽しいことが人間を動かす原動力」といった内容の言葉です。楽しいから、頑張れる、従業員満足も顧客満足も高いということでしょう。

私たちは、高橋一座と称して、全国で禁煙支援の普及のため東奔西走。国内だけでなく、6月にはソウルにも行ってきました。そして、「楽しい」を実感する日々を過ごしています。機会があれば、皆さんとも楽しい時間を過ごしたいですね。

座長の高橋先生(別名、ドラえもんのしずかちゃん)からバトンを私(のび太くん)にバトンを頂きましたが、高橋一座で一緒に頑張ってくださる野田先生(ジャイアン)にバトンを渡して私の話を終わりたいと思います。


次回予告

三浦秀史さん⇒野田隆さんへのバトン
「高橋一座のドラえもん。宮崎県串間市で小児科を開業するたっちんこと野田先生にバトンをつなぎたいと思います。なぜ、小児科が禁煙支援にはまるのか。そんな話をお聞かせ頂ければと思います。」とのこと。

次回をお楽しみに!

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