特集-リレー連載

タイトルどおりSNS保健指導向上委員会の現場に関わる会員の方を中心に、リレー形式で連載記事を執筆いただく企画。毎回、執筆いただいた方に「次はこの人にこれを聞きたい!」をお聞きし、バトンをつないでいきます。

第28回は、杉村 聖士さん⇒松川 千鶴子さん へのバトンです。

第28回
「新たな事業としての保健指導 〜Never give up!!」

特定医療法人大和会東大和病院 外来・健診・透析センター看護師長
松川 千鶴子(まつかわ・ちづこ)
(SNSハンドルネーム:やまと)
国立病院、民間2次救急指定病院勤務を経て、1990年、特定医療法人大和会東大和病院に就職。外来に配属される。外来勤務中は各科の診察介助の他、放射線・救急外来・化学療法センター・内視鏡センター・手術室など病棟以外はフリーで従事。また、臨床指導、院内教育、医療事故防止などの委員会活動に携わる。1997年の病院増床時に健診センターが新設され、主任として立ち上げを行い、2005年からは師長として外来・健診センターを兼務。院内接遇教育にも携わる。2008年特定健診・保健指導の開始にあたり、健診事業に専念するため外来の兼務は中止。特定健診・保健指導事業の安定により、2011年3月よりふたたび外来・健診・透析センターの師長となり現在に至る。
2007年 医療コンシェルジュ
2008年 AJHAヘルスマネージャー(食生活改善指導担当者)
2010年 健康医療コーディネーター

SNS保健指導向上委員会 やまとさんのマイページはこちら

松川千鶴子さんからのひとこと
seiziさんより、「医療機関で健診・保健指導の計画から評価まで作り上げていく過程をウータンさんが連載で挙げておられましたが、やまとさんの立場からは、どのような葛藤があったのか 知りたいところですね。その後の動きも気になります。」ということでバトンを受け取りました。葛藤は多々あったとは思うのですが、きっ、記憶が・・・( ̄~ ̄;)
うまくお伝えできるかどうか心配ですが、振り返ってみたいと思います。良い機会を与えていただき、感謝いたします。

予防医学の世界へ

保健指導評価作成時の葛藤というお題でのご依頼ですが、まずは、私と健診事業の関わりからお話をさせてください。

当院は地域に根ざした医療機関を目標とする急性期病院です。病院の一角の小さなスペースに健診センターはあります。1999年に健診センターを立ち上げました。一介の看護師に立ち上げを丸投げするとは、経営者側も大胆ですが、受諾した自分自身も怖いもの知らずでしたね。でも「失敗」のイメージは微塵もなく、経営的にも目標達成はできていました。もしかしたら、看護師より商売の方が合っていたのでしょうか。

ただ、立ち上げの話を受諾する際にはそれなりの葛藤はありました。患者指導は沢山してきましたが、予防医学は初めての世界で、何も知識をもっていなかったこと。そして、救急から離れてしまうことへの不安。もしかしたら看護師としてはバリバリ動けなくなっちゃうかもしれない。今までずっと外科畑で働いていたので、内科は性に合わないと思っていましたし……救急をとるのか、健診をとるのかと悩みました。しかし、まだ知らない世界はとても興味深かったこと、自分で考え行動できることの楽しさに惹かれ、最終的には健診を選びました。

立ち上げの実務に関しては、契約書を見たのも初めてだったら、渉外も初めて。慣れるまでは一苦労でした。また、経営者との意見があわなくて、ディスカッションという名の怒鳴りあいもありました。ここから、私の「戦う看護師」「強い・怖い看護師」の伝説が生まれました。毎日身体のどこかがピクピクと不随運動するほどストレスは大きかったのですが、それでも続けてこられたのは、初めて触れた予防医学の世界が楽しかったから。データから対象者の生活環境が見えるようになり、生活改善のアドバイスにとても燃えていました。リピーターも増え、健診センターの収益も軌道に乗り自分に余裕ができた頃、病院の師長という役職をどうしても受けざるを得ない状況になり、健診の実務から離れることになりました。


特定健診・保健指導事業の立ち上げ

ところが、2008年特定健診・保健指導が開始されることで、その年の7月に健診業務に戻ることとなり、この事業の立ち上げを再び丸投げされました。事業の内容把握、電子カルテのマスター設定、業務内容整理など、時間はいくらあっても足りなかったです。後になって気がついたのですが、健診センターの立ち上げと同様、院内で自分以外の誰も事業内容を知る人がなく、全て一介の看護師にお任せなんて、なんて恐ろしい状況だったのかしらと。全ての責任は自分の肩に乗っていたのだと。そんなことさえ気がつくことができないほど切羽詰った状況で特定健診・保健指導を開始しました。

健診は当院以外の開業医も行っていたので余裕がありましたが、保健指導は行う開業医が地域にいなかったため、希望する全ての対象者を受け入れなければいけません。スタッフは揃っておらず、一人で保健指導を勧めるハガキ送付から、予約、請求業務も全て自分で行いました。……が、これも不思議と「失敗」のイメージはありませんでした。「できるかな?」と考える余裕がない状況だからなのか、楽観的な性格なのか。振り返れば自分にも病院経営者陣にも呆れてしまいますが…。

そんなグダグダな状況での保健指導受診者数は2008年度438名。無我夢中でしたが、役割は果たすことができました。2年目の2009年度は少し余裕がでたのでスタッフ教育を行いました。請求は事務に、保健指導は保健師を雇用し保健師に。事業的には、勢いで実施した1年目、後輩育成の2年目。さて3年目は……足りないものは見えていました。


事業計画と評価の必要性

それは事業としての評価です。ここを完成させなければ本当に保健指導という事業が確立したことにはならない。そんな思いでいろいろな資料を探しました。このSNSを知ったのもその頃でした。SNSの会員の一人で、保健事業などをコンサルティングしているウータンさんの「評価」に関する勉強会のお知らせを発見した時は、迷うことなく申し込みました。この研修に参加した事がきっかけで、ウータンさんに「保健指導の計画から評価まで」をコンサルティングしていただくことになりました。この進行状況を"そのまま"サイト内のウータンさんの連載『教えてウータン 企画から評価まで 〜東大和病院 保健指導の現場から』に掲載することになりました。これを見ると、現場の弱かった部分など露見しているようでとても恥ずかしいのですが、読んだ方には「うちの施設でも出来る!!」という自信に繋がるのではと思います。文章に起こしてもボリューミーですが、リアルタイムはそれ以上にハードで、一つの内容を進めるのにもかなりの時間を要しました。

その中での一番の葛藤は「スタッフとの意思の疎通」。私が求めるところ、私が考えることがうまく伝わらない……。今までの事業は、全て一人で考え決定し実践してきたので、人と話し合って進めることのもどかしさ・難しさを改めて感じました。

例えば、医療機関の健診センターとしては、私は肥満より動脈硬化防止が大事だと考えていたが、スタッフは肥満防止・ダイエットが重要と考える。自分の考えをゴリ押しして進めても結局スタート地点が違うので、『動脈硬化防止』の講話が、徐々に『肥満は敵! ダイエットが大事!』というように、ずれていってしまう。ウータンさんは第三者のポジションで冷静に聞けたと思いますが、ついイライラしてしまう時もありました。こういう時は、なぜイライラするのか、どうしたいのか、それは自分のわがままではないのか、何を目指しているのかなど、感情を分析し気持ちを整理します。ですので、イライラを直接スタッフへぶつけはしませんのでご安心ください(笑) 。

もう一つの葛藤は「時間」でした。じっくり話し合いたいのになかなか時間がとれない。一歩進んだと思うと、話し合っているうちにまた後退の繰り返し。事業評価を考えるには、時期尚早だったのかと後悔したり、のんびり構えているウータンさん(この時の自分にはそう見えた。いや、いつもそう見えるか…^m^)に苛立ったり。しかし、苛立っても物事が円滑に進まないことは重々知っています。こういう時は開き直るしかありません。出来なければ出来なかったで、出来ている内容でやるしかない。スタッフも焦っていたので、これはチャレンジなので最初から完璧を目指さなくてもいいこと、評価開始時期を若干ずらしてもOKであることを伝え、今は回り道をしてでもきちんと理解することが大切であるということを理解してもらいました。

とはいえ、事業計画の話し合いに毎回は参加できないこともあり、スタッフから報告を受けると、前回の打ち合わせとのギャップがあり、なぜそういう内容になったかがわからず、あわててウータンさんに事情聴取なんてこともありました。なんとか、2010年度の事業評価として、形になり動き出した時はホッとしました。この事業評価の結果については、『教えてウータンさん』の連載にアップされる予定ですので、そちらをご覧ください!


継続することの難しさ

2011年4月。一年を通じ、一番業務に余裕のある月です。4年目となる今年度の保健指導計画を作成するようスタッフへ指示をしました。前年度にウータンさんにご指導いただいて、事業計画・評価の考え方を経験したスタッフ2名がいるので、スタッフに任せようと考えました。

スタッフ「今年度も、昨年と同じでいろいろデータを入力しないとだめでしょうか?」
私「同じじゃなくてもいいけど、そうしたらどうやって評価するのかな? 評価が必要ということは再三話し合ってきたことだよね? そのあたりはどう考える?」
スタッフ「そうですよね…もう一度話し合ってみます。」

こういう会話を何度か繰り返しました。国が定めている業務内容ではダメなのかと問われる。確かに最低限の仕事をしていても事業は成り立ちますし、責任は問われません。でもそれだけでは嫌なのです。自分たちの行っていることの責任を果たすために、自信をもったより良いサービスを提供するために努力は当たり前。それが職責だと考えます。そして、たとえ評価内容は変化しても、評価を継続することが大切だと。それが、時間を費やして教えてくれた方への恩返しだとも思います。

現在進行中の2011年度の保健指導評価は、2010年度と同様にウータン方式で行っています。事業計画はスタッフにたててもらい、みんなのコンセンサスを得て進行中です。私からのアドバイスとして、事業内容の選択基準は、「サービスを受ける側のメリットが最優先」「職務責任」をベースに考えることと注文をだしました。事業内容は昨年と同様ですが、講話内容は2010年度とは違い、血糖の変化を中心とした講話内容です。前年度の講話内容や教材を評価してからの変更が望ましいとも思いましたが、保健指導者がやりたいようにやるのもモチベーション維持のため必要と判断し、スタッフの意向を尊重しました。

今後もこうした葛藤を繰り返しながら継続していくのかと考えると少しため息がでますが諦めたらそこで終了。Never give upですよね!


次回予告

松川千鶴子さん⇒川井真紀子さんへのバトン
「私と同じ病院勤務のmakikoさん。最近はいろいろな役割も増えている様子ですが、行政との関わり、院内での立場など、いろいろと悩み、戦う?保健師の近況を、ぶっちゃけトークでお願いしたいです。よろしくお願いいたします。」とのこと。

次回をお楽しみに!

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