特集-リレー連載

タイトルどおりSNS保健指導向上委員会の現場に関わる会員の方を中心に、リレー形式で連載記事を執筆いただく企画。毎回、執筆いただいた方に「次はこの人にこれを聞きたい!」をお聞きし、バトンをつないでいきます。

第29回は、松川 千鶴子さん⇒川井 真紀子さん へのバトンです。

第29回
「失敗から学ぶ! 想いをかたちにするために必要なこと」

奄美中央病院・健診室 保健師
川井 真紀子(かわい・まきこ)
(SNSハンドルネーム:makiko)
高校卒業後理学療法士の道へ進学するも、「社会のことを何も知らないのに、このまま患者さんと向き合った時に自分は何が言えるのだろう?」と怖くなり、親に黙って逃げ出す(笑)。その後あちこちでアルバイトをしているところを連れ戻され、地元でも就職せずに自分探しの日々を送る。 ある日突然母親の田舎行きを思いつき、1週後には役場でのバイトを始め、そこで地域の方々とかかわる面白さを経験。
それから行政保健師を目指すべく看護学校⇒健診バスでの資金稼ぎ⇒保健師学校⇒川崎市保健所で産休代替を経て、地元の保健師として母子⇒介護の分野に携わるが、結婚により退職。
たまたま特定保健指導準備のために募集していた現職に就く。

SNS保健指導向上委員会 makikoさんのマイページはこちら

川井真紀子さんからのひとこと
松川さんからのまさかのバトンにパニックになりました(笑)が、は、「私と同じ病院勤務として、いろいろと悩み、戦う?保健師の近況を、ぶっちゃけトークでお願いしたいです」といただき、ぐるぐな私をそのままお伝えすることでいいのであれば、とお受けしました。「新人でもそんなことしないよ−」ぐらいの暴走っぷりでお恥ずかしい限りですが、同じように悩んでいる方の少しでもお役に立つのであれば嬉しいです。
また日記の方にも書いていますが、これを書いているときに業務の方で大きな動きがあり、これまでの整理をするよい機会となりました。バトンを託していただいた松川さんとその縁を取り持ってくださったSNSに感謝いたします。

医療現場での保健師の役割を探して…

私にとって「病院」はとても怖いところでした。

以前勤めていた行政とはスピード感が全然違いますし、忙しい外来で患者さんと話しこんでいたら白い目で見られていましたし。しかも外来所属なのに、採血しかできない私はほとんど役に立たず。毎日、看護師にも患者さんにもびくびくしながら「私が病院で保健師としている意味って何だろう?」と考えていました。

そんな中で回ってきたのが衛生管理者の役割でした。やっとできた役割に私は張りきり、今まで管理されていなかった健診結果の整備など「やらなければならないこと」を整備していきました。そんな中、ストレスが原因でやめていく看護師を目の当たりにし、職場としてメンタル対策をとるべきだと思いつきます。「国の指針に対策が必要とある。まずはメンタル調査をしたい」という管理者への申請はあっさり許可され、勤務者全員に実施しましたが、その後の対策がわからず途方に暮れます。とりあえずと、点数が高い人に面接をしたところ、うつを疑う者が数名いて、慌てて産業医経由で精神科受診⇒休職の診断書が出されるという結果に。その後の対応のまずさもあり、管理者からは「あなたがうつと言うからうつになっちゃったでしょ!」と、こっぴどく怒られてしまいました。結局、職場復帰の対応策を何もとれず、休職され方々は1度も復職できないまま、退職となってしまいました。

対応策を探して、厚労省のメンタルヘルス対策支援事業を見つけます。派遣していただいた講師の先生から「事業所として『心の健康づくり計画』を作らないとだめだよ」と教えていただき、「ケースワークも保健事業もすべてPDCAに基づくのが基本、メンタルも同じなのに!」と気づきました。

その反省をもとに、翌年は衛生委員会で事業計画を立て、それをもとに進めることにしました。しかし残念ながら管理者にはすでに「メンタルは保健師と産業医に任せたらいい」という雰囲気が出来上がっていました。さらに系列事業所職員の復職支援にかかわったことを越権行為と怒られてしまいます。

前にも後ろにも動けなくなった私は、どうしようもなくなり困ってSNSで日記に書いて、サイトの皆さんに教えていただいて、ようやく自分の失敗にようやく気づけたのでした。


想いだけではダメ。失敗から学んだこと

私の失敗は、衛生管理の業務が上からの指示ではなく、私が「必要だから」と勝手にやってしまったこと。やり方などは検討しながら決めていましたが、「何のためにやるのか」「何を目指してやるのか」に関して管理者と思いを共有していませんでした。その状況で自分の専門職としての立場から「これが必要です!」と叫んだところで、理解してもらえないのは当然のことでした。

そしてもう1つ。職場の健康課題をきちんとアセスメントすることなく、「目の前の問題を何とかしたい」という想いだけで動いていたことでした。

私には「今起きている問題」しか見えていませんでした。問題の背景には、それまでのたくさんの歴史があったはずでした。たとえば、食事部門にメンタル不調の方が多かったのでお一人ずつと面接すると、全員がボスとの関係に悩んでいました。私は簡単に「ボスのせいです。どうにかしてください」という結論を出すのですが、きちんとアセスメントすると、実はその方とボスとの歴史だったり、その方の性格、考え方、業務への取り組み方などいろんなものが影響していることがわかり、ただ「ボスが悪い」だけの問題ではないことに気づけるのです。私はそういう背景や「何で起きたのか?」ということを考えることが全くなかったのです。(実はこのあと特保でも同じ失敗をしていたことに気づきます。こちらの想いだけぶつけても動いてもらえない。問題の原因と背景をさぐって、「何のためにやるのか」「何を目指してやるのか」の思いをすり合わせていくことが大事なんですね。そこをせずに専門的な立場から「これが必要です!」はただの独りよがりなのに、それまでは全く気付いていませんでした。)

これらの反省をもとに、今年度は管理者と色々なことを話しあいました。「目指す姿はどこ?」「それが実現するためにはどうすればいい?」「それだとこの課題が残るけど、そこはどうする?」などを1つずつ共有することで、管理者から「やっときみが言いたかったことが見えた」と言ってもらい、体制整備に着手するところにまでたどり着きました。ようやく1歩踏み出せた感じです。全体に理解してもらうにはまだまだハードルがいくつもありますが、あせらず1歩ずつ進めていっているところです。


糖尿病患者の教育システム構築での失敗

職員自身の健康相談に対応をしていくうちに、産業医である糖尿病専門医から、「糖尿病患者の事例対応」へのヘルプを依頼されるようになりました。当院には患者教育の手順はありますが、どんな事例でも同じにルーチンで行われていました。しかも、患者さんの近くのかかりつけ医や院内での横のつながり(病棟看護師・栄養士・薬剤師・外来看護師など)の連携もなく、健康教育の効果(−薬剤治療や食事などの療養が上手くいっているかなど)の評価もなく、実際は「医師任せ」。熱意のある医師がいるときといない時の差が大きいというものでした。

事例対応後どこにもつなげず困っていた私は、糖尿病専門医と「医師に頼らず続けていける教育システムが必要」という話をしていました。そしてここでも、想いだけで管理者に色々提案しては、木端みじんに砕ける日々を繰り返していました。

しかしメンタル対策で組織での動き方を学んだ私は、昨年度はみんなが組織的に動けるように準備をしてみました。まず当院の糖尿病外来の患者数や紹介数、重症度、インシュリン導入数などをもとに医師だけでは回らない現状をまとめました。次に紹介元の医療機関を訪問し、地域から求められているのは、当院の教育システムや医療連携であることを把握しました。この地域のニーズに事務次長が動いてくれました。そして「組織が目指すところはどこか」「そのためにやれることは何か」などを話しあい、SNSサイトの日記にアップしています「やっと一歩踏み出せました」の展開が始まりました。

そこからは医師や看護師、慢患患者さんの管理を検討する会議(略して慢患会議)も巻き込み、教育システムの形をつくりました。内容も慢患会議で練った物を私が患者会で実演し、誰もが話せる「教育講話」へと改善していきました。あとは「割く人員をどうするか」をクリアすればGO! というところまできましたが、実はここで頓挫しました。

頓挫の原因は色々ですが、一番は「忙しいのに新しいことなんてできない」という「負担」と、「やったらこんなに楽しいことがあるかも」という「やりがい」との天秤に負けたことでした。そして負けた理由は、「やりがい」の予感を、「負担」より大きくなるように仕掛けきれなかったことにありました。


母子相談窓口の実現をめざして

この事業の頓挫で私は燃えつきてしまいました。家庭の事情もあり今年度で辞めようと思っていました。しかし、ある出来事が気持ちを変えました。それは母子保健の研修会に参加した際に、地域の保健師・保育士等からの「ケースについて気軽に話せる場を作ってほしい」という声を小児科医に相談したところ、気軽なOKとともに、うち明けてくれた秘かな野望でした。「先日の症例発表(双子ちゃんへのかかわり)を聴いて、登校拒否とか『うーん?』と思う子やお母さんに問題がある子たちのために、心理士さんと保健師さんがゆっくりかかわれる相談窓口をつくりたいんだ」これを聴いたときに、おもわず「やりたいです!」と言っていました(笑)。そして二人で妄想を語り合い、少しだけ画策を練りました。

まだまだ野望の段階ですが、もしこの相談窓口が実現出来たら、これまでの事例を通した行政とのかかわり、行政保健師との勉強会や乳健への取り組み、2月に実施した母子にかかわる皆さんでの集まり、院内での勉強会など、子どもを守るための地域づくりや病院小児科役割の共有など地域社会全体へのアプローチとして今までやってきたことがやっと線としてつながるのではないか?という気がしています。そして線でつながった時にやっと「自分が保健師として病院にいる意味」をしっかり感じることが出来るような気もします。

きっと管理者には「こんな小規模病院がすることなの?」と言われるかもしれません。でも、小規模だから地域のために小回りの効く活動ができるし、また小規模だから地域のために活動していかないと生き残れない、という想いはたくさんの職員と共有できているので、野望を実現すべく闘っていきたいと思います!


次回予告

川井真紀子さん⇒加藤ゆかりさんへのバトン
「私は自治体を離れてから、自治体との間にはこんなに壁があったのかと初めて気付いたのですが、kabaさんこと加藤ゆかりさんは中にいながら、その壁やいろんな思いと闘っているように思います。
kabaさんがどんな思いで闘われているのか、目指している姿はどこなのかなどを、そのままのおことばで教えていただきたいと思います。きっとそこを教えていただくことで、まわりで活動する私たちも、やれること、やりたいことの想いが広がって行くように思います。」とのこと。

次回をお楽しみに!

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