特集-リレー連載

タイトルどおりSNS保健指導向上委員会の現場に関わる会員の方を中心に、リレー形式で連載記事を執筆いただく企画。毎回、執筆いただいた方に「次はこの人にこれを聞きたい!」をお聞きし、バトンをつないでいきます。

第30回は、川井 真紀子さん⇒加藤 ゆかりさん へのバトンです。

第30回
「見失っちゃいませんか? 行政保健師さん!」

入間市健康福祉センター 保健師
加藤 ゆかり(かとう・ゆかり)
(SNSハンドルネーム:kaba)
平成5年、群馬県立健康福祉大学校保健婦学科卒業。その後小さな町で保健婦としてスタートするも4年目で挫折。2年間フリーター保健師を経て、偶然、現職に就く。今年で12年目を迎える。特定保健指導はなんと平成24年度が初チャレンジ!

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加藤ゆかりさんからのひとこと
この機会を与えてくださった川井真紀子さんに感謝を申し上げます。また、特定保健指導のSNSを運営してくださっている東京法規出版の皆さま、いろいろな方との出会いをさせて頂き本当にありがとうございます。川井さんからのお題「kabaは一体どんな思いで闘っているのか・目指す姿」について、よく毒特(ルビ どくとく)な日記を書いていますが、私の視点で改めて「ぶっちゃけ」を気楽にお話してみようかと思います。

保健師ってなんでしょ?

よくあるマンネリ化したお題ですね。保健師関係の雑誌で結構な頻度で見かけます。だけどなんとなく、なんだかほど遠い事が書いてあるような気分になるのは何故なんでしょうか。

保健師の皆さんは、実際、今、どんな仕事をメインにして働いていますか?「特定保健指導“だけ”やってる」とか「レセプトを見てる“だけ”」ですか?……私? 私もこの1年、一般講演会の仕掛け人とか、年2回ほどの健康相談やデイケアなどのいわゆる「精神保健“だけ”」してきました。例外じゃありません。

「就いた業務だけこなせばよい。」そんなこと、保健師の学校で習いました?
「与えられた業務を良く覚えてできるから専門職。」そうですか?

私が保健師婦学校に編入したのは平成5年。当時はまだピンク色のなでしこ柄。サイズもB5(笑)。文字も活版みたいなやつで、かなり昭和の香る教科書でした。しかも書いてある内容は看護婦時代のそれとはまったく違うもので、度肝を抜かれました。それは、ある保健婦が7年の月日を費やして、ひと家族と共に健康を取り戻していく過程が事細かに書かれていたのです。まるで小説のように。率直にすごいなと思いました。当時、看護婦をしていく体力的な自信がなかったというただそれだけの不純な動機で保健婦学校に編入したのですが、次々に授業で繰り広げられる、「地区診断」とか「公衆衛生」という世界に見事に飲まれていきました。私の学校では本当の地域住民に対して自分で電話をかけ、訪問の予約をとり、ひとりで訪問したり、赤い自転車に乗って地域を回ることや、健康相談、健康教育もやりました。地域住民がみな笑顔で応じてくれる。その実習の楽しいことといったら!

そんな実習のひとつ、成人健康相談の時のことです。先生の助言は、未熟で若い私の「(保健師魂の)芽」を見つけてくれたもので、今思えばあれが現在の私のスタイルの原型を作ったのだと思います。それはこんな一幕でした。

住民「紅花油が体に良いって聞いたんで使ってる。」
私「どのくらいお使いですか。」
住民「1週間で一本。(600ml)」
どう考えても多い量なので、私は看護の教科書のとおり、
「油はどんな油でもカロリー同じなのでお控えになったほうがよいです。」と答えました。
しかし、先生はこういったのです。
「別に紅花油でもいいじゃない。要は、その人はなぜ紅花油にしたのかということ。なぜ気を使った油を使わないといけない生活をしているのでしょうね。」

そうなのです。この人は健康に気をつけたくて紅花油にしたけど、油を使わなければいけない理由(家族)を抱えていて、そこを悩んでいたのです。
この先生の言葉こそ、保健師にしかない視点であり、「対象者の一言」を保健婦のフィルター(背景を想像しながら、家族や地域を内包して看る)に通すことが、「保健婦の仕事」なのだと感じたのでした。
 こんなふうに、保健師の業務というのは、その人の人生の一生と家族、地域に深く関わるとともに、共感し、ともに歩む作業を延々と続けていく仕事であると、教科書と実習を通して、乳幼児から高齢者すべてを看るいわゆる「誕生から墓場まで」の考え方やケースワークをしっかり叩き込まれたのでした。

こうして、感慨深げに国家資格を取って市町村に入職したのに、なんと最初の市町村で私は「保健分野ではない部署への異動」が理解できずに、すぐさま辞めてしまったのでした。なんともはや、今では本当に申し訳なく思っています。

突如フリーの時代が始まりました。この際なんでも経験しよう、そう思いました。特別養護老人ホームの看護業務、6市町村にも及ぶ臨時保健師や産休代替など。インターネット上で育児相談のボランティアもしていました。(らっぱぴょんさんとはそこからの付き合いです。)どっぷり趣味にも取り組んだし、夜遊びもしました。

このフリーの2年間は、自分という人間を理解するうえで重要な2年だったと思っています。それと共に、『私はやっぱり、「誕生から墓場まで」の保健師の仕事が大好きだった』ということを再確認しました。老人ホームの仕事は全然私の性格に合いませんでしたし、高齢者ばかりというそれよりは、いろんな年齢の、いろんな状況の、いろんな環境のことをダイナミックに進めていく保健師業務が本当に好きだったことに気がついたのです。それぞれ臨時で勤めた市町村には個性的な違いがありました。他市町村のいい手法を盗んで、どこかのフィールドに持っていけないかな、と思っていました。けれど、再就職も考えず、なんとなくぼんやりとした霧の中に私はたたずんでいたのです。

ところが、突然転機が訪れました。知り合いから「正職の募集が出たから受けてみないか」という話をされたのです。6月試験、8月採用というかなり中途半端な時期でした。こんなチャンスが来るなんて。私の霧がパッと消えてなくなり、とても珍しい中途採用となりました。ここからの私が本当の保健師誕生ということになったのです。本当に未熟な人間でした。今の職場はちょっと縦割りすぎですが、一応保健師らしい仕事をして12年目。いろんな市町村のアレンジもかなり用いています。


引っ越せない市役所〜環境を整えるという意味〜

閑話休題。さて皆さんは民間企業と公共官庁の違いは何だと思いますか? 私の駄論ですが、おおまかに2つあると思っています。

ひとつは、「引越しできるか出来ないか」。市役所がよその市に移転なんて本来絶対にありません。最近、某大手の本社が石巻市に移転して話題になっていますが、企業は引越しが出来ます。

もうひとつの違いは、「瞬間か永劫か」。企業の大半は買い物という仕組みで出来ています。買ってもらうことで企業も客も満足しますし、儲けという目に見える数字があるので達成感も高いです。しかし、それは瞬間的なものであり、ずっと続くものは少数。一方、お役所はそこに住民がいる限り「永劫」に続くものです。税金を頂き、コツコツ社会全体の総合的な儲からない環境整備を仕掛けていくのが役目であまり目に見えません。

この、「瞬間」と「永劫」の対比の中に、臨床看護(保健)師と行政保健師の活動に違いが出てくるのです。「瞬間」を職としている場合、例えば臨床看護いう場合だと、治療によって、傷病が回復することが看護師も患者も双方高い満足を得られます。病院自体も別院など引っ越しも可能。

一方で「永劫」を背負った行政保健師は、地域の人々が健康な人生を、一生涯いかに手伝えるかが業務です。しかし支援は地味で、双方に高い満足があるようには一見見えません。時には、「忙しいのに健康だなんて大きなお世話」といった具合です。でもその健康は住んでいる町の環境整備があるからこその健康持続だということを、行政保健師は理解し、伝えなければならないのです。私はこの地味な活動こそ、部署を超えて、個人・家族・地域・企業などと連綿とつながるダイナミックなフィールドワークとして感じるほうが好きでした。

しかし、残念ながら、その行政保健師の理解や働き方が段々教科書と違ってくるようになってきました。ライフステージ別に設定された法律によって、行政が保健師を縦に割り振ることを始め、高い壁の中に放り込まれ、長年その分野にいることが専門職、という妙な誤解が生まれてきたのです。

冒頭で書きましたが、私は保健師の業務が「与えられた業務を良く覚えて仕事できるから専門職」だなんて聞いたこともありません。地区を担当し、地域に顔を覚えてもらって、そこから保健活動が始まる。みんなに「おーい、元気ですかぁ」と声をかける。だけど今やその順番がもはや逆。建てた保健センターから保健師は出てこない。「相談でしたら来所してください。」「65歳ですか。では包括支援センターに。」「その症状でしたらお医者さんに。」今、一事が万事そんな様相です。これは全国どこでもそういう感覚が生まれているようなのです。私の思いは幻想だったのか。ついていけていないだけで、今の世の中では、求められる保健師とはそういう教育になったのか?


私の目指す姿 それは「本来の保健師」!!

だけども、最近流行の育成者研修に行くとですね、、講師の先生が言うんです。

「保健師は地域に出てなんぼです。」

そういうのを聞くと、ちょっと悲しくなります。現状と合わないじゃない。その意見は通用しないじゃない。でも講師の意見は私の意見と一致している。間違っているわけじゃない。だから、時折、上司や先輩に「保健師は法令担当制で働くのではなく、総合的に統括し、地区担当をしっかり敷くべきだ。」などというようなことをぶちかますのです。いまさら細分化された保健師を統合するなんて、到底無理なことは百も千もテラバイト的に承知です。実際仕事量も多いし。

「保健師ってなんでしょ特集」がほど遠いのはそういうことが原因だと思うのです。でも、なんとか、誕生から墓場までが担当できる部署を作りたい。とっても悔しい気持ちを引きずりながら、今はひたすら「“だけ”仕事」を追いかけています。だけ仕事のなかにも、誰かとつながり、広がる手法は何かあるはずです。椅子に座っていられない落ち着きのない私ですから、いろんな所にひょいひょいと顔を出します。それをやりすぎだと言われることもしばしばありますが、今後はぜひ、企業さんにも顔を出してアプローチ出来たらいいなと激しく妄想中です。このいろいろな迷いや妄想を諦めたら、私は保健師ではなくなってしまいそうな気がして仕方がないのです。だから、たまに「あきらめんぞ」と日記でぼやいているのはそういう意味なのです。目指す姿は至ってシンプル。「本来の保健師」なのです。まだまだ。先は長そうです。


次回予告

川加藤ゆかりさん⇒山田みゆきさんへのバトン
「学校給食と保健指導という全然違う職場異動の狭間で、栄養士の考える食の保健はどこが違っていてどこが共通していることなのか、両方体験した山田みゆきさんことヤキソバさんなら語れると思っています。子供の食と、大人の食のありかたを改めて聞いてみたいです。」とのこと。

次回をお楽しみに!

バックナンバー
過去の連載「保健指導を考える」を読む
保健指導のアウトソーシングに関するアンケート調査 結果レポートの発表です
坂根直樹先生新連載「ストレス方程式で解決!簡単ストレスマネジメント」
血糖自己測定器と院内専用グルコース分析装置の違い
脱マショウノオンナ 『保健師だより』私流のコツワザ集
ニッポンの健康づくり 辻一郎先生 津下一代先生 インタビュー
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ニプロ株式会社 気をつけていますか?メタボリックシンドローム!!
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