特集-リレー連載

タイトルどおりSNS保健指導向上委員会の現場に関わる会員の方を中心に、リレー形式で連載記事を執筆いただく企画。毎回、執筆いただいた方に「次はこの人にこれを聞きたい!」をお聞きし、バトンをつないでいきます。

第32回は、山田 みゆきさん⇒常泉 由砂さん へのバトンです。

第32回
「窓際栄養士のひとりごと」

管理栄養士
常泉由砂(つねいずみ・ゆさ)
(SNSハンドルネーム:モコスケ)
平成元年、相模女子大学学芸学部食物学科管理栄養士専攻卒業。商品検査センターがおもしろそうで、小売店舗のある消費者団体に就職。売場担当や市場調査担当を4年弱経験したのち、出産を機に退職。数年間は家事&育児に専念しながら、幸せ太り(?)した夫のダイエットに協力し、めでたく成功! それを知った夫の職場の看護師に声をかけられ、現在の企業の健康管理部門にパート職員として再就職。小遣い稼ぎ程度のつもりで始めた仕事にハマってしまい15年が経過。

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常泉由砂さんからのひとこと
ヤキソバさんからは「モコスケさんのプロフィールに書いてある「栄養士ときどき事務になりたい!」という思いが、自分が予防接種担当をやっていたときの思いとかぶります。モコスケさんが日常業務で感じていることや、これからの展望についてたっぷり語っていただければと思います♪」とのこと。とはいえ、事務ときどき栄養士だったからこそできること、見えることもあったと、原稿を書きながら気づきました。目に見える大きな功績は何もありませんが、働く人々のそばで感じていることをお伝えしてみようと思います。

職場では事務ときどき栄養士

日あたりのよい大きな窓のある事務所の窓際。ここが私の定位置です。同僚保健師さんと一緒に4,000人弱の従業員が、元気に働けるようサポートしています。管理栄養士の資格は持っているものの、私は健康管理部門の事務担当として採用されました。そのため面談や健康相談にかかわることは少なく、従業員の定期健康診断の手配や受診勧奨、その結果のデータ管理が主な仕事です。唯一の栄養士らしい仕事といえば、定期健康診断の会場での保健指導です。多くの現場職員と直接お会いできる貴重な時間になっています。


ペーパー栄養士でしたが・・・

もともと私には栄養士として働く気持ちはほとんどありませんでした。健康に生きることを勉強したら資格がオマケについてきたよ、ラッキー!くらいの、本気で管理栄養士になりたい人の顰蹙を買いそうな軽い気持ちだったのです。

そんな軽い気持ちの私が、栄養士の仕事がしたいと思うようになったのは、健康診断の会場に出向いて問診をとることを指示されたことがきっかけでした。最初は“なんで事務採用の私が?”不満と不安でふてくされた気分でしたが、先輩看護師さんに「話を聴いてくるだけでいいから」となだめられしぶしぶでかけました。

でも始めてみたら、事業所の様子や職員の暮らしが見えてきて、まあおもしろい!
食べ方の工夫をしてみようという話が終わるやいなや、職場仲間と「健診が終わったら○○でごはん食べようよ」と食べ放題ランチの約束をするお姉さま。
パワーアップできると思って、わざと体重を必要以上に増やしていた元野球少年。
「来年は声をかけられないように頑張るからね!」と約束しても、また翌年お呼び出しされるお兄さん。
ダイエットに成功したことを報告に来てくれるおかあさん。
私のモノサシではとてもはかりきれない、たくさんの刺激を受けることができたのです。(職員の健康管理業務を主に担うのは看護職ですから、食事指導メインでは対応できないケースは看護職につなぎます)

こうして毎年、健康診断の会場に出向いているうちに、保健指導に関わりたい気持ちがむくむくと湧いて、少しずつですが研修にも参加して、スキルアップしようと地道に努力中です。


栄養士はもっと企業の役に立つことができる

ところで企業の福利厚生部門で働く栄養士といえば、社員食堂で社員のための食事を提供する業務が多いでしょうか。しかし、これだけではもったいないと思いませんか? 栄養士の力は社員食堂の中だけでなく、従業員みんなの健康管理に積極的に活用しても良いのではないでしょうか。

平成8年に公示された「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」では「事業者は労働者の自主的な健康管理を促進するため、労働安全衛生法第66条の7第1項の規定に基づき、一般健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対して、医師又は保健師による保健指導を受けさせるよう努めなければならない。」とされています。でも本当なら“特に健康の保持に努める必要があると認める”状態にならないほうが良いわけです。

ところが残念なことに、自分の健康に意識が向くのは、たいていの場合どこか調子が悪いとか、健康診断であれこれと指摘されたとき。つまり“健康の保持に努める必要がある”状態になってからです。もっと早い時期に体や心に意識を向けられるようになっていて、すべての人が生活習慣を良好に保てれば、健康管理スタッフが健康診断の事後措置ばかりに翻弄されることなく、ワンランク上の職場の健康づくりや健康支援ができるうえに、医療費も削減できますから、企業にとっては大きなメリットのはずなのです。

現在の職場で働き始めた頃、従業員向けの健康支援の資料作成で、食べることから考えたアドバイスをしたら、前出の先輩看護師さんに「栄養士がいるって、いいねぇ!」と言っていただいたことがあります。お世辞も含まれてはいたでしょうが、ひとつのものごとをそれぞれの得意分野(栄養士なら食事指導のプロとして)からとらえれば、もっと働く人のお役に立てると実感できたできごとでした。

健康に無関心でも、運動が苦手でも、病気があってもなくても、人間は必ず食事をします。食べることは誰に対してもアプローチできる「ネタ」になります。栄養士はこのネタを持って、どんな職場にも、どんな人のところにも健康支援に行くことができます。この力を企業内で、働く人々の健康づくりに生かすことはできないでしょうか。


働く人に会いに行こう

では具体的にどうしたら働く人々のお役に立てるでしょうか。
資料を作って配る→ 自分は健康だと思っている人は、読んでくださらないようです。
職員研修のときに講義の時間を作ってもらう→ ありがたいことです。
でも、健康づくりに力を入れている企業なら別ですが、研修主催者が必要性を感じてくださらないと、時間を作っていただくのは至難の業かもしれません。

おすすめは冒頭でもご紹介した健康診断会場での保健指導です。事業主の健康診断は働く人のほとんどが受けるものですから、集団健診で実施していれば通常の業務の邪魔をすることなく、多くの従業員に会うことができます。また、ふだん健康に関心のない人も、元気いっぱいの若者も、否応なしに体重計に乗せられて、少しくらいは意識が自身の体に向いているはずの場所ですから、話しかけやすいのではないでしょうか。どうしてもお会いしたい人がいれば、事前に招待状を出しておくこともできますし、看護職と一緒なら会場の片隅で「よろず健康相談コーナー」を作ることもできます。

ちなみに今年度担当した会場では、まだ健診結果に異常値がほとんどない若い世代向けに、食事カードを使って簡単な食事チェックを実施しました。欠食していたり、野菜が不足している方が多く、近い将来がやや心配ですが、直接お話しできたことが今後の行動変容に少しでもつながってくれたらいいなぁと思っています。


さらにチャンス到来!

職場がようやく重い腰を上げて、受動喫煙防止対策に本腰を入れ始め、私も禁煙支援に関わることになりました。まだまだスタートしたばかりで支援プログラムも支援のスキルもありませんが、もう少し形になれば、働く環境の整備と働く人の健康づくりにもっとお役に立てるようになるだろうと目論んでいます。食べること+(プラス)禁煙支援=可能性は∞(無限大)だと信じて、まずは禁煙チャレンジャーを募ることから始めています。この先にどのような支援ができるか、まだまだ試行錯誤の段階です。いろいろな企業・団体のお知恵をお借りできたら嬉しいです。


主役は働く人

さて、私の職場には病気や怪我で業務に支障の出てしまった従業員の様々な相談ごとが持ち込まれ、何かしらの健康問題を抱えて就労することはあたりまえの時代となっています。どうしたら働き続けられるか、一定期間の休業が必要なのか、企業が設けている制度を基本に最善の策を産業医や人事担当者、上長を交えて検討する場が随時設けられますが、ここで忘れてはいけないのは、主役は働く人、従業員本人であるということです。

企業組織の中にいるとつい企業の制度の枠内だけで対応策を考えてしまいがちです。極端な表現をしてしまうと、企業が制度の運用を間違えれば「その健康状態で働いていただける職場は、当社にはありません」という話になり、さらに健康管理スタッフの関わり方によっては退職への道を作ってしまいかねないのです。

先の見えない社会情勢が続き、ただでさえ働く環境は年々厳しくなっています。どの業種にも増えているメンタル不全、重量物を扱う現場の腰痛など健康に問題を抱えた人が安心して働ける職場は、さらに狭くなっているように感じます。そんな厳しい状況にあっても、企業は従業員が健康に問題を抱えていても働ける場を探す努力を欠かさないでほしいですし、働く人もどのようなサポートがあれば働き続けられるかを自身で考え、主体的にアピールできるようであってほしいと思うのです。そして、企業と働く人のコーディネートに関わる健康管理スタッフは、企業の制度運用に目を光らせつつ、従業員にあらかじめ回復の状況を聴き取ったり、不安に感じることをどうしたら解消できるか一緒に考えることで、働き続けたいと思う気持ちを伝えやすい場を作れるのではないでしょうか。


さいごに

私の根底にある「おいしく、たのしく、いただきます!」

●おいしく
旬のおいしさを味わう。
甘い、辛い、酸っぱい、五感をフル活用して味わう。
世界中の味を味わう。
いろいろなおいしさを感じることがバランスよく食べることにつながり、おいしさをたくさん感じて、こころも豊かに

●たのしく
ひとりで静かにじっくり味わう楽しさ
家族で食卓を囲む楽しさ
仲間とワイワイ盛り上がる楽しさ
たのしく食べることでこころが元気になり、体の機能も元気になります

●いただきます
人間の生命を維持するための食べものは、もとはすべていのちあるもの。
私たちの生命のために、いのちをくれる大自然の恵みと、心を尽くして大自然の恵みを私たちのもとへ届けてくれるすべての人に、感謝の気持ちをこめて、いただきます!

雑食である人間がその特性を生かして、自由にいろいろなものを味わって、体も心も健康に生きられますように。


次回予告

常泉 由砂さん ⇒ 盒供〜鏤劼気鵑悗離丱肇
「病院勤務から産業看護、学生、行政…と、つぎつぎ新しい世界へ羽ばたくエネルギーはどこからわき出るのか。いくつもの現場を経験したからこそ見えるものをぜひ教えていただきたいです」とのこと。
次回をお楽しみに!

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