特集-リレー連載

タイトルどおりSNS保健指導向上委員会の現場に関わる会員の方を中心に、リレー形式で連載記事を執筆いただく企画。毎回、執筆いただいた方に「次はこの人にこれを聞きたい!」をお聞きし、バトンをつないでいきます。

第35回は、木村 里奈さん⇒杉浦 陽子さん へのバトンです。

第35回
「保健指導はおもしろい」

保健師
杉浦陽子(すぎうら・ようこ)
(SNSハンドルネーム:チェリー不二子)
私の母も保健師だった。私が未就学児の頃から夜の衛生教育に、連れて行ってもらったりして保健師の仕事の一部を見て育った。やがて、新卒で母と同じ職場の行政保健師となり、3年後出産前に退職したが、半年後、要請があってリハビリテーション看護師で社会復帰した。
6年後、再婚とともに渋谷区に転入し、電話相談業務の保健師となったが、やっぱり臨床が忘れられず、訪問看護師となった。娘の中学進学のために伊豆に戻り、健康診断サービス事業者に就職。ところが、平成11年のケアマネージャーの試験に合格したのが私だけだったため、ケアマネージャーと健診保健師業務との二足のワラジを1年間余り履くことになった。
健診保健師とは名ばかりで、健診機材を載せたワゴン車の運転から、血圧測定、採血、心電図検査、眼底検査、眼圧検査、健診結果報告書を作るための判定修正業務や、結果票作成の事務作業など、なんでもしていたが、保健指導は、健診の合間にワンポイント程度しかしていなかった。

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杉浦陽子さんからのひとこと
うさぎさんからは「仕事での臨機応変な対応をしつつ、プライベートでも色んなことにチャレンジされているチェリー不二子さんが羨ましくもあり、輝いても見えます。たくさんの好奇心から得られたパワーを仕事に切り替えて活かせる秘訣をぜひお伺いしたいと思います。」とバトンをいただいた。いま保健指導をおもしろいと感じるのはなぜか。いまにいたるまでの自分を振り返ってみた。

もっと保健指導をしたい

私は静岡県伊豆地方で保健師をしていたが、保健指導をする機会が少なかったので、「もっと保健指導をしたい」といつも思っていた。

それが、平成19年11月から横浜の財団法人神奈川県労働衛生福祉協会という健康診断サービス事業者に勤務することになり、平成23年度には、保健師一人あたり特定保健指導数約350人、一般保健指導数約500人を実施している。
特定保健指導は政財界でもビッグビジネスといわれていたので、独立して特定保健指導ができるかも知れないと思い、私は伊豆を出て妹のいる横浜に向かった。


捨てる神あれば拾う神あり

ところが、健保組合に特定保健指導の営業をしてみると、予想がはずれた。一人あたりの見積もり額が低いうえ、対象者は健診受診者の3割程度いるものの、説明しても同意が得られるのは1割程度だろうから、収益が上がらない。
さらに致命的なのは、健康診断とセットで特定保健指導を契約したいという話が多かったので、契約が取りにくいことがわかった。

一方、平成19年6月頃、財団法人神奈川県労働衛生福祉協会から、大企業に出張して健診事後の一般保健指導をして欲しいとの要請があった。
その仕事によって、大企業の実態を知ることになった。大企業では、特定保健指導は健保組合の仕事だから、企業内では実施する予定はないとの話だった。それよりも深刻なのはメンタル疾患なので、早期発見に努めることが先決問題という。
特定保健指導を進めるにしても、健保組合側と企業側の足並みが揃うまでには時間がかかるだろうと感じた。 そして私は、独立して仕事をすることに見切りを付け、11月に財団法人神奈川県労働衛生福祉協会に就職したのだった。


第1回公式オフ会勉強会での出会い

いろいろな研修会に参加してみると、専門知識の他にカウンセリングやコーチング技術が必要だということがわかった。

カウンセリングの手順は、(気持ちの整理)→(目標設定)→(現状分析)→(方法策定)→(実行)→(結果確認)という流れだから、特定保健指導とよく似ている。
日々の特定保健指導では、先に対象者の気持ちを整理してから目標を設定するようにしている。人は気持ちの整理がつかないままでは、目標の設定ができないからだ。
気持ちの整理ができているクライアントには、カウンセリングは必要ないので、目標設定からスタートする。行動変容ステージを確認することで、どんな気持ちでいるのかがよくわかる。

私は保健師としての経験年数は豊富だが、面談技術が足りないと思っていたので、カウンセリングやコーチングが身につけば、保健指導をするのに鬼に金棒になるだろうと思っていた。

そこに、保健指導向上委員会の主催で公式オフ会の自主勉強会の講師だった山内惠子先生(ykeikoさん)との出会いは、私にカウンセリングを学ぶきっかけを与えることになった。求め続ければ与えられるものだ。


傾聴と共感をするために必要なこと

カウンセリングセミナーで最初にしたことは、自分のストレスチェックだった。これで自分がストレスの強い状態であることがわかった。また、どういう気質の人間なのかもわかった。

カウンセリングの基本は傾聴することなので、カウンセラーになるには、ストレスを低くしておく必要がある。ストレスが高いと、クライアントの話を聞いているうちに、怒りが湧いてきてブロッキングが起こり傾聴できなくなり、クライアントの気持ちを受けとめて共感することもできない。

だから、過去の私は人の話を傾聴できる器ではなかったのだ。そこで、自分のストレスが何に起因するものなのかを探すワークが必要となった。ロールプレイングで、初めてクライアント役になり、カウンセリングをしてもらった。そして、一連のセミナーを受講して、少しずつストレスが低くなっていった。


難聴と傾聴

平成22年6月に、私は右耳の突発性難聴になった。適切な治療を受けたが、重症だったので、残念ながら難聴の後遺症が残った。
しかしながら、神様は私たちに失うものがあれば、必ずほかの何かを与えてくれる。その時は気づかなかったが、後からそうだと気づいた。
難聴になってから、私は日常的に傾聴をすることが与えられた。心して聴かなければ、聞き取れないことが多いからだ。騒音の中ではなおさらだった。だからこそ、左耳が聞こえることに感謝できたのだ。


チェリー不二子の日記

私は保健指導向上委員会の日記を、チェリー不二子の名前でほとんど毎日書いている。内容は日記なのでさまざまだが、仕事で感動したことからプライベートのことまで書いている。だから、この日記は私の大切な記録となっている。
その日記から、保健指導の事例紹介をしてみよう。

「無関心期を受けとめる」(日記より)
ホテルの営繕、日勤→24時間勤務→明け→休みの4輪番制の勤務、男性。
行動変容ステージは、食生活も運動も、
「やろうと思っているのにできない」に○が付いていたので、
何キロぐらい減らしたいと思いますか?と聞いたら、
「減らす気は毛頭ないです。」と返事が返って来た。
おや?と思い、それでは、関心がないということですねと聞いたら、
「そうだ。」という。
「先生に失礼だと思って、違うところに○を付けていた。」というのだ。
あらまあ、そうだったのですか、それは、お気遣いいただいて、
ありがとうございます。
でも、私は○○さんの正直なお気持ちを知りたいのです。
関心がなかったら、無理にしなくてもよろしいですよ。
面談通知を貰ったときに、どんな気持ちになりましたか?
「ああ、とうとう来たか…って思いましたよ。」
とうとう来たかって思ったのですね。本当は嫌だった訳ですね。
「はい。今さら、生活を変えるつもりはないし、明日死んでもいいんだ。
親としての責任は果たしたしね。家のローンは残っているけど、俺が死んだら生命保険でチャラになるから大丈夫だ。」
明日、死んでもいいと思っているから、生活は変えるつもりはないってことですね。
○○さん、人間って簡単に死なないのですよ。
動脈硬化が進むと、脳卒中か心臓病になる危険度が増えます。
もし、脳卒中になったら、片麻痺を起こして日常生活動作がうまくできなくなりますから、大変ですよね。
「うん、それだけは女房もならないでくれと言っている。」
そうですよね。それだけはならないでくれって奥様も言ってるのですね。
「だから、現状維持ができるといいな。」
そうですね、現状維持ができるといいですよね。
体重が半年で2.5kg増加していますから、
何もしなければ、1年で5kg増えるかもしれません。
どうしたら、現状維持できると思いますか?
「腹、八分目…。」
そうですよね。腹八分目、いい感じです。
昔は腹八分目と言いましたよね。今は、腹七分目ですよ。
「それじゃ、腹減っちゃうよ。」
お腹がすいたら間食していいですよ。
「えっ?間食していいの?俺は腹いっぱい食べて、
間食はしない方がいいと思っていた。」
現在では、ちょっと考え方が変わってきて、食事を七分目にして、
お腹がすいたら、小さなおにぎりやおせんべいなどを食べることを、
お勧めしています。
一度にたくさん食べると、血糖値が急に上がってしまいますので、
体には良くないのです。
食事は1日のカロリーを分散して食べる方がいいですよ。
飢餓状態を感じさせない方が、脂肪をためにくくなります。
「へえ、そんなこと知らなかったよ。やってみるよ。」
それから、夜勤の前後の寝る前も、たくさん食べないほうがいいですね。
軽く食べて寝て、起きてからまた食べればいいのです。
そうすれば、現状維持できますよ。
「わかった、今日はいい勉強になった。」
その言葉を聞いて、私は嬉しくなった。


気づけば、人は変われる

何か気になることがありますか、と私は面談で聞くようにしている。そうすると、気になることを糸口にして展開できるので、対象者の気持ちに添いやすいという利点がある。

人の行動には理由がある。だから、その行動の背景を知りたいと思う。そのため、気づきを促す質問をする。なぜ、できないの?と質問するのは、対象者を責めることになるので、言ってはならない。
6ヵ月後にどうなっていたいですか?と質問すると、未来をイメージしやすい。次に、○○したいと思っているのにできないのは、何が妨げになっていますか?と質問すると、対象者は気づきが得られる。

そして、対象者の気づきの瞬間を目撃できると、私はたいそう感動する。そして、「やってみるよ」や「来てよかった」と笑顔になる。だから、保健指導はおもしろい。


将来の夢 〜「どこでも保健室」

定年まで数年、そして嘱託で5年間の予定となった。でも、私には夢がある。「どこでも保健室」ができたらいいなと思っている。必要な人がいれば行って話を聞き、癒して欲しい人がいれば、ヴァイオリンの先生と一緒に行って、音楽療法をする。そんなことができたらいいなあ。すでにヴァイオリンの先生には同意を得てある。
その頃には、アマチュアオーケストラのヴァイオリンを弾いているかも知れないので、音楽仲間はたくさんできるから、「どこでも保健室音楽隊」として、面談付きの演奏活動をしているかもしれない。


次回予告

杉浦 陽子さん ⇒ 丸中 伸一さんへのバトン
「かびごんさんこと丸中さんは、直接、保健指導はなさっていませんが、保健指導支援システムを提供いただくというかたちで、わたしたち指導的立場の強い味方です。かびごんさんとの出会いがなかったら、仕事がうまくいかなくて、困っていたことでしょう。お仕事だけでなく、音楽活動もなさっている、かっこいい、丸中さんを「いいね!」と思います。」とのこと。
次回をお楽しみに!

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