特集-リレー連載

タイトルどおりSNS保健指導向上委員会の現場に関わる会員の方を中心に、リレー形式で連載記事を執筆いただく企画。毎回、執筆いただいた方に「次はこの人にこれを聞きたい!」をお聞きし、バトンをつないでいきます。

第42回は、河村 久美さん⇒森 佐矢香さん へのバトンです。

第42回
「カウンセリングの学びから、『対象者に行動変容を促す』ことのできる管理栄養士をめざして 」

森佐矢香(もり・さやか)
(SNSハンドルネーム:saya)
調剤薬局で事務兼栄養士として4年間働き、事務仕事、栄養相談のほかに調剤薬局での栄養士の役割を確立し、広める仕事を担う。その後、特定保健指導の仕事に携わり2年目になる。

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森佐矢香さんからのひとこと
河村さんから頂いたバトンの内容は、自身がされているカウンセリングを含め特定保健指導などの思いが聞けたらと思いますとのことでした。
管理栄養士として働く経験が少ない中で、私の話で気づきがあるのか不安でしたが、自分の取り組みを振り返る一つの手段として、思いを綴りたいと思います。

なぜ管理栄養士を目指したか

中学2年生の春、突然、スポーツテストの1kmでさえ走りきることができなくなりました。それまでは、運動が大好きで体育が1番の得意分野だったのです。病院に行くと貧血と診断され、主治医に食事に気を付けていきましょうと言われました。
その日まで「栄養」なんて気にせず食事を摂っていましたが、「食べ物が体を作る」ということを、身をもって体験したことで、食事に気を付けるようになりました。食事に気を配る生活を続けていく中で、食べ物に興味を持ち、栄養士になりたいと思うようになり大学進学を目指しました。

管理栄養士養成学校は数多くあり、どの大学を受験するか大変悩んだことを今でも覚えています。ある日、愛知県にある大学のパンフレットを見て、強く惹かれました。なぜなら、その大学の授業にカウンセリングのカリキュラムが載っていたのです。カウンセリングができる栄養士? と当時の私には疑問だらけでしたが、不思議と興味がわきその大学を受験し合格しました。

大学で学ぶカウンセリングとは、ヘルスカウンセリング学会公認の傾聴技能(以下SAT法)を学ぶことでした。SAT法とは構造化された問いかけによって、問題解決脳の右脳を活性化し、ひらめきや連想法を用いて問題解決や新しい生き方への気づきを促す技法です。傾聴技能を習得するということは、基本姿勢である観察、傾聴、確認、共感力を身につけることになります。

授業で学ぶことは理論だけではなく、主に実技を習得するための実習がたくさんありました。普段私たちは、人の話を聞くということを当たり前のように行っています。しかし、「聞く」と「聴く」とは全く異なった行動であり、相手の伝えたいことをありのまま「聴く」ことは案外できていないのかもしれないと、授業初日に感じたことを覚えています。
それまでの日常会話を振り返ると、相手の話を聴きながら自分の体験と重ね合わせ、自分の尺度で解釈したり、それによって相手の発言が正しいかどうか評価してしまったりと、相手の話をありのまま聴くことができていませんでした。

例えば、「ダイエットをしているが、うまくいかない」という話を聞くと、自身の似たような経験と重ね合わせ、「だよね、誘惑に負けて食べちゃうもんね。」と勝手に解釈し答えたりしていました。しかし、本当はその友人は誘惑に負けて食べているわけではなく、始めた運動が続かないことを聴いて欲しかっただけということがありました。
学び始めの頃は、全くカウンセリングというものが理解できませんでしたが、実習を重ねるごとに傾聴技能を感覚で理解し始めました。

先程の例で言えば、「ダイエットをしているが、うまくいかない」という気になることに対し、「授業の課題が多すぎて、運動をする暇がない」と腹を立てている。腹を立てているのは「授業の課題が多すぎること(環境)」であり、「課題がなければ運動できるのに」と期待していました。しかし、傾聴技能の自己イメージ法を利用すると、「要領が悪い自分」に気づき、課題が多すぎて何から手を付けてよいかわからず、何時間もダラダラ過ごしていたということに気づくことができます。すると、「優先順位をつけて取り組む」という目標が決まり、それによって、課題がある中でも運動する時間を作ることができるようになりました。
自分ではない別の人や環境に向かっていた気持ちや期待が、傾聴技能を用いて話を聴いていくと見事に自分に焦点が当たり、原因は自分にあったということに気づきます。そして行動変容につながっていきます。

こういった気づきから行動変容につながっていくパターンを幾度となく経験していくうちに、「カウンセリングは面白い」と思うようになりました。
私はこの授業を経て、栄養の知識提供だけでなく、対象者の気づきを促し、目標を自己決定できる栄養相談を行う栄養士になりたいと思いました。


就職して感じたこと

大学卒業後は地元の調剤薬局に就職し、事務兼管理栄養士として働きました。事務としての仕事、門前のクリニックから依頼される栄養相談をこなし4年の日々が過ぎました。

学校で学んだ傾聴技能を用いて、栄養相談を行うと、クリニックの先生には話していないこと、薬剤師には話していないこと、などを多く聴き取れるようになりました。
会話の中で対象者が期待していることを聞き出し、現状の気持ちや感情を繰り返すことで自ら気づき、自ら目標を決めていきます。

傾聴ができるだけでも、対象者に感謝され笑顔で帰って行かれることが度々あり、喜びを感じることができました。
しかし一方では、対象者の方から、頭では分かっているけれど、どうしても間食がやめられないなどの相談も多く、当時の私の力では限界を感じる部分も少なくありませんでした。


再度カウンセリングを学んで

働き出して4年後に結婚が決まり、退職して愛知県に引っ越しました。
約4年間カウンセリングの勉強から離れていましたが、自分の時間を多く持てるようになり、再度学びなおしたいと思いました。
カウンセリングの勉強会へ行くようになると、私が大学で学んでいた時より、傾聴技能のレベルが数段上がっていました。コーチングが取り込まれていて、決定した目標の実行自信度をより上げる内容に進化していました。
ヘルスカウンセリング学会のカウンセリングは構造化されているため、作成されたシート通りに進めれば誰でも使えるのが最大の特徴です。しかし、現状に満足せず、栄養相談をより向上させようと思うと、まだまだ学べることがたくさんあると感じました。
理論を理解し、シート通りのカウンセリングを数多く行っていくうちに、シートの問いかけの意図を掴めるようになり、シート通りの言葉ではなく、自分の言葉に言い変えて進めることができるようになりました。

ちょうどその頃から特定保健指導の仕事に携わり始めました。初回面談30分の中で対象者と信頼関係を形成し、どれだけ自己決定を促すよう面談できるかが必要になりました。
特定保健指導の対象となる方は、様々な生活環境で働いている方がおり、今までの私の経験だけでは対象者の状況や気持ちを理解できないことも多々あります。
しかし、対象者の状況や気持ちを理解しきれなくても、寄り添って共感しながら話を聴くことで、現状の中から気づきを促すことを意識して面談を行ってきました。

仕事にも慣れてきて少しずつ面談技術が上達していること、自己成長している過程が愉しくて、もっとSAT法を学びたい気持ちが強くなり、心理カウンセラーを目指しました。
ヘルスカウンセリング学会の心理カウンセラーは、隠れた未解決の感情から気づきをおこし、癒しと再学習を行うことで問題解決の行動変容を支援するものです。
傾聴技能より高度な技術ですが、学んでいくことで傾聴技能の基本の大切さが身に染みました。
現在は資格取得を達成し、もうひとつ上の資格に挑戦しようと勉強しております。
なぜここまで学びたい気持ちが湧いてくるかを考えてみると、心理カウンセラーの資格取得に向けて懸命に取り組んだことで、傾聴の基礎がより身に付き、シートを使用しなくても、一部分を用いて問いかけを行ったり、対象者に合わせて応用を効かせることができるようになったからです。

最近、毎年特定保健指導を受けている方に面談しました。面談終了後、その方が「こんな指導は初めてだよ、ありがとう」と声を掛けてくださいました。
努力して技術を身につけた結果、面談後に感謝されたことは、今後仕事をしていく上での励みになります。対象者に合わせて、様々な角度からの傾聴を行うことができることが、今の私の強みになっています。これからも自己成長を続け、対象者の行動変容を促せる栄養士を目指し、より一層向上していきたいと思います。


次回予告

森 佐矢香さん ⇒ 下岡 果林さんへのバトン
下岡果林さんの日記の中に、「本当にやりたいことを見失わないようにしたいと思っております☆★」と書いてありました。
私も日々の仕事の忙しさに、自分のやりたいことを見失いそうになることがあります。
そんな中でも、どんなふうに自分の信念を通しているのか、どんな想いで仕事に取り組んでいるのか聞きたいと思いました。
次回をお楽しみに!

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