特集-リレー連載

タイトルどおりSNS保健指導向上委員会の現場に関わる会員の方を中心に、リレー形式で連載記事を執筆いただく企画。毎回、執筆いただいた方に「次はこの人にこれを聞きたい!」をお聞きし、バトンをつないでいきます。

第43回は、森 佐矢香さん⇒下岡 果林さん へのバトンです。

第43回
「保健師とは、相手に寄り添うサポート、そして道案内の仕事」

下岡果林(したおか・かりん)
(SNSハンドルネーム:プチ保健師)
保健センターで臨時保健師として1年間働き、母子保健の担当として窓口業務や健診・健康相談業務・新生児訪問など地域に密着した保健師として活動。このときが、私の保健師としての在り方を見つけた場所です。その後、現在の職場にて介護予防事業・健康増進事業・特定保健指導に携わり、日々奮闘中。

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下岡果林さんからのひとこと
バトンが私に回ってくるなんて…。びっくりして何度も見返してしまいました。
森さんから頂いたバトンの内容は、SNSの私の日記に、「本当にやりたいことを見失わないようにしたいと思っております☆★」と書いたことに、「私も日々の仕事の忙しさに、自分のやりたいことを見失いそうになることがあります。そんな中でも、どんなふうに自分の信念を通しているのか、どんな想いで仕事に取り組んでいるのかを聞きたい」、といただきました。保健師としてまだまだ、未熟で勉強中な私が皆さんに伝えられることがあるのだろうか…?不安になりましたが、せっかくいただいたお話なのでお受けいたしました。

学生の時に実習で出会った「保健師」という仕事

私の母は看護師です。今も看護師として働いています。そんな母の姿を見て育った私は、幼い頃から、看護師になりたいと思っていました。母のように信頼される看護師になることが私の目標でした。
私の母は病院勤務を経て、町役場で看護師として働いていました。私の育った町は人口2400人程度の小さな町。ある時、住民の方に町で声をかけられました。「いつもお母さんに助けてもらっています。安心して家で介護ができるのは看護師のお母さんがいつでも来てくれるから…。ありがとう。」と言ってくださいました。
患者様と家族の安心を守るために母は頑張っていると感じました。そこには、信頼関係が成り立っていると。そんな、信頼される看護師に私もなりたいと思ったのです。

でも、私は大学を卒業してからずっと保健師として働いています。看護師として働いた経験がありません。私が憧れだった看護師でなく保健師という道を選んだのは、大学の実習で行った保健センターの保健師さんとの出会いでした。
保健センターでは、地域に住んでおられる方々の生活を支えるための支援を考えていく実習でした。その地域に住んでいる方々の生活に直結する仕事ができるということに喜びを感じました。訪問に同行させてもらった時に、訪問先の方が教えてくださったことがありました。
「保健師さんが、顔を見に来て話を聞いてくれるだけで元気になる。一人ではないと思えるから頑張れる。」
地域の保健師という役割はこういうことなのだ。保健師の仕事は、相手の顔を見ながら出来る仕事だと感じました。病気を治すための支援をすることも大切ですが、その人の生活自体をサポートすることも大切な仕事なのだと感じたのです。保健師という仕事を私もしてみたい…と思いました。


経験がなくても、寄り添う支援を心がけて

卒業して、私は保健センターの臨時職員として母子保健事業に携わっていました。
業務内容は、窓口業務(母子手帳の発行、転入・出の手続き)・健診業務(相談・未受診者訪問)・新生児訪問等を担当していました。
右も左も分からない状況でしたが、先輩の仕事を目で見て身体で覚えて実践していきました。赤ちゃんや子どもは大好きなので、毎日が楽しくて仕方ありませんでした。
ただ、出産や子育ての経験も無い私は力不足だと言われることも多くありました。知識は勉強することで増やすことが出来ましたが、経験はどうにもなりませんでした。
そんな時、私は保健師として地域の方に何ができるか?考えてみました。実習の時に感じた地域の方に寄り添った保健師…。どうすればなれるのか?
まずは、相談に来られた方の話をしっかりと聞くようにしました。そして、何に困っておられるのか、私に何を求めておられるのかを見出すように、心がけました。先輩のように経験を交えて上手に話ができなくても、しっかりと話を聞くことで、問題を解決の方向に導くことが少しずつできるようになりました。

健診未受診者の方のお宅に受診勧奨をしに訪問した時のことです。初めの訪問は、私がまだ経験が浅いことを指摘され話を聞いてもらえませんでした。
2度目の訪問では、健診の話よりも母親の気持ちを聞くようにしました。保健センターから来たということで、身構えておられたのですが話をすると子育てに対する思い等を打ち明けてくださいました。前回の健診で成長不良を指摘され不本意な指導を受けたことが今回未受診となった原因と判明しました。まずは、話を聞いて状況を把握することに努めました。しっかりと傾聴することで、少し気持ちが落ち着かれたようで、母子手帳を見ながら、子どもさんの成長や発達の状況を見ていきました。成長曲線よりは下ですが、順調であることを確認しました。母親も納得され、健診を次回の日程で受けにきていただけることが出来ました。

このような経験を何度か繰り返すうちに、保健師として私が出来ることは、相談に来られている方が自分で答えを出すための道案内をすることだと気付きました。
地域の方の生活に寄り添って支援をしていくというのはどういうことなのか?
その人がその人らしく生活を送る為のサポートをすることだと私は思ったのです。
指導ではなく、支援する・サポートするというのがぴったり合っているのではないかと思ったのです。
勿論、私の知っている知識を用いて相談に乗ります。必要とされている情報を提供できるように準備はします。でも、必要以上に知識を出さなくても良い場面もあるのだと学びました。

保健センターの臨時職員は1年という契約だったため、私は次の就職先を探しました。次も、保健師として働きたいという気持ちは強くなっていました。
そんな時、医療法人の経営するクリニックが4つと、フィットネスクラブや、通所介護施設がある事業所で、新しい事業展開として、特定保健指導を実施したい。管理栄養士はいるが、保健師がいない。誰か知っている人で保健師がいませんか?と当時の上司に話があったそうです。

面接を受けてみると、特定保健指導以外にも介護予防に関する新規事業を計画しているとのこと…。私は、保健師として1年しか働いたことがありません。しかも担当は母子保健事業でした。介護予防事業も特定保健指導も未知の世界です。
「保健師として働きたいと思っています。ただ、今から始めようとされている事業については全く経験がありません。自信も持てません。」と、面接官に伝えました。
面接官は、「あなたは何がしたいですか? うちの医療法人で何ができますか?」
と、質問されました。すぐには返事に窮してしまいましたが、答えとして考えたことは、「人の役に立ちたい。その人の生活に寄り添った支援がしたい。」という保健師になった理由でした。そしてそれは、保健センターで学んだことできたことでもあります。相手の話をしっかりと聞くことから支援が始まる。私は、その方のなりたい自分への道案内をすればよいのだということを思い出したのです。
経験はありませんでしたが、チャレンジしてみたいという気持ちを汲んでいただき今の職場に入社しました。


介護予防事業や健康教室で新しい広がりが……

入社当初は、特定保健指導の勉強と準備をしながら介護予防事業や健康教室等に携わっていました。毎日、新しいことが沢山あって刺激を受けました。何事も経験してみないと分からないと思い、迷ったら実践してみることにしました。保健師としては、私が初めての職員だったので、保健師が何をする職業なのかスタッフに理解してもらうことから始まりました。運動指導なども経験がありませんでしたので、研修会に参加して勉強しました。
また、講座では大勢の方の前の話をしなければいけません。私は人見知りがあるので、緊張して伝えたいことを伝えられなくならないように何度もデモンストレーションを行いました。迷っても相談相手がいません。前の職場の先輩に何度も相談に行きました。「実践あるのみ!」という先輩の強い後押しで、行動を起こすことができました。
初めての講座では緊張しっぱなしでしたが面白かった分かりやすかったと言っていただけました。

自治体の依頼で介護予防事業にも携わりました。介護予防では、対象者の健康管理をしながら運動指導や食事のアドバイスをしました。高齢化の進んでいる地域では、一人暮らしで閉じこもっている方が多く、この機会を使って外に出て、他の方と交流をするというのは大事なことを学びました。事業が終了する頃には、元気になっておられ、その後も仲間との交流は続いているようでした。回を重ねるごとに、対象者と信頼関係ができ、相談も受けるようになりました。クリニックの保健師ですが、外に出て地域の方と交流をすることが多く勉強になりました。健康教室で健康増進に関係する講座を開催し地域の方々の健康増進をサポートするような内容をお話しさせていただいたこともあります。最初は緊張しましたが、次第に慣れてきて知らない方との出会いを楽しいと感じるようになりました。


特定保健指導は目指していた保健師の仕事なのか?

さまざまな業務に慣れた頃、特定保健指導が始まりました。開始するにあたって、管理栄養士の先輩と2人で研修会に参加するなどし、勉強を重ねました。通常の介護予防事業、健康教室をしながらも、特定保健指導を実施するために各施設スタッフへの勉強会を開催し協力を仰ぐなど、ドタバタとした日々が始まりました。
特定保健指導では、短時間で信頼関係を構築し目標設定をしなければなりませんでした。初対面の方に心を開いてもらって、行動変容を促すことは大変難しく毎日悩みました。
管理栄養士の先輩と2人で打ち合わせを何度もしながら面談に臨んでいました。忙しい日々の中、「結果」を出すことばかりに気を取られていました。私の目指していた保健師という仕事とは程遠く、与えられた仕事をこなす日々。結果は少しずつ出てはいましたが、何かが違うような気がしていました。

そんなある日、面談をさせていただいた方に言われました。
「こちらの意見をしっかりと聞いてくれて、私がどうしたいのかを一緒に考えてもらったことで、初めて自分で目標を決めることができました。頑張ってみます。」
この言葉で、忘れかけていた、対象者の方に寄り添ってその方のなりたい自分への道案内をする保健師でありたい、という私の原点に戻ることができました。これ以降、対象者の方から他では受けることのできない保健指導を受けることができたと言っていただけるようになりました。
どんなに忙しくて、どんなに迷っても、地域の方の道案内ができる保健師でありたいという気持ちを忘れずに、これからも私も対象者も楽しいと思える仕事をしていきたいと思います。


次回予告

下岡 果林さん ⇒ 田中 瑛子さんへのバトン
田中さんのサイトの日記を見せていただきました。
産業保健の分野で、さまざまな事業を展開されているようでした。
1人職場…。立場は同じ…。でも工夫をしながらされている姿勢に共感しました。
もっとお話を伺いたいと思いました。
次回をお楽しみに!

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血糖自己測定器と院内専用グルコース分析装置の違い
脱マショウノオンナ 『保健師だより』私流のコツワザ集
ニッポンの健康づくり 辻一郎先生 津下一代先生 インタビュー
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