特定保健指導を考える保健指導向上委員会


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ピックアップ!

保健指導に関する情報、ツール、セミナーレポートを紹介しています。

研修参加レポート 平成30年度特定保健指導実践者育成研修会プログラム

2018年6月5日・6日の2日間に、コンベンションルームAP東京八重洲通りで開催された研修会を傍聴しました。この研修会は、厚生労働省の研修ガイドライン(改訂版)に基づく特定保健指導を実施するための一定の研修として位置づけられているもので、対象は健康保険組合に所属する特定保健指導実施者で、当日は70人が事前学習課題の作成、提出をした上で研修会に臨んでいました。

  • 1日目 (情勢報告、制度概要、総論、グループワークを通しての基礎的な内容)
  • 2日目 (生活習慣各分野の知識、技術の習得を目的にした実践的な内容)
情勢報告 健保組合を取り巻く環境

(講師:健保連保健部)

研修前のオリエンテーションとして、健保連保健部より「保健事業を取り巻く環境」と題したお話がありました。健康保険組合の特定保健指導実践者が知っておくべき事項として、健保組合の現状や保険者機能とその役割についての解説がありました。また、特定健診・特定保健指導については制度の進捗状況の報告などとともに、次のようなお話がありました。

1.積極的支援対象者に対する特定保健指導のモデル実施の活用について
2.健康寿命の延伸・データヘルス計画の推進
3.事業主との連携(コラボヘルス)

コラボヘルスを推進するポイントは事業主といかに連携できるかであり、事前協議や役割分担を進めていくことが大切だということです。連携ぜずに事業を進めていた事例として、事業主と健保がそれぞれにがん検診を実施していたケースが挙げられていました。そして、事業主と連携している度合いが高いほど、医療費は低い傾向にあるというデータが示されました。

講義 第三期特定健診・特定保健指導の概要

(講師:厚生労働省保険局 医療介護連携政策課 データヘルス・医療費適正化推進室 塩崎敬之氏)

塩崎氏からは特定健診・特定保健指導の制度概要、第三期の変更点などについてお話がありました。特定保健指導における保険者の最優先課題は実施率の向上にあるとし、制度活用の方法や保健指導の効果検証などの解説がありました。推進室に寄せられる疑義照会の例なども交えたスピード感のある講義でした。
第三期における特定保健指導では、初回面接の分割実施が可能となったこと、評価が三か月以上経過後で可能となったことなど、運用面の大幅な見直しがあった点について解説がありました。また、積極的支援のポイント制のあり方を柔軟化するモデル実施について、国からの要望は ①実施の30日前までに厚生労働省に計画を提出すること ②成果が出るものであることのみ、と示しつつ、これまで健保組合で行っていた社食やスポーツクラブ活用などの保健事業も組み合わせ、ぜひ創意工夫をこらしてほしいと健保組合からの計画に期待を寄せておられました。
「目の前の人の命を救う、という健康に寄与できるのが特定健診・特定保健指導です」と語っておられた塩崎氏。自身もかつて行政の保健師として保健事業の現場に携わっていたそうです。受講者目線で語られた言葉に、共感を得た人が多かったのではないかと感じました。

総論 メタボリックシンドロームの概念と特定健康診査について

(講師:新潟大学大学院 生活習慣病予防検査医学講座 特任教授 加藤公則氏)

心・脳血管疾患などの動脈硬化性疾患を防ぐための重要な概念であるメタボリックシンドロームを中心に学ぶ講義でした。メタボリックシンドロームを形成する危険因子の中で、脳卒中の発症率の高い日本人がとくに注目すべきは高血圧であること、メタボ予防に加えて禁煙が重要であることなど、生活習慣病予防に必要な医学的知識について解説がありました。
動脈硬化の進展を防ぐにはLDLコレステロールを正常値に保つことが重要ですが、治療薬のみでは検査値レベルで3割程度しか改善できないそうです。だからこそ生活習慣の改善は必要不可欠なものであると、肥満解消を目的とする介入の重要性を示しておられました。

肥満(内臓脂肪の蓄積)は血圧、血糖、脂質に悪影響を及ぼすホルモンを分泌し、動脈硬化を促進するというメタボリックシンドロームのメカニズムのほか、肥満をはじめ高血圧、高血糖などの危険因子が複数重なることによって、因子がゼロの人に比べ心疾患の発症危険性がおよそ36倍に跳ね上がることを示すデータなどの解説がありました。このような危険なメタボリックシンドロームから命を守るために、特定健診・特定保健指導は役立っていることを強調しておられました。

健診の効果を高めるには、特定保健指導をしっかり行うことが大切です。そのためには対象者が直面している現状をわかりやすく伝え、問題が自分事であると感じてもらうこと、検査値と自分の体がどう関連しているのかを理解してもらい、対象者が生活習慣の改善に向けて行動することを促すという保健指導の実践者の役割が重要です。
支援する際の対象者へのアプローチには様々な切り口があり、その人の関心ごとをとらえニーズにあった情報提供を行うことで効果はいっそう高まります。心筋梗塞はある日、突然起こるもので予測ができないこと、健康寿命を延ばすには心・脳血管疾患ばかりでなく認知症にも注目することなど、保健指導実践者が対象者の心をつかむためのヒントがちりばめられた講義でした。

(総論)特定保健指導の基礎知識

(講師:特定非営利活動法人 健康経営研究会 理事長 岡田邦夫氏)

「保健指導とは、相手の方が理解し、納得し、プチ行動変容をし、それを積み上げていくことを専門職が支援すること」という言葉で、講義ははじまりました。
岡田氏は、「積極的支援に毎年“引っかかる”対象者が、前年から何も変わっていないとしたら、それは保健指導がまったく役立たなかったということだ」と指摘、特定保健指導とは、どれだけやったか(アウトプット)ではなく、どれだけ成果を出したか(アウトカム)で評価されるものと明言されておられました。
この講義は、特定保健指導を行う人ならば必ず理解していなければならない特定保健指導の基礎的知識について、講師である岡田氏が受講生に一問一答で確認していくという、終始緊張感のあるスタイルで進められ、刺激的かつ印象深いものでした。

制度の目的や対象者の選定基準など、特定保健指導の基本的な知識を確認していくほか、「塩をとりすぎると、どうして血圧が上がるのか?」「体重1キロを減らすために必要なことは?」「体重1キロ分は7,000キロカロリーというが、その根拠は?」「禁煙をまったくやる気がない人に、どう声かけをするか?」など支援の場面で直面しがちな事柄について数多く取り上げ、受講者の言葉を引き出しながら次々と解説されておられました。

そして、講義の最後には特定保健指導のポイントがまとめられた○×解答を求める問題用紙が配られました。受講者は、それぞれ用紙に解答を書き込みながら、自ら知識の習得度の振り返りを行いました。

グループワーク 事例検討:ロールプレイから学ぶ特定保健指導の実際

(講師:特定非営利活動法人 健康経営研究会 理事長 岡田邦夫氏)

講義に引き続き、知識を実践に結びつけるためのグループワークが行われました。 検討事例として50歳女性の特定保健指導対象者のケースが提示され、受講者は5~6人のグループとなり、グループごとに意見交換した後、その内容を発表しました。 講師の岡田氏は、発表内容にコメントをしつつ質問票・検査結果データ(三年間分)から問題となる生活習慣を読み取る際の注意点や行動変容ステージの見極めかたなどについて解説されておられました。 さらに、受講者らが2人組みとなり、事例の女性に面接をするロールプレイも行われました。 岡田氏はここでも受講者一人ひとりに質問を投げかけ、「あなたならどうする?」と対象者への言葉かけのしかたを引き出していかれるなど、臨場感のある内容でした。学んで得た知識は頭にしまいこんでしまわず、柔軟に現場に生かし、特定保健指導実践者としての自覚、自信をもって保健指導に取り組んでほしいという、受講者への岡田氏からの強く温かな激励メッセージを感じました。

講義:(各論)特定保健指導の食事指導について

(講師:林芙美氏 女子栄養大学栄養学部准教授)

林芙美氏からは、行動科学からアプローチするエビデンスに基づいた食事指導の技術についてのご講義でした。対象者を行動変容に導く技術について、4つのステップに沿った解説がありました。

~ステップ1「準備性や問題行動を明確にする」~

健診結果をどう受け止めているか、どの程度の改善意欲があるのかなどの対象者の準備性を知るにあたっては対象者に耳を傾け、本人の思いを聴きとることが大切だということです。そして、問題行動の把握には健診に含まれている「標準的な質問票」の活用をすすめておられました。

~ステップ2「行動ときっかけ(刺激)との関係を分析する」~

問題行動のきっかけとなる要因が、空腹やストレスなど本人のなかにあるのか、それとも食文化や職場環境など本人の意思ではどうにもならないところにあるのかを見極めつつ、問題の本質を探っていくことが重要とのことでした。

~ステップ3「行動目標を設定し、実行する」~

目標設定の際は、本人が無理なく実行でき、かつ効果が期待できる具体的な行動目標となっているか、自ら振り返ること(セルフモニタリング)ができる内容かなどをチェックしながら、本人の自己決定を促していくことをポイントとして挙げておられました。 栄養素レベルの情報は対象者には理解しにくいため、料理レベル、食行動レベルなどに置き換えて日常生活に活用できる情報にして支援するとよく、食行動パターンや食事時間学などを活用したリーフレット教材についての紹介がありました。

~ステップ4「結果とプロセスを確認しながら、続ける」~

目標に向かって実行する際は、本人の努力や工夫を褒めたり共感したりすること、対象者自らが気持ちや体調などの変化に気づくよう促していくことなどが継続支援のポイントだということです。また、望ましい行動へと軌道修正するときは「人格」を批判したり否定したりするのではなく、「行動」について具体的に指摘をすると受け入れられやすいということです。

このほか、健康を維持、増進するために「なにを、どのくらい、どのように食べればよいか」ということについて、「日本人の食事摂取基準2015年版」「食事バランスガイド」「日本食パターンの食事」「栄養成分表示」などエビデンスに基づいた解説がありました。 ちなみに、林氏は近年話題となっている糖質について過度に減らすことは危険であるとし、やみくもに減らすのではなく白飯を玄米に置き換え食物繊維の比重を増やすなど対応に工夫することをすすめておられました。

講義:(各論)特定保健指導の禁煙支援について

(講師:中村正和氏 公益社団法人地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センター センター長)

中村正和氏からは、最新の知見に基づいた効果的な禁煙支援についてご講義がありました。
科学的根拠(エビデンス)は、指導者が単なる知識として知っておくだけのものではなく、支援する相手の状況に合わせ切り出して使うものだとおっしゃっておられました。それが相手の心をつかみ、説得力のある支援につながるということです。
最新のエビデンスとして、たばこ白書(喫煙の健康,2016:厚生労働省)などから能動喫煙、受動喫煙のそれぞれの健康影響や超過医療費などの解説がありました。 禁煙支援は健康意識が高まる健診当日に行うと効果的であるということで、当日支援を想定した短時間(1分間)でできる支援内容について説明がありました。これは第二期に改定された「標準的な健診・保健指導プログラム」ですでに導入されており、積極的に活用して禁煙支援に取り組んでほしいということです。特定保健指導の積極的支援の対象者には喫煙者が多く含まれているため、仮に禁煙支援を義務化すれば医療費の削減におおいに寄与できるというデータも示されました。

たった1分間の支援でも、エビデンスを示しながら問題解決的なカウンセリング手法を駆使することよって効果的に禁煙行動に結びつけることができるということです。この手法を実践的に学び、禁煙支援のスキルを磨く場として、無料で受講できるeラーニングプログラム(J-STOP:日本禁煙推進医師歯科医師連盟プロジェクト)の紹介がありました。

最新の流れである新型たばこ(加熱式たばこ)の動向についても話題が及びました。加熱式たばこは煙やにおいが低減、有害物質の量についても従来のたばこに比べ少ないとのことです。しかしながら、有害物質はたとえ少量でも人体への健康影響は大きいことを周知すべきであると指摘しておられました。

また、「標準的な健診・保健指導プログラム 平成30年度版」の「動機付け支援、積極的支援に必要な詳細な質問項目」には、喫煙者がどの種類のたばこを吸っているか(紙巻き、加熱式など)を把握するための質問が含まれていることを紹介、禁煙支援に活用してほしいということでした。

講義:(各論)減酒のための保健指導

(講師:瀧村剛氏 独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター)

瀧村剛氏からは、健診の機会をとらえた減酒支援についてのご講義でした。
健康への悪影響もさることながら、交通事故や暴力事件など深刻な社会的問題を含むアルコール関連問題について解説がありました。
これまで「アルコールは百薬の長」などお酒に寛容な社会背景などから、日本ではアルコール対策が進んでこなかったということです。また、飲酒量を控えることは多くの飲酒者にとって難しいことで、減酒支援は禁煙支援と並んで苦手意識を持つ保健指導実施者は多いということでした。

働き世代のいわゆる“飲みすぎの人たち”の心に届くメッセージとして比較的インパクトがあるのは、肝疾患や循環器病もさることながら、がんや脳委縮(認知症を含む)の原因であることを知らせることではないかということです。飲酒とがんの関連性を示すデータ、脳委縮が起きている脳のCT画像などを指導用教材のヒントとして提示されておられました。

また、保健指導をする人が知っておいてほしい数字として「20、40、60」を挙げておられました。これは1日の平均純アルコール量を示しています。20gは節度ある適度な飲酒量で、一般的にいわゆる“適量”です。ビールでいうと中びん1本、日本酒なら一合分に相当します。40gは生活習慣病のリスクを高める飲酒量、そして60gが多量飲酒で、この数字を指導の目安に、ということでした。ただし、女性はアルコール代謝能の関係上、その半量を目安に指導する必要があるそうです。

「標準的な健診・保健指導プログラム」には、特定保健指導の場面で活用できる減酒支援の手引きが掲載されています。そこで、危険な飲酒や有害な飲酒の把握に役立つ評価指標である「AUDIT(オーディット)」の紹介もありました。
減酒支援(ブリーフインターベンション)のポイントとして、とくに“指導”をしなくても、「AUDIT(オーディット)」などで飲酒の状態を見える化し、それを対象者と共有するだけでも酒量が減ることにつながることが少なくないそうで、とにかくどんな形でもよいから減酒支援に取り組んでみることが大切とのことでした。一般的に取り組みやすいのは休肝日を設けることだそうですが、何も飲まないのでは口寂しいというときは炭酸水に置き換え取り組むと、うまくいくケースが多いそうです。
飲酒が習慣になっている背景は人それぞれです。ですから、お酒を一方的にやめさせようとするのではなく、対象者に共感しつつ飲酒以外の時間の使い方や楽しみかた、ストレス解消のしかたなど、問題行動の本質に介入して支援していくことが大切だということです。

講義:(各論)特定保健指導における運動指導について

(講師:宮地元彦氏 国立健康・栄養研究所 身体活動研究部長)

宮地元彦氏からは、アクティブガイドを活用した身体活動支援についてご講義がありました。
宮地氏は冒頭、「保健指導実施者は保健師さん、管理栄養士さん、看護師さんが中心です。ですから運動の指導は難しく感じるかもしれませんが、実はそうではありません。特定保健指導は『運動指導』ではなく、日常生活で積極的に体を動かすことを支援する『身体活動支援』です」と聴講者らに強調しておられました。

日常生活上で今より少しでも活動量を増やせば健康効果があることについて、さまざまなデータから解説していただきました。もちろんより強度の身体活動はより効果がありますが、全ての人にそれを求める必要はないということです。

このようなエビデンスをまとめた身体活動支援の指針となるのが「アクティブガイド」です。このガイドは「+10(プラステン)からはじめよう!」をスローガンに、今より10分多く体を動かすことによって健康増進効果があることを示しています。このガイドを活用すれば、手軽にエビデンスに基づいた身体活動支援ができるということです。

身体活動支援の際にポイントとなるのは「実現可能性と効果のバランスを考慮」してプラステンする方法を対象者と一緒に考えること、つまり「本人が無理なく続けることができ、かつ効果がある身体活動を目標に設定する」支援です。

「アクティブガイド」には対象者の行動変容レベルを把握できる質問票が掲載されており、これを使って行動変容レベルに基づいた声かけができるようになっています。この質問内容は「標準的な質問票」にも含まれているので、支援前にアセスメントすることが可能です。

さらに、対象者には肥満、循環器病リスクがあることから安全性を保つための注意喚起は必ず初回に行うこと、実行期に入ったらロコモ対策にも配慮してひざ・腰痛予防体操などを案内するとよいこと、また継続に役立つスマホやパソコンなどのICTの活用についての解説もありました。

以上


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